肩関節上方支持組織の癒着

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烏口肩峰アーチ下の拘縮

第2肩関節における烏口肩峰アーチ下の滑走障害

  • 第2肩関節は肩峰、烏口突起、ならびに両者をつなぐ烏口肩峰靭帯によって形成される烏口肩峰アーチと、その直下を通過する大結節および腱板、肩峰下滑液包によって構成されている

 

  • 第2肩関節の機能学的特徴は以下の3つ
  1. 烏口肩峰アーチが大結節の上方偏位を抑制すること
  2. 腱板を上方から抑えることで骨頭の求心性を高めること
  3. 腱板に生じる摩擦を肩峰下滑液包により軽減すること

 

  • 第2肩関節での滑走障害の多くは、大結節と烏口肩峰アーチとの間におけるインピンジメントが問題となる

 

  • 滑走障害は『解剖学的要因』、『機能学的要因』の2つに分けられる

 

  • 解剖学的要因:肩峰の骨形態や傾斜角度、骨棘の形成、烏口肩峰靭帯の肥厚などがあげられる

 

  • 機能学的要因:上方支持組織の癒着に起因する肩峰下活動機構の障害、後下方支持組織の拘縮に起因する上腕骨頭の上方偏位、肩甲胸郭機能不全に起因する肩峰下腔の相対的狭小化などがあげられる

 

肩峰下圧と夜間痛

  • 夜間痛の発生と肩峰下圧との関連性について、烏口肩峰靭帯の切除術や肩峰下除圧術が夜間痛に有効とする内容が報告されている

 

  • これらのことから、夜間痛には肩峰下の病態が大きく関与していることが考えられる

 

  • 夜間痛の発生機序は以下の通りである

腱板を中心とする浮腫や攣縮、上方支持組織の癒着・瘢痕化

上腕骨頭および肩峰下周囲の静脈系の排動メカニズムが低下

就寝時に骨内圧が上昇しやすく、一度高まった骨内圧の減衰は緩徐であり、骨内圧の調節機構が破綻する

夜間痛発症

 

 

腱板疎部周辺の拘縮

  • 腱板疎部とは、棘上筋腱の前部線維と肩甲下筋の上部線維の間隙をいう

 

  • 表層をCHL(烏口上腕靭帯)、真相を関節包によって構成される

 

  • 第1肢位での内旋では、腱板疎部は弛緩して上下方向に拡大する

 

  • 第1肢位での外旋では、腱板疎部は緊張して閉鎖する

 

  • つまり、この組織は、上腕骨頭の前方偏位に対する緩衝機能を果たしている

 

  • 腱板疎部が弛むと、肩関節の下方不安定性を生じる

 

  • 一方で、腱板疎部周辺が瘢痕化すると、第1肢位での外旋が著しく制限される

 

  • 腱板疎部の特徴は以下の3つがある
  1. 烏口上腕靭帯や腱板疎部周辺部は滑膜が豊富であり炎症が波及しやすいこと
  2. 瘢痕化に伴い物理的特性が変化しやすいこと
  3. 疼痛閾値が低いこと

 

上腕二頭筋長頭腱の周辺組織の損傷

  • 損傷の原因として、肩関節の下方支持組織を主体とした拘縮や、腱板の機能低下を有する症例では、挙上運動に伴って上腕骨頭が上方偏位することが考えられる

 

  • このとき、結節間溝部入口付近のLHB(上腕二頭筋長頭腱)は、烏口肩峰アーチと接近し、肩峰下インピンジメントが生じやすくなる

 

  • その結果、上腕二頭筋長頭腱炎や同時にプーリーシステム周辺部の損傷などを引き起こす

 

  • 特に、プーリーシステムの中でも肩甲下筋腱上部線維の舌部が損傷されると、LHBの内下方の支持性は著しく低下する

 

  • それにより、LHBは肩甲下筋腱停止部に食い込み、さらに小結節との摩擦力が増大する

 

  • これらの要因が引き金となり、LHB周辺部の疼痛が増強することになる

 

上方支持組織の伸張テスト

肩関節の伸展可動域

  1. 背臥位とする
  2. 肩甲骨背面を床面に設置させた状態で行う
  3. 肩関節は内外旋中間位とする
  4. 肩関節を伸展させる
  5. 伸展15°以上の獲得が夜間痛消失の目安である

 

第1肢位での外旋可動域

  1. 背臥位とする
  2. 肩甲骨背面を床面に設置させた状態で行う
  3. 肩関節は内外旋中間位、肘関節90°屈曲位とする
  4. 上腕を固定したまま、肩関節を外旋させる
  5. 外旋24.7°以上の獲得が夜間痛消失の目安である

 

結帯動作

  1. 座位とする
  2. 耳垂と肩峰を垂直軸上にできるだけ一致させる
  3. 結帯動作をさせる
  4. 橈骨茎状突起がL3レベル以上の獲得が夜間痛消失の目安である

 

運動療法

腱板と肩峰下滑液包の癒着剥離操作

上前方支持組織(棘上筋前部線維・肩甲下筋上部線維)
  1.  背臥位とする
  2. 一方の手で大・小結節を捉え、他方の手で前腕を把持する
  3. 肩関節を伸展・内転・外旋方向に誘導する
  4. 烏口肩峰アーチ下からこれらの部位を引き出す
  5. 肩関節を屈曲・外転・内旋方向に収縮運動させる
  6. 烏口肩峰アーチ下にこれらの部位の滑り込みを誘導する

 

上後方支持組織(棘上筋後部線維・棘下筋上部線維)
  1.  背臥位とする
  2. 一方の手で大・小結節を捉え、他方の手で前腕を把持する
  3. 肩関節を伸展・内転・内旋方向に誘導する
  4. 烏口肩峰アーチ下からこれらの部位を引き出す
  5. 肩関節を屈曲・外転・外旋方向に収縮運動させる
  6. 烏口肩峰アーチ下にこれらの部位の滑り込みを誘導する

 

腱板疎部(烏口上腕靭帯)拘縮の伸張方法

  1.  背臥位とする
  2. 一方の手で烏口上腕靭帯を捉え、他方の手で前腕を把持する
  3. 肩関節を伸展・内転・外旋方向に誘導する
  4. 瘢痕化した烏口上腕靭帯が緊張してくる様子を触知する
  5. 緊張を感じたら、肩関節を屈曲・外転・内旋方向に誘導し、再び弛緩させる
  6. この伸張と弛緩の一連の運動操作を反復し、ストレッチングしていく