骨盤の評価 メンズ自動伸展挙上検査・立位体前屈検査・後屈検査・座位体前屈検査・ストーク検査・触診など

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骨盤安定性検査

  • 立位では以下のランドマークに注意して観察を行う

 

  1. 腸骨稜
  2. 上後腸骨棘
  3. 大腿骨大転子
  4. 坐骨結節
  5. 腰椎
  6. 殿溝
  7. 膝窩溝
  8. 下肢、足部、足関節肢位 (前面像)
  9. 上前腸骨棘
  10. 恥骨結合

 

 

 

後面像

  • 患者は両下肢に均等に体重をかけた立位姿勢となる

 

  • 腸骨稜の上端に両手を置き、その高さを確認する

 

  • 右寛骨の前方回旋(もっとも一般的な所見)、または仙骨に対して腸骨のアップスリップがある場合、右寛骨がわずかに高位になることが極めて一般的である

 

  • しかし、右寛骨が前方回旋しているのにもかかわらず、実際に右寛骨の位置が低位であるように見える時には注意する必要がある

 

  • これは、左下肢の解剖学的な長さ(真正の脚長差)によって引き起こされているかもしれない

 

  • 一方で、座位と腹臥位では脚長差の影響が除去されることにより右寛骨が前方回旋位で固定されるため、右腸骨稜が高位となる可能性がある

 

  • 上後腸骨棘、大転子、殿溝、坐骨結節の左右の高さを確認する

 

  • 下肢の外旋や足部が過回内(偏平足)、回外(凹足)もしくは中間位であるかを確認しながら腰椎、殿溝、膝窩溝の非対称性を確認する

 

  • その後、下肢、足部、足関節の相対的な位置関係を観察する

 

 

 

前面像

  • 腸骨稜の上端に両手を置き、その高さを確認する

 

  • 母指を上前腸骨棘の下端に置き、両側の上前腸骨棘の高さを比較する

 

  • 恥骨結合の高さを触診してもよい

 

  • 腸骨稜または大腿骨大転子のいずれか一方が低位にある場合、解剖学的に下肢の短縮があることを示している

 

  • また、大腿骨大転子の高さが左右対称であり、腸骨稜の高さが左右非対称である場合、骨盤の機能異常が存在している

 

 

 

メンズ自動下肢伸展挙上検査

  • Mensらは仙腸関節における機能異常の診断検査を開発した

 

  • 骨盤ベルト使用の有無における自動下肢伸展挙上検査と仙腸関節の可動性との関係性について調査したところ、骨盤帯痛を有する患者において、自動下肢伸展挙上検査の感度と特異度は高い値であることを証明した

 

  • そして、自動下肢伸展挙上検査は骨盤帯痛の有無を判断するために適していると報告した

 

 

 

検査手順

  • 背臥位となり、片脚を2.5㎝程度ベッドから持ち上げる

 

  • この動作を反対側と同側の下肢を交互に約3~4回繰り返し行う

 

  • 次に、それぞれの下肢の挙上が仙腸関節の症状を増悪させるかどうかを確認する

 

  • また、ベッドから片脚を持ち上げる際、どちらの下肢がより重く感じるかについても確認する

 

  • 下肢挙上の開始時には腸骨筋と大腿直筋が収縮し、その初期には寛骨の前方回旋が誘発される

 

  • つまり、この動作は仙結節靭帯の張力を減少させ、その結果として仙腸関節のフォームクロージャーを弱くする

 

  • そのため、寛骨の前方回旋は動的安定化機構の作用を減少させる可能性がある

 

  • その運動制限は、骨盤帯の異常な可動性と相関する

 

  • 体幹深部筋群により構成されるローカルシステムと表在筋群により構成させるグローバルシステムが正常に機能している場合、右下肢の自動下肢伸展挙上は腰椎移行部と右仙腸関節の両方を安定させる効果があり、脊柱から右下肢への力の伝達を効率的に行うことを可能にする

