腰椎と骨盤の関係 椎間板・椎間関節・腰椎部整形外科テスト・腰椎アライメント
腰椎の解剖
- 腰椎を構成する個々の脊椎分節は5つあり、それぞれの椎骨は以下のような構造により構成される
- 椎体
- 棘突起
- 横突起
- 上椎間関節と下椎間関節
- 椎間孔
- 脊柱管
- 椎弓板
- 椎弓根
- 椎間円板:髄核と線維輪
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椎間板
- 隣接する腰椎の間には椎間板として知られる構造物があり、人間の脊柱には合計23に上るこの軟部組織性の構造物がある
- 椎間板は3つの部分からなり、線維輪と呼ばれる外側の固い殻、髄核と呼ばれる線維輪の中心にあるゲル様の物質、そして椎体終板と呼ばれる椎体に付着する部分である
- 私たちは年を重ねるにつれて、椎間板の中心から水分が消失していく
- 自然に椎間板の弾性が小さくなるにつれて、衝撃吸収としての効果も小さくなる
- 神経根は椎骨と椎間板の間の狭い通路、その通路は椎間孔として知られているが、そこを通って脊柱管から出ていく
- 椎間板に損傷があり脊柱管や神経根を圧迫すると椎間板ヘルニアといわれ、痛みや他の症状を生じる可能性が出てくる
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椎間板ヘルニア
- 椎間板ヘルニアはしばしば椎間板の膨隆、椎間板の脱出、あるいはぎっくり腰といわれる
- これらの用語は、椎間板の中央より強制的に外部に突出するが、髄核の中身であるゲル状物質由来する
- 具体的に言うと、椎間板それ自体は滑って移動しない
- しかし、椎間板の中央にある髄核組織は大きな圧力下で中央より移動し、線維輪にヘルニアを起こしたり、破裂させさえする
- 椎間板ヘルニアが深刻になると組織を膨隆させ脊髄神経を圧迫し、局所的な痛みや関連痛、そして、しびれあるいは腰背部・下肢あるいは足部や足関節の筋力低下を引き起こすことがある
- 腰椎椎間板ヘルニアのおよそL5~S1の椎間のどちらかに発生する
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椎間板の退行性病変
- 退行性椎間板病変は老化の過程と密接に関連する傾向があり、椎間板の痛みが慢性的な腰痛の原因となるとき、そしてそれは股関節周囲にも痛みが放散する可能性があり、症候群として言及されることもある
- 一般的にその状態は、腰や椎間板のような腰に関連した組織への損傷の結果として起こる
- また、損傷の持続は炎症を引き起こす可能性があり、続いて線維輪などの外側の組織を弱体化させる可能性もある
- さらに、このことは内部の髄核にも明らかな影響を与えることになる
- この反応性のメカニズムは過剰な動きを作り出す可能性もある
- なぜならば、椎間板は上下に位置する椎体の動きを制御できないからである
- 自然な炎症反応と結び付いたこの過剰な動きは、化学物質を作り出して局所的に炎症を引き起こし、通常慢性的な腰痛のような症状を起こす
- 退行性椎間板病変は線維輪の軟骨細胞(細胞は軟骨基質から成り、主にコラーゲンを含んでいる)の数を増加させる原因となることが分かっている
- 長い時間をかけて内部にあるゼラチン状の髄核が線維軟骨に変化する可能性がある
- そして、髄核に突出を許した箇所では外側の線維輪は損傷を受ける可能性があり、椎間板が縮小する原因となる
- そして最後には骨棘と呼ばれる骨の棘を形成することがある
- 背中の筋肉と違って、腰椎の椎間板は血流の供給がないため、組織を自己治癒することはできない
- そのため、退行性椎間板病変の痛みの症状は慢性化する可能性があり、椎間板ヘルニアや椎間関節痛、神経根の圧迫や脊椎分離症、そして脊柱の狭窄などのようなさらなる問題を引き起こす
椎間関節
- これらの構造物は多くの痛みを引き起こす原因となる可能性がある
- 椎間関節は椎体の後方に位置し、その役割は脊椎が屈曲や伸展、あるいは側屈や回旋運動を行う際に脊柱を支持する
- 椎間関節の位置やその向きから、これらの関節はある種の動きを許し、その他の動きを制限する
- 例えば、腰椎は回旋運動を制限するが、屈曲と伸展については自由に運動する
- 胸椎においては回旋と屈曲は自由に運動できるが、伸展は椎間関節により制限される
- それぞれ個々の脊椎には2つの椎間関節がある
- 1つは上方の椎間関節で、関節面は上を向いており、蝶番に似た働きをする
- もう1つは下に位置する下方の椎間関節である
- 例えば、L4の下方の椎間関節はL5の上方の椎間関節と関節を形成する
- 身体の他のすべての滑膜関節のように、それぞれの椎間関節は結合組織である関節包により覆われており、関節を栄養し関節運動を滑らかにするために滑液を分泌する
- 関節の表面は軟骨で覆われており、関節運動を滑らかにするのに役立つ
- さらに、椎間関節は高頻度で痛みの受容器の神経支配を受け、そのため痛みの感受性が強く腰痛を発生させる
椎間関節症候群と病変
- 椎間関節はお互いの関節面が滑り合う傾向にあるため、脊椎は自然と一定の運動となる
- そして、すべての荷重関節と同じように時間とともに関節は摩耗し変性となる
- 椎間関節が摩耗してくる(軟骨も損傷を起こす可能性がある)と、椎間関節の軟骨下骨の骨増殖を引き起こし、椎間関節を肥厚させる
- これは椎間関節症候群や病変の前兆であり、最終的には脊椎症と呼ばれる状態になる
- このようなタイプの症状もしくは病変の過程は、慢性的な腰痛を有する多くの患者にとっては非常によく診られる
整形外科テスト 腰椎部
1.ラセーグテスト
【方法】
- 背臥位
- 股関節・膝関節90°屈曲位から膝関節を伸展させる
