コーチングとは? グッドプレーヤーを育てる・自己決定を促す・モチベーションの向上・行動制御
コーチングとは?
1.コーチングとコーチを定義する
- ビジネスにおけるコーチングは、部下が自ら答えを導き出したり、課題解決の方法を見出していくのを支援する方法論、つまりコミュニケーションのスキルとして用いている
- スポーツの立場から考えれば、コーチングは単にプレーヤーとのコミュニケーションスキルにとどまるのではなく、プレーヤーやその関係者をも巻き込む、さまざまなプロセスの総称ということのほうが適している
- 競技者やチームを育成し、目標達成のために最大限のサポートをすることが指導者の役割であり、このようなサポート活動全体がコーチングであるとしている
2.グッドプレーヤーを育てる
- コーチングの目的は、プレーヤーの有能さや人間性を高めていく取り組みを通して、プレーヤーの目標達成を支援していくことにある
- では、プレーヤーはどのようなプレーヤーを目指すべきなのだろうか
グッドプレーヤー像
- スポーツを愛し、その意義と価値を自覚し、尊重できる人
- フェアプレーを誇りとし、自らの心に恥じない態度をとり行動できる人
- 何事に対しても、自ら考え、工夫し、行動できる人
- いかなる状況においても、前向きかつ直向きに取り組むことができる人
- 社会の一員であることを自覚し、模範となる態度・行動がとれる人
- 優しさと思いやりを持ち、差別や偏見を持たない人
- 自分を支えるすべての人々を尊重し、感謝・信頼できる人
- 仲間を信じ、励まし合い、高め合うために協力・協働・協調できる人
3.グッドコーチになる
- 私たちがどのようなコーチがどのようなコーチになりたいのか、あるいはどのようなコーチになろうと努力をしていくのかという方向性を明確に持っていることが重要である
- グッドコーチ像には、『常に自分を振り返りながら学び続けることができる』、『プレーヤーとともに成長することができる』という人物像があるように、成長の仕方を自ら探求し、自分自身の成長に主体的に取り組んでいくことができる人物が、プレーヤーに成長の仕方を伝えることができるようになる
グッドコーチ像
- スポーツを愛し、その意義と価値を自覚し、尊重できる人
- グッドプレーヤーを育成することを通して、豊かなスポーツ文化の創造やスポーツの社会的価値を高めることができる人
- プレーヤーの自立やパフォーマンスの向上を支援するために、常に自分を振り返りながら学び続けることができる人
- いかなる状況においても、前向きかつ直向きに取り組みながら、プレーヤーとともに成長することができる人
- プレーヤーの生涯を通じた人間的成長を長期的視点で支援することができる人
- いかなる暴力やハラスメントも行使・容認せず、プレーヤーの権利や尊厳、人格を尊重し、公平に接することができる人
- プレーヤーが、社旗の一員であることを自覚し、模範となる態度・行動をとれるように導くことができる人
- プレーヤーやプレーヤーを支援する関係者が、お互いに感謝・信頼し合い、かつ協力・協働・協調できる環境をつくることができる人
4.自己決定した行動こそパフォーマンスは伸びやすい
- コーチングの目的はプレーヤーの有能さを向上させていくことの支援、および人間的成長の支援にある
- いずれの場合にも、コーチが直接的に有能さを向上させたり、人間的な成長をさせることは不可能である
- 両者ともにプレーヤー本人が自らを成長させていない限り、実現不可能である
- 自ら進んでやるか強制的にやらされているのかに関わらず、プレーヤー本人が体力を向上させるためのトレーニングに取り組まない限り、その効果は得られない
- プレーヤー自らが主体的に取り組めるような環境をコーチが提供することが重要になってくる
モチベーションの向上
- より上達が期待できる内発的動機に近い、より内在化したモチベーションで練習に取り組めるようなコーチングを心がけることが重要である
- 具体的にはどのような行動をとるかを考えると、『アメとムチを使い分ける』ことが重要だという回答を聞くことが少なくない
- モチベーションの側面からこの表現を分析してみる
- アメはご褒美、ムチは罰を意味している
- つまり、両方とも外発的動機によってプレーヤーを制御するということだ
- その発想の根底には、人間は外部からの刺激によってしか行動を起こすことができないという考え方が透けて見える
- しかし、外発的動機が全て悪いと言っているわけではなく、できることなら内発的動機による行動を導くようなコーチングが求められるということだ
- 時と場合によっては外発的動機による行動も必要とされる場合はある
- トップレベルの選手が、周りからの期待に応えたいという思いで厳しい練習をこなして優れた成績を残したり、賞金によって生活を豊かにするために頑張ったり、ということはある
- もっとも、この例のどちらの場合も、外発的動機と内発的動機が混在している状態ではある
5.コーチの行動制御がプレーヤーの成長を妨げる
- アメとムチを使うと考えているコーチは本当にプレーヤーが内在化した、自己決定したモチベーションでプレーしているのかをよく考えてみる必要がある
- 大好きだったスポーツをやらされている状態にしてしまうのは、コーチングの失敗といえるかもしれない
- できることならこのような状況に追い込むようなコーチングは避けたいものである
- 避けるべきコーチング行動として参考となるものを紹介する
- 次に挙げたのは、プレーヤーを制御する行動として報告されているものである
- 有形の報酬
- 制御的なフィードバック
- 過度な個人制御
- 脅迫的なふるまい
- 自我関与の促進
- 条件付きの関心
1.有形の報酬
制御戦略
- タスク関与
- タスク完了
- パフォーマンス
- 競争
説明
- 有形の報酬をプレーヤーのふるまいを操作するために用い、コーチが望むふるまいにさせようとすること
2.制御的なフィードバック
制御戦略
- 指示
- 批判
- 賞賛
説明
- プレーヤーのふるまいについてどのような期待をしているかを伝える指示的フォードバック
- プレーヤーがよりよいパフォーマンスを発揮するように動機づけようとして、プレーヤーを怒らせようとする過度に批判的なフィードバックを用いる
- コーチが期待するプレーヤーの行動を引き出すために賞賛する
3.過度な個人制御
制御戦略
- 価値観/意見の押し付け
- 制御的な発言内容や言い方監視
- 目標の押しつけ
- 押しつけがましいふるまい
説明
- プレーや自身の見解を無視し、コーチの意見をプレーヤーに押しつけるふるまいをする
- コーチ中心のやり方にプレーヤーが確実に従うように、制限的な表現方法や圧迫的な話し方をする
- トレーニング中に過度な監視をする
- コーチによって設定された目標をプレーヤーに押しつけようとする
- スポーツ参加に直接関係のないプレーヤーの生活の側面に影響を与えようとする
4.脅迫的なふるまい
制御戦略
- 言葉によるいじめ
- 怒鳴る
- 体罰
- 個人攻撃
- 屈辱する・罵る
説明
- プレーヤーにコーチの期待や要求を遵守させるために強引な手法を用いる
5.自我関与の促進
制御戦略
- 競争
- 公開評価
- 基準比較
- 成功を評価する外的指標
説明
- プレーヤーが他のプレーヤーよりも自分が優れていることを示すことによって自尊心を得ていくような戦略をとること
6.条件付きの関心
制御戦略
- 肯定的関心
- 否定的関心
- 否定的感情を伝える表現
説明
- プレーヤーが特定のふるまいや特質を示した時に関心や愛情、支援を提供し(肯定的関心)、特定のふるまいが見えないときには監視や愛情、支援を差し控える(否定的関心)
- 失望していることを示し、精神的苦痛に訴えかけ、罪悪感を誘発するような苦言をする