 

 

 

6つの要素について

  • 腹部深部筋により体幹を引き締めることなく、股関節屈筋群(主に腸骨筋)は腸骨を前方に引き寄せることができ、仙腸関節を後傾させる

 

  • 仙骨のカウンターニューテーションは、背臥位のような無負荷の姿勢では典型的なアライメントである

 

  • 仙腸関節痛を有する患者の自動下肢伸展挙上時には、脊柱起立筋、大殿筋、大腿二頭筋、外腹斜筋の活動が減少する

 

 

 

1.後斜走スリング
  • 後斜走スリングである右広背筋の対側性収縮は、力の伝達効率を増大させる

 

  • 右広背筋に収縮を加えることにより、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う後斜走スリングの活動
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

 

後斜走スリング』について復習したい方はコチラ

⇩⇩⇩

sakuraiku.hatenablog.com

 

 

 

2.前斜走スリング
  • 前斜走スリングである右斜走筋の対側性収縮は、力の伝達効率を増大させる

 

  • 右斜走筋に収縮を加えることにより、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う前斜走スリングの活動
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

 

前斜走スリング』について復習したい方はコチラ

⇩⇩⇩

sakuraiku.hatenablog.com

 

 

 

3.体幹深部筋
  • 体幹深部筋である腹横筋の活動は、力の伝達効率を増大させる

 

  • 腹横筋に収縮を加えることにより、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う腹横筋の活動
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

腹横筋』について復習したい方はコチラ

⇩⇩⇩

sakuraiku.hatenablog.com

 

 

 

4.反対側の寛骨の後方回旋
  • 反対側の寛骨の後方回旋は、力の伝達効率を増大させる

 

  • そのとき、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う右寛骨の後方回旋
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

 

5.同側の寛骨の後方回旋
  • 同側の寛骨の後方回旋は、力の伝達効率を増大させる

 

  • そのとき、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う左寛骨の後方回旋
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

 

6.両側の寛骨の側方圧迫
  • 両側の寛骨を側方から圧迫すると、力の伝達効率を増大させる

 

  • そのとき、挙上した左下肢は軽く感じるはずである

 

 

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左下肢の挙上に伴う両側寛骨への側方からの圧迫
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

 

 

立位体前屈検査 (腰仙関節機能異常)

  • 体幹前屈時に両側の寛骨と骨盤帯は、大腿骨に対して前方へ回旋する

 

  • まず体幹前屈の開始時には、仙骨がニューテーションすることによって寛骨が約60°まで前方回旋する

 

  • この関節可動域は正常値であり、後部構成体(後斜走筋、仙骨靭帯、胸腰部の筋膜、ハムストリングス)が緊張し、仙骨のニューテーションを制限する

 

  • この位置は、仙骨は相対的にカウンターニューテーションで固定されており、このアライメントは仙腸関節の不安定性を引きおこす

 

  • 仙骨の過度なカウンタニューテーションとそれに伴う仙腸関節の不安定性は、一般的にはハムストリングスの短縮と硬さが原因であると言われている

 

 

 

検査手順

  1. 患者は両下肢に均等に体重をかけた立位姿勢をとる
  2. 上後腸骨棘に母指を軽く置き、両側の寛骨を把持する
  3. 膝関節を屈曲させずにゆっくりとできる限り体幹を屈曲させる
  4. 寛骨の動きを観察し、両側の上後腸骨棘の動きに十分に注意する

 

 

  • 脊柱の屈曲は仙骨底を前方に移動させ、その動きは両側の仙腸関節に伝達される

 

  • 仙骨が寛骨を前方へ回旋させる前に、通常、動きが静止する瞬間がある

 

  • そのとき、両側の上後腸骨棘が頭側(上方)へ持ち上げられるように感じるはずである

 

  • 体幹を屈曲させている間、左右どちらかの母指がより頭側へ動く場合、これは寛骨が同側の仙骨に固定されていることを示唆している

 

