肩関節周囲炎

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肩関節周囲炎

  • 肩関節周囲炎は、微細損傷などの炎症を起こすきっかけ ⇒ 炎症反応の進行と収束 ⇒ 関節包や靭帯の瘢痕変性 ⇒ 二次性拘縮による組織編成と進行し、凍結状態に至る

 

  • 炎症反応に拍車をかけることなく瘢痕変性を最小に抑えられたときは凍結状態に至らないが、不幸にも凍結状態に至った場合、その後の自然緩解に半年から1年を要する

 

1:病期と介入の考え方

1.発症直後 (炎症反応第1期)
  • 肩関節周囲炎は原因不明が特徴のひとつとされる

 

  • 加齢による変性を考えると、上肢の自重のみでも過負荷になり得る

 

  • 何気ない日常の動作が微細損傷を引き起こしている可能性が高い

 

  • この時点で安静が確保できればすぐに収束に向かうものと思われる

 

  • 痛みを無視せず、使わない配慮が必要である

 

2.炎症最盛期 (炎症反応第2期)
  • 炎症反応は、組織を修復するには必要な反応である

 

  • しかし、炎症に拍車をかけると、この後の瘢痕形成が重症化する

 

  • いまだに『痛くても動かさないとダメ』と指導されるのが一般的で、炎症反応の収束が速やかに進まない原因がそこにあると思われる

 

  • 痛みを伴わない強さの運動で可動域を維持することに主眼を置く

 

  • 可動域の拡大は狙わない

 

3.炎症収束期 (炎症反応第3期)
  • 一般的には、炎症反応が順調に進めば、受傷後7~10日で収束期が始まり痛みの緩和が加速する

 

  • ここから修復(瘢痕化)が始まるが、炎症が遅延すれば瘢痕組織が多く作られることになり、凍結に至る原因となる

 

  • 有害物質の除去と修復のために毛細血管が豊富に構築され、修復が進むにつれ減少していく

 

  • メカニカルストレスを与えることなく、新生した毛細血管に豊富に血液を供給することに主眼を置く

 

  • 痛みを伴うストレッチは行わない

 

4.拘縮完成期 (結合組織治癒過程の成熟期に相当)
  • コラーゲン線維がタイプ3からタイプ1へ変化し、伸張性に乏しい瘢痕組織になる

 

  • 競技の凍結肩は、この瘢痕組織、二次性拘縮、滑液包の癒着による強固な拘縮である

 

  • 全身麻酔下においてさえ可動域の最終域感は変わらない

 

  • ストレッチに対する反応性はほぼないため、運動量による即自的変化は望めないが、炎症の再燃はないと考えて、伸張感を感じる程度のストレッチを行う

 

  • もし、即時的に変化が出た場合、肩甲上腕関節以外の部位が変化したか、完成された拘縮ではなく、筋の防御収縮や痛みが制限因子であったと考えるべきである

 

  • リモデリングのような変化を促すために、自動運動を多用したり、温熱療法を併用したりして血液循環や新陳代謝を高めることを考える

 

2:理学療法に併用される主な整形外科的治療

1.関節造影時のディステンション
  • 肩の痛みを訴える患者では、肩甲下滑液包が閉塞している場合が多く、特に肩関節周囲炎患者では高率に認められる

 

  • 腱板断裂の有無を確認することとあわせて、肩甲下滑液包の閉塞を開放することを目的に、関節造影とディステンションが行われる

 

  • 関節造影剤と局所安麻酔剤をあわせて約20~25mℓを関節内に注入する

 

  • 外転、内旋方向にマニピュレーション関節内圧が上昇し、その圧によって閉塞部位が押し広げられる

 

  • 軟部組織が伸張されるわけではないので、直後の可動域にはほとんど変化がないが、関節液が広がる空間が増えたことで、一気に内圧が下がるため、痛みが軽減し、この後の運動療法が行いやすくなる

 

