股関節外旋筋トレーニング 外旋筋のバイオメカニクス・梨状筋・上下双子筋・内外閉鎖筋・筋交代テスト・股関節屈曲角度を考慮したトレーニング
股関節運動の捉え方
- ニーイン&トゥアウトというアライメント異常を上位からの運動連鎖の視点で考えると、股関節内転・内旋位が問題となることが多い
- この問題の原因を股関節外旋筋の機能不全と捉えて、アプローチを行っていく
股関節外旋筋のバイオメカニクス
- 股関節外旋筋は、その走行から、多くは大転子に停止部を持ち、そこから扇状に広がるように起始部を持つ筋として捉えられる
- 股関節のポジションの違いにより筋の機能が変化する
- 股関節外旋筋の役割について、股関節の屈曲角度、回旋軸中心、モーメントアームという各要素から考える
梨状筋
- 梨状筋は、股関節伸展位では股関節の回旋軸中心の後方を通り、モーメントアームも長いことから、股関節外旋の筋力発揮におおきに貢献していると考えられる
- 股関節伸展位では外旋筋としての貢献度が大きい
- 股関節屈曲が大きくなるにつれて外転筋として働く
- 股関節屈曲角度がさらに大きくなると、やがて内旋筋として働く
梨状筋の起始・停止などの復習をしたい方はこちら
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上双子筋・内閉鎖筋
- この2つの筋は、股関節伸展位では回旋軸中心からのモーメントアームが短く、外旋筋としての貢献度は小さいと考えられる
- 股関節屈曲に伴いモーメントアームが長くなり、股関節外旋筋として貢献度が大きくなると考えられる
- さらに屈曲角度が増すことで、梨状筋と同様に股関節内旋筋として働くポジションがあると考えられる
上双子筋と内閉鎖筋の起始・停止などの復習をしたい方はこちら
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下双子筋・外閉鎖筋
- この2つの筋は股関節伸展位では大腿骨頚部に巻きつくように走行しているため、モーメントアームが短く、股関節外旋筋としての貢献度は小さいと考えられる
- その後、屈曲角度が増すにつれてモーメントアームが長くなり、股関節外旋筋としての貢献度が次第に大きくなると考えられる
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股関節外旋筋の筋交代テスト
- 股関節外旋筋の機能は股関節の屈曲角度によって変化することが考えられるため、通常の徒手筋力テストでは評価が困難である
- そこで、股関節外旋筋の機能評価に、次の方法を用いる
- 側臥位・膝屈曲位として股関節内転方向に抵抗を加え、そのまま股関節屈曲の自動運動を行わせ、股関節中間位での運動が遂行可能か否かを評価する
- 特にアライメント不良を呈する股関節角度について注意深く観察する
- このテストによるアライメント不良は、①股関節内転・内旋、②骨盤帯の後傾、③骨盤帯の側方挙上、④上記①~③の複合の各動作で表出される
- このような代償例では、実際の片脚スクワット動作との関連を認める
股関節外旋筋のトレーニング
- 筋力トレーニングにおける可動域については、他動運動での可動域と自動運動での可動域を同等とすることを基本とされている
- したがって、最終可動域でのセッティングを十分に意識して行わせることが重要である
- 同時に、股関節外旋筋力のトレーニングでは、股関節の屈曲角度の変化に伴う筋の機能の変化を考慮するとともに、アライメント不良を呈している股関節角度に配慮することを基本としている
股関節の屈曲角度を考慮したトレーニング
- 側臥位となり、それぞれの外旋筋に適した股関節屈曲角度をとる
- 梨状筋を意識したトレーニングでは、股関節伸展位からの開排動作を行わせる
- 上双子筋と内閉鎖筋を意識したトレーニングでは、股関節を軽度屈曲位として行わせる
- 下双子筋と外閉鎖筋を意識したトレーニングでは、股関節の屈曲角度を深くして行わせる
- それぞれ骨盤帯の代償動作や下腿外旋に伴う外側ハムストリングスの代償動作に注意して行わせる
股関節外転を意識したトレーニング
- 股関節軽度屈曲位では、梨状筋の外転作用を意識したトレーニングを行わせ、深い股関節屈曲角度(90°)では上双子筋と内閉鎖筋の外転作用を意識したトレーニングを行わせる
- それぞれ、骨盤帯や体幹での代償に注意して行わせる
参考文献
アライメントからみた膝関節のスポーツ障害と理学療法 (理学療法 32巻5号 2015年5月 吉田昌平)