  • この現象は、腰仙関節の機能異常として知られている

 

  • 同様に、同側の上後腸骨棘が対側と比較して早期に上方へ移動することにより、同側の腰仙関節が非常に早い段階で固定されていることも明らかとなる

 

 

 

偽陽性所見

  • 反対側のハムスリングが短縮し硬くなっていると、寛骨の動きが制限されることにより偽陽性となる場合がある

 

  • 例えば、立位体前屈検査時に右上後腸骨棘が左側よりも頭側へ移動する場合、これは左ハムストリングスの短縮と硬さによって引き起こされている

 

  • この所見は、左寛骨が左ハムストリングスの短縮によって後退または固定されていると言い換えることもできる

 

  • さらに、両側の腰方形筋が短縮し硬くなっていると寛骨の動きが制限されることにより偽陽性となる場合がある

 

  • 例えば、立位体前屈検査時に右上後腸骨棘が左側よりも頭側へ移動する場合、右腰方形筋が短縮している可能性がある

 

  • この所見は、右腰方形筋が早期に寛骨を前方へ引っ張ることによって引き起こされている

 

 

 

後屈検査

  1. 患者は両下肢の均等に体重をかけた立位姿勢をとる
  2. 上後腸骨棘の上端に母指を軽く置き、両側の寛骨を把持する
  3. 体幹を十分に後屈し、上後腸骨棘を把持し続ける
  4. 寛骨の動きを観察し、両側の上後腸骨棘の動きに十分に注意する

 

 

  • 正常の動きでは、上後腸骨棘がわずかに尾側(下方)に移動することを観察できる

 

  • 患者が後屈している間、両側の寛骨と仙骨は同じ位置に留まるため、両母指の位置は相対的には変化しない

 

  • しかし、仙腸関節の安定性を維持するために仙骨がわずかに前傾することが確認できるはずである

 

 

 

座位体前屈検査 (仙腸関節機能異常)

  • 座位体前屈検査を行う前に腸骨稜の位置を確認することが非常に重要である

 

  • 座位姿勢は坐骨結節の高さの左右差、寛骨の前方回旋またはアップスリップあるいはその両方、寛骨の後方回旋またはダウンスリップあるいはその両方のようなさまざまな問題を明らかにすることができる

 

  • また、右寛骨の前方回旋または上方偏位に伴って、右坐骨結節は容易に座面から1㎝上方へ持ち上がり、そのときには主に左坐骨結節へ体重がかかる

 

 

 

肢位1

  1. 患者は両下肢を床に平行に、またはベッド上の快適な位置に置き、ベッドの端に座る
  2. 両側の上後腸骨棘の下端に母指を軽く置き、両側の寛骨を把持する
  3. 顎を胸部に向かって丸め込ませるように体幹をゆっくりと最大まで前屈する
  4. 両手で膝を支持しながらできる限りその肢位で保持する
  5. 上後腸骨棘の動きに注目しながら寛骨の動きを観察する

 

 

  • 上後腸骨棘が上方へ移動することにより左右のどちらかの母指が頭側(上方)へ動く場合、仙骨が同側の寛骨に固定されている可能性がある

 

  • この所見は、片側性の仙腸関節機能異常として知られている

 

 

 

肢位2

  1. 患者は両下肢を床に平行に、またはベッド上の快適な位置に置き、ベッドの端に座る
  2. 仙骨尖の後面(特に下外側角)に母指を軽く置き、両側の寛骨を把持する
  3. 顎を胸部に向かって丸め込ませるように体幹をゆっくりと最大まで前屈する
  4. 両手で膝を支持しながらできる限りその肢位で保持する
  5. 仙骨尖の下外側角の動きに注目しながら寛骨の動きを観察する

 

 

  • 片側の仙骨の下外側角が反対側と比較して非対称である場合、仙腸関節機能異常を評価するための所見のひとつとして考えることができる

 