- 坐骨神経領域に沿った電撃様の疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 坐骨神経伸張による神経根圧迫が示唆される
【注意点】
- ハムストリングス伸張痛との鑑別に注意
- ハムストリングスが原因の場合、限局した鈍痛やつっぱり感がある
2.SLRテスト
【方法】
- 背臥位
- 膝関節を伸展させた状態で下肢挙上する
- 坐骨神経領域に沿った電撃様の疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 坐骨神経伸張による神経根圧迫が示唆される
- 股関節屈曲70°未満で疼痛 ⇒ 坐骨神経
- 〃 以上で 〃 ⇒ 腰仙椎部の関節痛
【注意点】
- ハムストリングス伸張痛との鑑別に注意
- ハムストリングスが原因の場合、限局した鈍痛やつっぱり感がある
3.ブラガードテスト
【方法】
- 背臥位
- 膝関節を伸展させた状態で下肢挙上する
- SLRテスト陽性となるところから下肢を少し下げる
- 足関節背屈を加え、大腿後面に疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 脛骨神経伸張による神経根圧迫が示唆される
【変法】
- 足部回内 ⇒ 脛骨神経の伸張
- 足部回外 ⇒ 腓骨神経の伸張
4.ボンネットテスト
【方法】
- 背臥位
- 膝関節を伸展させた状態で下肢挙上し、SLRテストで大腿後面に痛みが出た角度から5°程度降ろす
- 股関節内転・内旋させて大腿後面に疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 梨状筋による坐骨神経圧迫が示唆される
5.ケンプテスト
【方法】
- 端座位もしくは立位
- 骨盤を固定する
- 体幹を側屈後、伸展・回旋させる
- 電撃様の疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 坐骨神経領域に疼痛がであれば、腰椎神経根の圧迫病変が示唆される
- 椎間関節部分に疼痛が出れば脊柱管狭窄症や関節病変が示唆される
6.スランプテスト
【方法】
- 端座位
- 胸腰椎を屈曲させる
- 頚部を屈曲させる
- 膝関節を伸展させる
- 足関節を背屈させる
- 疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 脊髄神経とその硬膜を伸張させる
- 膝・足関節を動かす前に陽性の場合、頚椎から胸椎病変がが示唆される
- 膝・足関節を動かした時に陽性の場合、L4~5、L5~S1の病変が示唆される
7.大腿神経伸張テスト
【方法】
- 背臥位
- 膝関節屈曲を保持したまま股関節を伸展させる
- 大腿神経領域に疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- L2~4の上位腰椎の神経根伸張による圧迫が示唆される
【注意点】
- 骨盤前傾の代償が出ないよう、しっかりと固定する
- 腸腰筋や大腿四頭筋の伸張痛(つっぱり感)との鑑別に注意
8.ダブルレッグレイズテスト
【方法】
- 背臥位
- 両膝関節を伸展させたまま、自動で同時に挙上させる
- 下部腰椎または仙椎部に疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 下部腰椎または仙椎部の疾患が示唆される
- 筋損傷の急性期が示唆される
【注意点】
- 下部腰椎または仙椎部への負担が大きいため痛みの悪化に注意
9.健側下肢SLRテスト
【方法】
- 背臥位
- 患側下肢のSLRテストが陽性の場合、健側で行う
- 膝関節を伸展させた状態で下肢挙上する
- 坐骨神経領域に沿って電撃様の疼痛が生じる場合、陽性
【検査の意義】
- 坐骨神経伸張による神経根圧迫が示唆される
- L4/5、L5/S1椎間板ヘルニアが示唆される
骨盤の機能異常の原因としての腰椎
- 問題は潜在的に腰痛にある
- 機能異常を起こす骨盤のパターンを維持し制御するような根本原因となる要因こそがまさにこの腰椎の骨格構造なのである
- もし、腰仙椎の連結部分(L5/S1)に回旋要素があれば、繰り返す骨盤の不良アライメントの原因の1つだと認められたはずである
- 腰椎が根本原因であるという例をみてみよう
- もし私たちのL5に時計回り(右回り)の回旋があるとしたら、右側の横突起は後方へ回旋する
- L4とL5の横突起の腸腰靭帯には軟部組織の付着があり、この靭帯の組織は直接腸骨稜に付着する
- 右回旋により右腸腰靭帯の緊張が増し、L5の右回旋は右寛骨の後方回旋を強制する
- それと同時に左のL5横突起は前方に回旋し、これは左寛骨の前方化(前方回旋)を生じる
- 腰椎横突起が見かけ上短くなるほど、腸腰靭帯は長くなり、回旋トルクが大きくなる
- L5の右下方の椎間関節はS1上方の椎間関節との間で比較的に開大位となる
- しかしながら、左の椎間関節はS1との間で狭小化する
- もし、左の椎間関節が圧縮されその位置が継続して維持されると、そこが中心軸になる可能性がある
- L5とS1の椎間関節のこのような左への固定は、仙骨の右への回旋を促す
- そしてそれは最終的に骨盤全体を右回旋位に強制する
仙骨と寛骨に対するL5回旋の影響
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)
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参考文献
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)