スポーツと栄養 栄養素の役割と特徴・糖質・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミン
5大栄養素の役割と特徴
- 私たちは食品からエネルギーや栄養素を摂取して生命活動を維持し、トレーニングを行っている
- アスリートの場合、性別・年齢別・日常生活状況の違いだけでなく、実施する競技の特性やトレーニングの頻度などによっても必要な栄養素の量は異なる
- スポーツにおける栄養の役割と関係する栄養素を以下に説明する
“栄養の役割”
- エネルギーの供給
- エネルギー生産反応の円滑化
- 筋肉の肥大、骨格の強化
- 身体機能の調節
“関係する栄養素”
- 糖質
- 脂質
- タンパク質
- ビタミン
- ミネラル
- 水
- 食物繊維
1.糖質 (炭水化物)
- 糖質とは、体内で消化吸収が可能な炭水化物をさす
- 食物繊維はヒトの消化酵素では消化されにくく(難消化性)、糖質と食物繊維を合わせたものを「炭水化物」という
- スポーツ栄養では、糖質と炭水化物はほぼ同義で使われることが多い
- 糖質の最小単位である単糖類にはグルコース(ブドウ糖)、果糖やガラクトースがある
- ショ糖や乳糖は単糖類が2つ結合したものであり、3~10個のものをオリゴ糖、それ以上のものを多糖類と呼ぶ
- デンプンやグリコーゲンは多糖類の代表であり、エネルギー源として最も大切な栄養素であると言える
- デンプンは口腔内から消化が始まり、胃と小腸で単糖まで消化されてから小腸で吸収され、門脈を通り肝臓に運ばれる
- グルコースは体内で肝臓と骨格筋に貯蔵され、必要に応じて代謝される
- 肝臓に貯蔵されたものは肝グリコーゲンとして血糖維持などに使われる
- 骨格筋に貯蔵されたものを筋グリコーゲンと呼び、運動時にエネルギー源となる
- 一般的に筋グリコーゲン量は200g、肝グリコーゲンは100g程度と少量であり、グリコーゲンが枯渇すると運動が続けられなくなる
- したがって、トレーニングの継続のためには、糖質を多く含む食品を毎日の食事から摂取する必要がある
- 糖質の摂取目安量は、持久系競技では“約7g/体重1㎏”、それ以外の競技では“約5~7g/体重1㎏”である
糖質を多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
2.脂質
- 脂質は重要なエネルギー源となるだけでなく、ホルモンや細胞膜、角膜を構成したり皮下脂肪として臓器を保護したり、身体を寒冷から守ったりする働きがある
- また、脂溶性ビタミン (ビタミンA・D・E・K) の吸収を促すなどの重要な役割を担っている
- しかし、摂り過ぎると肥満の原因となり、不足するとエネルギー不足から疲れやすくなったり、身体の抵抗力が低下したりする可能性があるため、適量の範囲での接種が大切である
- 食品や体内に貯蔵されている脂質の多くは中性脂肪であり、脂肪酸とグリセロールに分解されて代謝され、1g当たり9kcalのエネルギーとなる
- 脂肪酸のうち、植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸には、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きがある
- 動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させるので、摂り過ぎないように注意が必要である
3.タンパク質
- タンパク質には、骨格筋・骨・結合組織・内臓・酵素などを構成する構造タンパク質、ヘモグロビンなど酸素を運ぶ運搬タンパク質、免疫機能を司り身体を守る防御タンパク質、ホルモンなどの成長促進や生命活動の調整・生体の恒常性を維持するタンパク質などがある
- タンパク質は20種類のアミノ酸が総動員されて合成され、生命活動に必要な多くの生理機能を持つ
- 20種類のうち、体内で合成できるアミノ酸を非必須アミノ酸という
非必須アミノ酸
- グリシン
- アラニン
- セリン
- アスパラギン酸
- グルタミン酸
- アルパラギン
- グルタミン
- アルギニン
- システィン
- チロシン
- プロリン
- 合成できないか、あるいは合成されても必要量に達しないために必ず食物から摂取しなくてはならないアミノ酸を必須アミノ酸という
必須アミノ酸
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
- スレオニン
- リジン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- ヒスチジン
- 食品中に含まれるたんぱく質の質の評価には、必須アミノ酸が用いられる
- タンパク質の評価はアミノ酸スコアが100の時に良質であると判断され、体タンパク質の合成には必須アミノ酸がすべて十分に揃っていることが重要である
- 一般的に、動物性タンパク質や大豆のほうが、植物性タンパク質よりもアミノ酸スコアが高い
- しかし、米に卵や納豆を乗せて食べればアミノ酸スコアを上げることができるという補足効果があるため、いろいろな食品から摂取するようにした方がよい
食品中タンパク質のアミノ酸スコア
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
タンパク質の多い食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
4.ミネラル
- ミネラルとは、エネルギーにはならないが体内で重要な役割を担う物質である
マイクロミネラル(多量)
- カルシウム
- リン
- カリウム
- 硫黄
- ナトリウム
- 塩素
- マグネシウム
ミクロミネラル(微量)
- 鉄
- マンガン
- 銅
- ヨウ素
- セレン
- 亜鉛
- クロム
- モリブデン
- ケイ素
- スズ
- バナジウム
- ヒ素
- コバルト
- フッ素
- ミネラルのうち、アスリートが特に不足しがちなのは、カルシウムと鉄である
カルシウムを多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
鉄を多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
5.ビタミン
- ビタミンは微量で生命の維持に関わる不可欠な物質である
- 体内ではほとんど合成されないか、合成されても必要量に満たないため、二尾の食事から必ず摂取する必要がある
- ビタミンには脂肪に溶ける性質がある脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)と、水に溶ける性質がある水溶性ビタミン(ビタミンB群8種類・C)がある
- 脂溶性ビタミンは過剰摂取すると体内に蓄積されるため、耐容上限量が設定されている
- 一方、各ビタミンは不足するとそれぞれ特有の欠乏症を引き起こすことが知られている
ビタミンB₁
主な作用
- 糖質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- かっけ
- ウェルニッケ脳症
ビタミンB₂
主な作用
- 糖質代謝と脂質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- 口角炎
- 舌炎
- 角膜炎
ナイアシン
主な作用
- 酸化還元反応の補酵素に変換される
主な欠乏症
- ペラグラ
ビタミンB₆
主な作用
- アミノ酸代謝と脂質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- 皮膚炎
ビタミンB₁₂
主な作用
- アミノ酸代謝と脂質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- 悪性貧血
葉酸
主な作用
- アミノ酸代謝と核酸代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- 巨赤芽球性貧血
パンテトン酸
主な作用
- 糖質代謝と脂質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- なし
ビオチン
主な作用
- 糖質代謝と脂質代謝の補酵素に変換される
主な欠乏症
- なし
ビタミンC
主な作用
- 抗酸化作用、鉄の吸収促進、抗凝固因子
主な欠乏症
- 壊血病
ビタミンA
主な作用
- 明暗順応、成長促進
主な欠乏症
- 夜盲症、角膜軟化症
ビタミンD
主な作用
- 骨形成、カルシウムの恒常性の維持
主な欠乏症
- くる病、テタニー
ビタミンE
主な作用
- 抗酸化作用
主な欠乏症
- 動物の不妊症
ビタミンK
主な作用
- 止血、血液凝固
主な欠乏症
- 出血傾向、血液凝固低下
ビタミンB₁を多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
ビタミンB₂を多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
ビタミンCを多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
ビタミンAを多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
ビタミンDを多く含む食品
画像引用:スタートコーチ Reference book 公益財団法人日本スポーツ協会
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