  • なお、腰方形筋が短縮している場合、両側での検査結果は偽陽性となることに注意が必要である

 

 

 

腰仙関節あるいは仙腸関節

  • 立位体前屈検査と座位体前屈検査の両方で上後腸骨棘の下端に置かれている右母指が左母指よりも頭側へ移動すると仮定する

 

  • これは、左母指が右母指よりも低い位置にあると言い換えることもできる

 

  • この所見は、右側での腰仙関節および仙腸関節の機能異常が同時に存在することを示している

 

  • 立位体前屈検査において右母指のみが移動する場合、右側での腰仙関節の機能異常が存在することを示唆している

 

  • 一方で、座位体前屈検査において右母指のみが移動する場合、右側での仙腸関節の機能異常が存在することを示唆している

 

 

 

ストーク検査 (片脚)

検査1:上部ポール

  1. 患者は立位となる
  2. 左寛骨の先端に左手で把持し、上後腸骨棘の下端に左母指を置く
  3. 右手は右寛骨を把持し、右母指でS2の高さ(上後腸骨棘の基準線)を確認する
  4. 少なくとも股関節の高さまで左股関節を最大に屈曲する
  5. そのとき、S2の高さにある右母指に対して上後腸骨棘に置かれた左母指が後方、内側、下方(尾側)へ回旋するように観察できるはずである

 

 

  • この検査は上後腸骨棘に置かれた母指が内側下方へ移動しない場合、もしくは頭側へ移動する場合には陽性と判断される

 

  • 立位体前屈検査とストーク検査の両方が同側で陽性であった場合、腰仙関節機能異常が存在している

 

  • 反対側の検査では、その比較対象として扱うことができる

 

  • ストーク検査における特定の動きは仙骨に対する寛骨の後方回旋を示唆している

 

  • この検査はどのような種類の腰仙関節機能異常が存在するかについてを示すものではなく、機能異常の有無と左右のどちらに存在しているかを判定しているに過ぎない

 

 

 

検査2:下部ポール

  1. 患者は立位となる
  2. 左寛骨の先端に左手で把持し、下後腸骨棘の下端に左母指を置く
  3. 右手は右寛骨を把持し、右母指でS4の高さ(仙骨裂孔の近く)を確認する
  4. 少なくとも股関節の高さまで左股関節を最大に屈曲する
  5. そのとき、S4の高さにある右母指に対して下後腸骨棘に置かれた左母指が前方および外側へ回旋するように観察できるはずである

 

 

  • この検査は下後腸骨棘に置かれた母指が移動しない場合、もしくは頭側へ移動する場合には陽性と判断される

 

 

 

股関節伸展検査 (腰仙関節)

  1. 患者は立位となる
  2. 右寛骨の先端に右手で把持し、上後腸骨棘の下端に右母指を置く
  3. 左手は左寛骨を把持し、左母指でS2の高さ(上後腸骨棘の基準線)を確認する
  4. 可能な範囲内で右股関節を最大にまで伸展する
  5. そのとき、S2の高さにある右母指に対して上後腸骨棘に置かれた左母指が上方(頭側)および外側へ回旋するように観察できるはずである

 

 

  • この検査は上後腸骨棘に置かれた母指が上外側へ移動しない、もしくは尾側へ移動する場合、陽性と判断される

 

  • 触診によるこの所見は、腰仙関節前方回旋を示唆している

 

  • そして、反対側はその比較対象として検査する必要がある

 

 

 

腰椎側屈検査

  1. 患者は両下肢を肩幅に開いた立位姿勢となる
  2. 左右の腸骨稜の先端に両手を置き、上後腸骨棘の後面を両母指で触診する
  3. 患者は脊柱を屈曲させないように可能な範囲で左方向へ体幹を側屈する
  4. 腰椎を観察し、凸側(この場合は右側)の脊柱起立筋の膨隆部が滑らかな “C” のような曲線となることを確認する
  5. この膨隆はタイプ1(中立位)の脊柱力学のため、側屈した方向の反対側で確認することができる

