バッティング 地面反力

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 踏ん張るのではなく足踏みする

  • 「両足でしっかり踏ん張れ」はスポーツでよく聞く言葉で、そうなっていると安定感がある

 

  • しかし、野球のバッティングでで打者が地面を押す力を測ってみると両足でしっかり踏ん張る局面はない

 

  • 画像は実際のフリーバッティングで左右それぞれの足で地面を押す力を測ったものである

 

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打撃時の三方向床反力

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

  • これは右打者の場合で、右足(軸足)による力は一点鎖線、左足(踏み出し足)による力は実線で描いている

 

  • そもそも左右1つずつの押す力なのだが、わかりやすいように3つの方向に分けて描かれている

 

  • 前は腹側に、後は背中側に押す、右は捕手側に、左は投手側に押す、そして下は真下に押す力である

 

  •  左から右に時間が流れてステップの局面、フォワードスイングの局面、そしてインパクトが示されている

 

  • 上に0.5秒間のものさしがある

 

  • それによって、フォワードスイングの時間はおよそ0.2秒間とわかる

 

  • また、右に20㎏wという力の大きさのものさしがある

 

  • この長さで20㎏の重さに相当する力で押しているということである

 

  • 20㎏wのものさしが一番短いのが真下に押す力である

 

  • つまり一番大きいということなのだが、それは立っているだけでも体重分の力で地面を真下に押しているからである

 

  • 例えば打者の体重が60㎏とすると、20㎏wのものさしの3倍のところに体重の横線があって、その線を基準に打者は下に押す力を加えたり抜いたりしているとみることになる

 

  • 打者はステップに入る時、踏み出し足で下、投手側に地面を押してその足を持ち上げている

 

  • 次のステップ局面では、踏み出し足は空中にあるので地面を押す力はどの方向にも出ていない

 

  • 軸足だけで下、捕手側に地面を押している

 

  • さらに、フォワードスイングが始まると、着地した踏み出し足で前へ、軸脚で後ろ押して、その後に踏み出し足で下、投手側へ押してインパクトを迎えている

 

  • こうみてくると、確かに両足でしっかり踏ん張る局面ではない

 

  • 下に押す力をみればわかるように、野球のバッティングでは右打者の場合、左、右、左と足踏みをするようにして打つのである

 

地面を押す力の反力で身体を加速する

  • こうした地面を押す力の働きは何なのだろうか

 

  • 地面を押すと、同じ大きさで反対向きの力を地面から受ける

 

  • 作用反作用の法則である

 

  • 地面反力(床反力)というのはこの反作用の力のことで、打者の場合、バットを持つ身体がこの反作用の力の向きに加速されるのである

 

  • したがって、ステップ局面でみると、自分では軸足で捕手側に押しているが、その反作用で身体は投手側に加速される

 

  • フォワードスイングに入ると、左右の足で前後反対向きに押すので、その反作用を受けて身体は、踏み出し足側は背中側、軸足側は腹側へと加速される、つまり、フォワードスイングする向きに身体は回転加速されることになる

 

  • その後、踏み出し足で下、投手側へ踏ん張るので、ステップ局面で投手側に加速されてきた身体は減速されることになる

 

  • この減速された身体の支えがあるからこそバットを投手方向へ走らせることができる

 

  • フォワードスイング局面の前後方向の力をさらによくみると、踏み出し足で前に押すよりも軸足で後ろに押す力のほうが先に現れる

 

  • 一方、軸足で後ろに押す力よりも踏み出し足で前に押す力のほうが大きい

 

  • これはフォワードスイングを始める時に軸足の押しが使える状態であるし、バットは身体の前を通過するので踏み出し足で前、その後投手側へしっかり踏ん張っていることを示している

 

身体の移動を調整できる余力を軸足に残しておく

  • ティーバッティングで地面反力を分析した調査によると、構えた位置からバックスイングで捕手側へさがる距離はレギュラー選手のほうが長く、構えた位置からインパクトまでに投手側へ出ていく距離は非レギュラー選手のほうが長かったという

 

  • これは、レギュラー選手のほうがフォワードスイングを開始する時に軸足が使える状態にあったことを示唆している

 

  • 直球とカーブを打った時に地面を押す力、そのうち左右方向(投捕方向)への力を眺めてみる

 

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打者の左右方向力曲線

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

 

  • 直球を打った時が実線で、カーブが破線、踏み出し足を地面から離す時点で両方の力の線を一致させているのだが、ステップの後半になると直球とカーブとで押す力の様子が違っている

 

  • 画像の数値の意味は「0」が両方ともインパクト、一致させた マイナス0.48 は直球でのステップ開始がインパクトの0.48秒前、マイナス0.56 はカーブでのステップ開始がインパクトでの0.56秒前という意味である

 

  • その後、それぞれインパクトの0.24秒前と0.30秒前にステップを終え、0.16秒前にフォワードスイングを開始していた

 

  • カーブのほうがボールスピードが遅い分、捕手側へ押す力が長く続いているのがわかる

 

  • どこかの時点で打者はボールの速さの違い、軌道の違いに気づいてステップ後半には身体の移動を調節していることになる

 

軸足の内側でタイミングをとる

  • 足裏のどの部分で押すのかが測れるセンサーをシューズの中に入れてバッティングしてもらった

 

  • すると、ステップの局面では軸足裏の前側で押す力が大きくなり、それが同じ前側でも外側から内側へと移っていった

 

  • そして、フォワードスイング局面になると軸足の母趾球で押す力が大きくなって、インパクトに向けてはそれが小さくなった

 

  • 踏み出し足裏はというと、ステップ着地後、大きな押す力が母趾球から外側全体へと移っていった

 

  • この様子から、軸足裏の内側で投手側への身体の移動を調節し、強く打つために母趾球を働かせ、その勢いを踏み出し足裏の外側で受け止めていることがわかった

 

 

参考文献

科学する野球 バッティング&ベースランニング (ベースボールマガジン 2016年12月25日 平野裕一)