コアマッスルと仙腸関節 腹横筋・多裂筋・内圧の増加・後斜走スリング
コアマッスルとの関連
インナーコアユニット(ローカルシステム)
- インナーコアユニットは以下の筋より構成されている
- 腹横筋
- 多裂筋
- 横隔膜
- 骨盤底筋
インナーコアユニット
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ
腹横筋
- 腹横筋は最も深層に位置する腹部筋である
- 腸骨稜、鼡径靭帯、腰部筋膜、下位6つの肋軟骨に起始し、剣状突起、白線、恥骨に停止する
- 腹横筋の重な作用は腹壁において「引き込み」を介して腹圧を高めることである
- この「引き込み」は臍の脊柱方向への動きとして観察することができる
- この筋は屈筋でも伸筋でもない
- Kendallらも、「この筋は体幹の側屈には作用せず、白線を安定させることにより前外側に位置する筋(内・外腹斜筋)の良好な活動が許容される」と述べている
- 腹横筋はインナーユニットの鍵になることは明らかである
- Richsrdsonらは、腰痛がない人の場合、腹横筋は肩の運動よりも30ミリ秒前に、下肢の運動よりも110ミリ秒前に筋発火が生じていることを報告している
- これは、腹横筋が四肢骨格の動作パターンに対して、必要となる安定性を提供するための鍵となる役割を持つことを示唆している
- 腹横筋は吸気時において、中心腱を下方へ引き平坦となり、胸腔の垂直方向の長さを増加させ、多裂筋を圧迫する
腹横筋の起始・停止などを復習したい方はコチラ
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多裂筋
- 多裂筋は腰部筋のなかで最も深層に位置する
- 筋線維は近隣の腰椎棘突起から起こり、乳頭突起へ付着する
- 筋線維は尾方へ放射状に走行し、横突起を横断してL2/L5に位置する
- 仙結節靭帯と遠位部で結合しているいくつかの筋線維と同様、これらの筋は第5腰椎を腸骨と仙骨へ固定する
- 多裂筋は小さい筋の集合体を考えられており、これらはさらに表層部と深層部に分類される
- 仙骨尖部よりも仙骨底部の方が多裂筋の容積は大きく、特に下外側角部よりも左右の上後腸骨棘間の領域で大きい
- 伸展筋力を発揮する多裂筋の役割は、前方への体幹屈曲やこの上部で生じる剪断力に対抗する作用と同様、腰椎を安定させるために大変重要である
- さらに多裂筋は、椎間板への圧力を軽減する機能を持つため、最終的に体重が前腰椎へ分配される
- 表層に位置する多裂筋は、腰椎を垂直方向に保持する役割を持ち、深層に位置する多裂筋は脊柱全体の安定性に貢献している
- Richsrdsonらは多裂筋と腹横筋は腰椎安定化の鍵となる筋であることを報告した
- 両筋は、Richsrdsonらが「障害から腰部を守る天然の深層コルセット」と呼んだ胸腰筋膜と結合している
- 近年、Richsrdsonらは、仙腸関節において筋がどのように作用しているか超音波ドップラー法により調査した
- 彼らは、腹横筋と多裂筋は共同収縮して仙腸関節の固定性を高め、負荷が生じている場合ではこれらの筋が仙腸関節を圧迫して関節安定性を高めるために不可欠であるとともに、この圧迫は適切なタイミングで生じることが重要であることを示した
多裂筋の起始・停止などを復習したい方はコチラ
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内圧の増幅
- Osarによると、筋収縮により筋膜内の内圧を増幅する作用が生じる
- すべての筋線維の内側では、筋収縮が生じると筋線維は胸腰筋膜を圧迫して関節周囲の硬化が生じる
- 脊柱では、胸腰筋膜内にある脊柱起立筋の多裂筋の硬化により体幹伸展力が発揮され、脊柱伸展を助ける
- Osarは、腰椎背側多裂筋が収縮した場合、後方の腰背筋膜へその力が広がると述べている
- このような効果は、腹横筋の収縮を助け、脊柱起立筋や多裂筋の周囲にある胸腰筋膜を硬化させ、これにより脊柱を安定させる
多裂筋が収縮すると胸腰筋膜を圧迫し、腹横筋の収縮とともに内部の区画の安定性をもたらす
水平面から見た安静時の多裂筋
腹横筋と多裂筋の共同収縮は胸腰筋膜の硬化を引き起こし、内部の区画の安定性をもたらす
腹横筋が収縮すると胸腰筋膜が緊張し、これに対して多裂筋と腰部脊柱起立筋が収縮し、脊柱の伸展と効果が生じる
恥骨筋の収縮は白線を緊張させ、腹横筋の収縮に対して安定性を与える
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ
アウターコアユニット(グローバルシステム)
- フォースクロージャーにかかわるアウターコアユニットは、4つに統合された筋膜スリングシステムから構成されている
- 後縦走スリング
- 外側スリング
- 前斜走スリング
- 後斜走スリング
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ
- これらの筋膜スリングはフォースクロージャーをもたらし、その結果として骨盤帯の安定性につながる
- これらのスリングのいずれかが欠損または弱化した場合でも、腰部骨盤領域の疼痛や機能異常を引き起こす
- アウターコアユニット属する筋群が個々にトレーニングされた場合、効果的なフォースクロージャーを発揮して適切な機能やパフォーマンスが遂行されるためには、筋膜スリングの個別的な協働収縮やリリースが要求される
- 統合された筋膜スリングシステムでは多くの力が存在し、いくつかの筋が関与している
- ひとつの筋はひとつ以上のスリングシステムに関与しており、またスリング同士が重なり結合しているため、上肢の動きに依存する
- アウターユニットにはコントロールスリング(内側と外側の2区画)、矢状スリング(前方と後方の2区画)、そして、斜走らせんスリングを含むいくつかの筋膜システムに関与するスリングが存在する
- 仮説として、スリングは起始と停止を持たないものの、力を伝達する補助のために結合していると考えられる
- これにより、スリングはすべての内的結合筋膜システムとして機能しており、ある運動では全体のスリングの一部が選択的に機能している可能性がある
- フォースクロージャーを修復する時や、なぜスリングの一部が動作を抑制または低下させるかを理解することは、ある特定の筋機能異常(弱化、不適切な活動、あるいは硬化)の同定と治療を行う場合に重要となる
- 以下がそのポイントである
1:アウターコアの4つのシステムは、身体の土台となる力を生じさせるために必要な関節硬化や安定性に寄与するインナーコアユニットに依存している
2:アウターユニットの作用中におけるインナーユニットの低下は、しばしばマッスルインバランス、関節障害、そして、パフォーマンス低下を引き起こす
3:アウターユニットは近代的なトレーニングマシンにより効果的に調整することはできない。トレーニングマシンの種類の違いは日々の機能的運動に関連しない。
4:アウターユニットの効果的な調節方法には、対象者の作業やスポーツ活動内容に即した運動パターンを用いたインナーユニットの機能を統合した運動が要求される
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参考文献
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)