 

 

  • 陽性所見は凹側(側屈方向と同側)の膨隆、または腰椎曲線の不測のいずれかが観察できることである

 

  • これらの陽性所見はタイプ2(非中立位)の脊柱力学を示唆している

 

  • 腰椎を右側屈するとき、正常に仙骨に対する腰椎の運動(腰仙関節)が行われている場合、左方向への回旋も複合して生じる

 

  • そのため、腰椎の右側屈と左回旋の結果、仙骨は反対方向へ動き、すなわち左側屈と右回旋が引き起こされる

 

  • この仙骨の動きは右母指から得られる上後腸骨棘の触診所見から確認することができる

 

 

 

骨盤回旋検査

  • 正常な立位姿勢である患者を観察する時、一般的には骨盤が非対称的な位置であるかどうかを評価する

 

  • 典型的な回旋アライメント不良を有する患者の場合、特に右寛骨の前方回旋および左寛骨の後方回旋のような所見を示すのであれば、骨盤が反時計回りに回旋していることが明らかである

 

  • 通常ではこのときの骨盤回旋角度は5~10°の範囲内にある

 

  • そのため、患者が体幹を右回旋する場合、左回旋角度が約35°であるのに対して、より大きな右回旋(約45°)が生じるはずである

 

  • 骨盤の機能異常によりわずかに左回旋していたとしても、体幹の右回旋が左回旋よりも大きい理由は左寛骨が後方回旋した肢位(機能異常の一種)から開始されるためである

 

  • 寛骨の中間位から動作が開始された場合と比較して、左寛骨が後方回旋した肢位から動作が開始されることは、左寛骨がより大きく前方回旋することを可能とさせることを意味している

 

 

 

触診

腹臥位

  1. 殿溝
  2. 坐骨結節
  3. 仙結節靭帯
  4. 仙骨の下外側角
  5. 上後腸骨棘
  6. 仙骨溝
  7. L5
  8. 腸骨稜
  9. 大腿骨大転子

 

 

 

殿溝と坐骨結節
  • 最初に殿溝の高さを観察し、触診によってその位置を確認する

 

  • 次に、殿溝から坐骨結節に触れるまで母指を頭側へ移動する

 

  • 母指を坐骨結節の底面に置き、その高さを確認する

 

 

 

仙結節靭帯
  • 坐骨結節を触診した後、仙結節靭帯が触診できるまで母指を内側かつ頭側へ移動する

 

  • 仙結節靭帯は仙腸関節および腸仙関節の機能異常に関連する可能性があるため、仙結節靭帯を軽く触診することにより緊張や弛緩の程度を把握する

 

 

 

仙骨の下外側角
  • 次に、仙結節靭帯の近位に向かって坐骨結節を軽く触診すると、通常では仙骨の下外側角に触れることができる

 

  • 仙骨の下外側角見つけるための別法として、仙骨裂孔を探し、その約2㎝外側を触診することにより仙骨の下外側角を見つけることができる

 

  • さらに、仙骨の下外側角の後面を母指で触れることにより、非対称性の有無を確認することができる

 

 

 

上後腸骨棘
  • 仙骨の下外側角から両側の上後腸骨棘に触れるまで母指を頭側に移動する

 

  • 上後腸骨棘にある左右の母指の位置から非対称性の有無を確認する

 

 

 

腸骨稜
  • 上後腸骨棘から腸骨稜の先端に軽く手指を置き、その高さを確認する

 

 

 

仙骨溝
  • 仙骨溝は一般的には仙骨底と腸骨との接合部により形成されている

 

  • 仙骨溝に重なっている左右の小さな凹みは、“ヴィーナスのえくぼ” として有名である

 

