仙腸関節スクリーニング フォーティーンフィンガー検査・FABER検査・圧縮検査・大腿スラスト検査・離開検査・ゲンスレン検査
仙腸関節スクリーニング検査の必要性
- 例えば、下部腰椎と骨盤、または骨盤に疼痛を持った患者の場合、通常は基礎病理学に基づいた股関節のスクリーニングを実施する
- それは潜在的に背部または骨盤の疼痛は股関節に原因の可能性があるからである
- スクリーニングで陽性の場合、少なくとも、股関節の病理や機能異常をさらに調べる必要があるかを判断できる
- 腰部や骨盤の疼痛症状を減少させる長期的な治療効果を望むのであれば、これらの臨床所見は特異的な腰痛または骨盤領域よりも、むしろ股関節領域の治療戦略を再考、変更させるだろう
仙腸関節アライメント不良による症状の概念
- 成人の80~90%は骨盤のアライメント異常をきたしている
- 回旋のアライメント不良は最も多くみられ、矢状面における右寛骨の前方回旋と代償的な左寛骨の後方回旋をしばしば伴っている
- このような回旋のアライメント不良は単独で生じる場合もあれば、複合して生じることもある(アップスリップ、アウトフレア、インフレア)
- アップスリップが単独で生じているのは患者のおよそ10%であり、一方で他のタイプ(回旋やアウトフレア、インフレア)を伴っているのは5~10%である
- アウトフレアとインフレアは約40~50%で生じており、どちらも単独で生じることもあれば、両方が組み合わさることや他のタイプと組み合わさることもある
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仙腸関節の疼痛
- 局所的な疼痛は片方または両方の仙腸関節から生じている
- 両方の仙腸関節の可動性が低下している、または一方の仙腸関節がロッキングされる場合、他方はたとえ正常であったとしても、その部位に疼痛を訴えることが多い
- この疼痛出現の理由としては異常のある仙腸関節の運動が制限されることにより、代償的に他方の正常な関節やその関節包、靭帯への負担が増大したためである
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フォーティンフィンガー検査
- 患者が示している状態や機能異常の原因を考えて判断する際に、患者の現病歴は最も重要な情報の1つである
- 患者の痛い場所を尋ねることは、検査者にとって非常に有用である
- 個々のケースに対して骨盤評価を行った際、患者が上後腸骨棘の下内側の領域を指差し、それを2回実施して一貫してその範囲が1㎝いないであれば、仙腸関節の機能異常の陽性徴候である
- これはフォーティーンフィンガー検査と呼ばれる
- この検査は有用だが、FABER検査といっしょに活用するとよい
仙腸関節の疼痛出現パターン
- 仙腸関節の疼痛出現パターンに関する正確な場所については多くの議論がされている
- Fortinは上後腸骨棘に対して10㎝尾側で、3㎝外側と報告している
- Slipmanらは50人の仙腸関節に対して透視的に注射を行い、腰正反応を引き起こすことを実施した
- 47人の患者は臀部の疼痛を示した
- 36人の患者は腰痛を示した
- 25人の患者は関連する下肢の疼痛を示した
- 14人の患者は膝より遠位の下腿痛を示した
- 7人の患者は鼠径部の疼痛を示した
- 6人の患者は足部の疼痛を示した
- 18の疼痛出現パターンが観測された
- 統計的に有意な関係性を示したのは疼痛の場所と年齢であった
- 若い患者は膝より遠位の疼痛を訴えることが多かった
- 以上より、仙腸関節由来の疼痛出現は腰部や臀部に限られていないと結論づけられた
仙腸関節誘発スクリーニング検査
1.FABER検査
- FABER検査(屈曲、外転、外旋)は、股関節の潜在的な異常に対するスクリーニングで用いられるが、仙腸関節の機能異常を調べる際も有効である
- FABER検査は仙骨に対して、寛骨の後方と外側方向への運動を引き出す
- この運動は仙骨のニューテーションを誘導し、関連する仙結節靭帯・仙棘靭帯・骨間靭帯にストレスを与えるため、仙腸関節の機能異常を判別できる
- 寛骨の後方回旋は、仙腸関節の後方部分を圧縮し、また関節の前方部分を離開することにより、前方の関節包や関連する靭帯を伸張する
手順
- 背臥位を取る
- 股関節を屈曲、外転、外旋位にする
- 反対側の骨盤を固定し、膝に対して徐々に圧迫を加えていく
- 屈曲、外転、外旋を強調していく
- 疼痛が主に股関節や仙腸関節の後方に認める場合、仙腸関節の病理学的または機能異常の可能性が示唆される
2.圧縮検査
手順
- 側臥位を取る
- 楽になるように膝の間に枕を挟む
- 寛骨の外側面を通して徐々に下方に圧迫を加えていく
- 大腿骨大転子と腸骨稜の間で仙腸関節に一致する疼痛が出現するかを確認する
3.大腿スラスト検査
手順
- 背臥位をとる
- 片方の股関節を90°屈曲位とする
- 反対側の上前腸骨棘を押さえ、骨盤を固定する
- 大腿骨軸に対して徐々に圧迫を加えていく
- 仙腸関節に疼痛が出現するかを確認する
4.離開検査
手順
- 背臥位を取る
- 指示のために膝下に枕を挿入する
- 上肢を交差させ、肘を軽度屈曲位とする
- 左右寛骨の上前腸骨棘に手を置く
- 徐々に外側へ圧迫を加えていく
- 仙腸関節の離開を促していく
- 仙腸関節に疼痛が出現するかを確認する
5.ゲンスレン検査
手順
- 背臥位を取る
- 右膝を抱えて自身の胸に近づけるようにして右股関節を屈曲してもらう
- これは右寛骨を後方に回転、左寛骨を前方に回転させる動きになると同時に、仙腸関節を固定する役割がある
- 左下肢をベッドから降ろし、すでに伸展位である左下肢に対し、さらに拡大するよう徐々に伸展方向へ圧迫を加える
- 同時に右下肢に対しては、患者の手を通して屈曲方向へ圧迫を加える
- 仙腸関節に疼痛が出現するかを確認する
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参考文献
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)