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関節造影時のディステンション

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

2.全身麻酔下でのマニピュレーション
  • 保存療法に費やす時間がとれない患者や可動域改善に難渋する患者に対して、滑液包の癒着を剥離することと下部関節包の離開を狙って全身麻酔下でマニピュレーションが行われることがある

 

  • 実施後はほとんど痛みを訴えず大幅に可動域が改善する患者から、著名な腫脹を伴って実施前と変わらない硬さに戻る患者までさまざまである

 

  • 後者の場合も、腫脹の軽減に伴って可動域が改善していく

 

3.観血的癒着剥離術 + マニピュレーション
  • 腱板の不全断裂を合併している場合や、極度の可動域制限がある場合、観血的な方法が選択されることもある

 

  • 肩峰下滑液包、烏口下滑液包の癒着剥離、烏口上腕靭帯の起始部周辺での切離に加えて、挙上方向や回旋のマニピュレーションで、主に下部関節包の離開を行ってようやく可動域が得られる

 

3:可動域運動を行う際の工夫

1.肩峰下滑液包、烏口下滑液包、三角筋下滑液包の機能維持・改善
  • 肩峰下滑液包と烏口下滑液包は、烏口肩峰アーチと腱板の間の滑動性を保障する

 

  • 三角筋下滑液包は前2者と同じ深さにあり、より遠位部で上腕骨と三角筋の間の滑動性を保障する

 

  • 痛みの最盛期にはこれらの滑液包に水腫が存在する患者がいる

 

  • いずれも肩の可動域や痛みに直結する機能であり、癒着の増悪を防ぎたい

 

  • 肩峰下滑液包に対しては、烏口肩峰アーチのすぐ遠位で、徒手的に三角筋をずらすことで腱板との間隙を滑動させる

 

  • この操作を挙上角度を変えて行う

 

  • 烏口下滑液包は、烏口突起・烏口突起を起始とする筋の腱と肩甲下筋腱との間にあるので、三角筋をずらしても滑動させられない

 

  • 上腕骨頭を背側へ押すようにモビライゼーションすることで間隙を広げながら、肩水平内転や内旋方向への関節運動を行う

 

  • 三角筋滑液包は、肩峰下滑液包より遠位部で徒手的に三角筋をずらすことで上腕骨との間隙を滑動させる

 

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肩峰下滑液包のモビライゼーション

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

2.肩峰下インピンジメントがある場合

①解剖頸軸回旋を利用する

 

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解剖頸軸回旋模式図

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

  • 肩甲骨臼蓋面に上腕骨頭の解剖頸軸を垂直に立てたアライメントを保ったまま、解剖頸軸のスピン(解剖頸軸回旋)を行うと、大・小結節は烏口肩峰アーチの下に入り込まず、アーチと平行に動くことになる

 

  • よって、インピンジメントすることなく最終可動域までストレッチができる

 

  • 正常可動域(肩甲骨を固定した場合)は、外旋方向に約75°、内旋方向に約55°である

 

  • 臨床では側臥位で行う

 

  • 135°の頚体角を相殺するために45°外転位、かつ30°の後捻角を相殺するために30°外旋位とし、肘と手の高さを変えることなく肩の挙上・下垂を行うと、肩の中では解剖頸軸回旋が生じている

 

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解剖頸軸回旋を行うための肢位

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

 

②プレスアウトストレッチ

  • 目的の筋をやや緊張下に置き、奥の空間に押し出すように徒手的に操作して、筋を押し伸ばすように直接ストレッチする

 

  • 骨運動を行わないので、インピンジメントがある患者や、炎症が激しいためにわずかな運動でも痛みが出る患者にも応用できる

 

  • ただし、押し出すための空間が必要になるため、適応できる筋が限定される

 

  • 大円筋、大胸筋、小胸筋、上腕三頭筋長頭に適応できる

 

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大円筋に対するプレスアウトストレッチ

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

 

 

参考文献

肩の運動療法の基本と実際 (Jpn Rehabil Med  Vol.54 No.11 2017 立花孝)