  • 上後腸骨棘から仙骨底に触れるまで、両母指をL5とS1の椎間に向けて45°の角度で内側に移動させる

 

  • 正確に触診するために事前に周囲組織が緊張しないように配慮することが重要である

 

  • 仙骨溝の深さを評価する際、通常約1~1.5㎝の深さであるが、大抵では仙骨溝の上に覆われる軟部組織により浅く感じられる

 

  • 正常の所見では、左右の仙骨溝と仙骨底が等しい高さにある

 

 

 

仙骨の回旋
  • 例えば、右母指が仙骨底で深く沈み込み、左母指では沈み込みが浅いような左右の仙骨溝が非対称的な位置にあると仮定する

 

  • この所見は、右側での仙骨底の前傾、左側での仙骨底の後傾のいずれかを示している可能性がある

 

  • どちらの場合でも、仙骨は左方向へ回旋していることを示唆している

 

  • Jordanは、仙骨を触診し、相対的な仙骨溝の深さを確認すると、それが小柄な患者であったとしても仙骨の位置でなく多裂筋の厚さが仙骨溝の深さに影響すると述べている

 

  • さらに、多裂筋を覆うのは腰仙筋膜と非常に硬く分厚いコラーゲン結合組織であり、骨組織と誤ってしまう可能性がある

 

  • 片側の多裂筋が反対側よりも収縮している場合、その断面積が大きくなり、結果的に仙骨溝が浅く評されることもある

 

  • 仙骨溝の相対的な深さを評価対象としているが、寛骨の位置も考慮しなければならない

 

  • 例えば、右仙骨溝が浅い場合、寛骨の右前方回旋を示唆している可能性がある

 

  • これは、仙骨に対する腸骨の機能異常であり、一般的な所見である

 

  • あまり一般的ではないが、もし右仙骨溝が深い位置にあるのであれば、右寛骨が後方回旋していることを示唆している可能性がある

 

  • 寛骨の回旋アライメントは不良は最も一般的な所見であり、そのなかでももっとも典型的な所見は、右寛骨の前方回旋およびその代償運動による左寛骨の後方回旋である

 

  • このような所見が認められるとき、仙骨溝の深さを触診する際にはたとえ仙骨が相対的に中間位であったとしても、右母指は浅く左母指は深く感じられるはずである

 

  • この場合には、腰仙関節の構造上の機能異常を有しており、たとえ仙骨が右回旋していなかったとしても実際には右回旋しているように感じられるかもしれない

 

  • その理由は、左寛骨が後方回旋していることにより、触診の際に仙骨溝で深く沈み込むように感じるためである

 

  • 仙骨の側屈には回旋運動が伴うことがあり、この現象は歩行中に一方の下肢から反対側へ体重を移動させることによって引き起こされる

 

  • 仙骨の運動はタイプ1の運動に準じており、仙骨の側屈や回旋は反対側の運動と連動している

 

  • そのため、例えば左仙骨底が後方に移動している場合、仙骨の左回旋や右側屈、もしくは左方向の傾斜が生じているはずである

 

  • また、腹臥位での下外側角の位置の評価と同様の方法で仙骨底を触診する際に、左右の仙骨底と下外側角の非対称性を同時に見つけた場合、それは明らかに仙腸関節の機能異常が生じており、仙腸関節の可動性不良が存在している

 

  • 例えば、座位体前屈検査の際に左側で陽性であった場合(左母指が右母指と比較して頭側に移動した場合)、もしくは左仙骨溝を触診したときに左母指が右母指よりさらに沈み込むように感じられたと仮定する

 

  • このとき、仙骨は左側で前傾位となっているはずであり、その理由は仙骨が右回旋および左側屈しているためである

 

  • この肢位は、仙骨右捻転右傾斜軸と呼ばれている

 

  • さらに、もう一つの仮説について考えてみると、座位体前屈検査では左側で陽性の結果を示しており、このときに左仙骨溝が浅く感じられると仮定する

 

  • この所見は、おそらく仙骨の左側が後傾していると解釈することができるだろう

 

  • このとき、仙骨は左回旋および右側屈しており、この肢位は仙骨左捻転右傾斜軸と呼ばれている

 

 

 

 

仙骨後方捻転(後傾)位での固定
  • 通常の状態で左仙骨底が後方に偏位しているという前述の例をもとに、さらに検討を続けていく

 

  • この肢位から、患者に体幹を前屈させるよう指示すると、両母指が水平になり、仙骨の機能異常が消失しているように感じ取れる

 

  • また、患者に体幹を後屈させる(スフィンクス検査)よう指示したとき、仙骨の回旋が増大しているように感じ取れる

 

  • このときには仙骨溝を触診している左母指が浅く、もしくは右母指が深く沈み込むように感じられ、これは仙骨底の位置が不良であることを意味している

 

  • さらに、この所見は仙骨底の左側が後方で固定されていることを確かめるものであり、この肢位は仙骨左捻転右傾斜軸と呼んでいる

 

  • 患者が腰椎を伸展している間、仙骨では腰椎の動きと反対の動きが生じていると考えると、仙骨の両側がともに前傾していなければならない

 

  • もし、仙骨底の左側が後方で固定されている場合、左仙骨が後傾位にあり、それはつまり左仙骨が前傾することができないことを意味している

 

  • この所見を確認するための別法は、体幹後屈時に左仙骨底が後方で固定された肢位に留まるかどうかを評価することである

 

  • しかし、体幹を後屈するにつれて右仙骨底はさらに前傾位へと動き、それによって仙骨の回旋が増悪しているようにも観察される

 

  • 患者が体幹を前屈したときには、右仙骨は後方へ回旋(後傾)し続けるため、左仙骨底は後方に固定された肢位(後傾位)となる

 

  • このとき、左右の仙骨溝は水平であるように見えるため、仙骨の回旋は消失したようにも感じる

 

 

 

スフィンクス検査/体幹伸展
  • 仙骨の後方への捻転の有無を確認するための評価として、スフィンクス検査を行う

 

  • 患者はベッドで腹臥位となる

 

  • 左右の骨盤底上に母指または示指を置く

 

  • 本を読むときの姿勢のように両肘で身体を支えながら体幹を挙上する

 

  • 仙骨の後方への捻転がある場合、仙骨溝は非対称(浅い側で仙骨が後傾する)になるはずである

 

  • 左側の仙骨溝が浅いもしくは右側の仙骨溝が深い場合仙骨左捻転右傾斜軸を示している

 

  • 同様に、右側の仙骨溝が浅いもしくは左側の仙骨溝が深い場合仙骨右捻転左傾斜軸を示している

 

  • 仙骨溝が消失もしくは正常化(左右水平)した場合、仙骨が前方捻転していることを示している

 

  • このときの仙骨の前方捻転は、仙骨右捻転右傾斜軸もしくは仙骨左捻転左傾斜軸の両方で起こり得る

 

 

 

腰椎屈曲検査
  • 仙骨左捻転右傾斜軸の後方捻転の場合について検討を続けていく

 

  • 患者はスフィンクス位となり、左右の仙骨溝が水平となったことを確認した後、体幹を前屈(腰椎屈曲)させる

 

  • この例では、左仙骨底が後方で固定されているため、通常では右仙骨が後方捻転(後傾)して正常に戻ってくる

 

  • このとき、仙骨の回旋が消失するため、左右の仙骨溝が水平であるようにみえる

 

  • 座位ではなく腹臥位から腰椎を屈曲させる場合、臀部を踵に接するよう座らせるように、両上肢を前方へ伸ばすように指示する

 

 

 

仙骨前方捻転(前傾)位での固定
  • 仙骨中間位(腹臥位)で左仙骨溝を触診する時、母指が左側で深く沈み込むように感じたと仮定する

 

  • このとき、座位体前屈検査が左側で陽性である

 

  • これらの2つの所見により、大抵では仙骨右捻転右傾斜軸の前方捻転が存在することが考えられる

 

  • 体幹前屈時には、両母指で仙骨溝を軽く触診することによって、この所見を確認することができる

 

  • 左仙骨底は座位での体幹前屈位でさらに深く沈み込むように感じ、スフィンクス位では水平になる

 

  • この所見は、仙骨前方捻転位(仙骨右捻転右傾斜軸)の左側での固定を有することを意味している

 

  • その理由は、患者が体幹を前屈したとき、左仙骨底がさらに後方捻転(後傾)する方向へ動くため浅くなるように感じられ、仙骨の捻転は悪化している(左母指がさらに深く沈み込む)ように感じられる

 

  • 患者が体幹を後屈したときには、左仙骨底は前傾位で固定され続けるが、右仙骨底は正常の前方捻転(前傾)位に戻される

 

  • このとき、仙骨回旋の機能異常が消失しているように見え、両側の仙骨溝は水平であるように感じられる

 

 

 

腰椎スプリング検査
  • 患者は腹臥位になる

 

  • 腰椎が平背位(屈曲位)、過前弯位(伸展位)、中間位のいずれかかを観察する

 

  • 腰椎屈曲位であった場合、仙骨が相対的に後傾している可能性がある

 

  • 腰椎伸展位であった場合、仙骨が相対的に前傾している可能性がある

 

  • 腰椎と仙骨の位置を観察した後、手の付け根をL5条に直接置き、ベッドの方向に向けてゆっくりと強く圧迫する

 

  • L5に加えた圧力に対して強い抵抗感があり、下層組織に明らかな動きがみられない場合、陽性と判断される

 

  • 強い抵抗感は、L5の椎間関節が屈曲位であり、締まりの肢位にあることを示唆している

 

  • この所見は、両側の仙骨後傾もしくは片側の後方捻転 (仙骨左捻転右傾斜軸もしくは仙骨右捻転左傾斜軸) が生じていることを示している

 

  • スプリング検査が陽性であり、腰椎が過前弯しているように見える場合、両側の仙骨前傾、もしくは片側の仙骨前方捻転 (仙骨左捻転左傾斜軸もしくは仙骨右捻転右傾斜軸) のいずれかが存在している

 

 

 

L5の位置-中立位
  • 潜在的な仙骨捻転の有無を確認するために仙骨底の正確な位置を決めたら母指で触診し、L5棘突起の高さに移動させる

 

  • さらに母指を移動しL5棘突起から水平かつ外側方向に約2.5~3㎝の位置に置く
  • このとき、L5の横突起に沿うように母指を置くべきである

 

  • 浅い面が右側で触診された場合、L5が右回旋していることを示している

 

  • しかし、L5は右回旋しているため、L5/S1の右椎間関節が締まりの肢位で固定されているのか、もしくはL5/S1の左椎間関節が緩みの肢位であるのかについては判別することができない

 

  • また、患者の体幹伸展および屈曲運動を行わせることにより、L5/S1の椎間関節の位置を確認する必要がある

 

  • 仙骨左捻転左傾斜軸と仙骨右捻転右傾斜軸での仙骨の動きは、歩行中の典型的なタイプ1の脊柱力学(側屈と回旋が反対側にて連動する) を生じさせる正常な仙骨の生理学的運動として分類されている

 

  • しかし、非常に長い間、仙骨が前方捻転(前傾)位、もしくは後方捻転(後傾)位で固定されている場合、正常に起こり得る代償運動を通して何らかの方法で腰椎尾肢位を変化させ、可能であればタイプ2の脊柱力学に適応させなければならない

 

  • この場合には、側屈と回旋が同側の屈曲もしくは伸展のいずれかの動きと連動している

 

 

 

 

 

 

 

 

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参考文献

骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)