頚椎捻挫 牽引テスト・並進テスト・ストレステスト・回旋テスト・不安定性テスト・スタビライゼーション・牽引・神経モビライゼーション

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頚椎捻挫

  • 頚椎捻挫は、頚椎の亜脱臼や靭帯に障害を受けるため、様々な神経症状を呈するようになる

 

  • 視診では、頚椎の前弯角度の減少や斜頚位が認められる

 

  • 主訴としては、めまい、耳鳴り、視覚障害、痺れ、疼痛等の症状を訴えることが多い

 

  • 上位頚椎は、後頭骨と環椎そして軸椎で形成されている

 

  • 環椎は、円形で椎体が存在しない

 

  • 軸椎は、歯突起が上部に突出し後方に大きな棘突起を持っている

 

  • 上位頚椎は椎間板を持たず、左右の椎間関節は側方やや前方に位置する

 

  • 軸椎の歯突起は前方では環椎の椎弓と、後方では横靭帯と関節を形成している

 

  • 頭蓋および上位頚椎領域における靭帯の不安定性は、上位頚椎領域の血管や神経構造にも障害を引き起こす

 

  • 環軸関節の不安定性は、脊髄神経に異常な圧力を引き起こし、椎骨動脈や神経根をも圧迫する可能性がある

 

  • したがって、上位頚椎の安定性や椎骨動脈のテストを行い、構造体の状態を確認する必要がある

 

  • そして、上位頚椎に問題がなければ、下位頚椎の評価治療に移る

 

頚椎捻挫における問題点

  • 複合損傷であることが多い

 

  • 上位頚椎の靭帯損傷による過可動性

 

  • C4、C5分節の複合靭帯損傷による過可動性

 

  • 椎間板の脱出や椎体の終板の損傷

 

  • 胸鎖乳突筋、頚長筋などの筋損傷

 

  • 椎間関節の骨折、亜脱臼、関節軟骨の損傷、関節包の損傷

 

  • 脳-脊髄損傷

 

  • 交感神経や椎骨動脈の損傷

 

  • 痛みが腰椎に波及することもある

 

上位頚椎の安定性に重要な靭帯

蓋膜

  • 環椎横靭帯を後方から覆う幅広い膜であり、後頭骨の斜台起こり第2・3頚椎体の後方で後縦靭帯に続いている

 

 

翼状靭帯

  • 軸椎の歯突起と後頭骨を強固に連結している

 

  • そのため、上位頚椎の連結パターンにもっとも影響を及ぼしている

 

  • 翼状靭帯の伸張や断裂は、上位頚椎の間で過度の回旋を引き起こし、椎骨動脈を過度に圧迫し、損傷を受けやすくなる

 

  • 翼状靭帯の損傷に伴う症状としては、頭痛(後頭部)、めまい・嘔吐、四肢の感覚障害・四肢麻痺、視力障碍、耳鳴り、バランス障害などがみられる

 

 

環椎横靭帯

  • 歯突起を環椎の腹側椎弓を強固に固定し、回旋のコントロールを行うだけでなく、歯突起の後方移動による脊髄の圧迫を防いでいる

 

  • 環椎横靭帯の損傷に伴う症状としては、足下をみるときしばしばめまいを生じる

 

  • 下肢の麻痺、眼振、嚥下障害、下の感覚障害、咽頭の違和感、頭痛、耳鳴り、バランス障害などがみられる

 


上位頚椎の安定性のテスト

蓋膜のためのテスト

1.牽引テスト
  • 患者は背臥位、もしくは座位

 

  • セラピストは患者の頭側に立つ

 

  • 一方の手で軸椎の歯突起と椎弓を固定する

 

  • もう一方の手を後頭骨の背側にあてがい、易しく頭部を牽引する

 

  • もし、動きが1~2㎜以上あれば陽性である

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法 

 

 

2.上位頚椎を屈曲位での牽引テスト
  • 牽引テストを発展させた方法

 

  • 上位頚椎を屈曲位にして牽引を加える

 

 
3.上位頚椎屈曲テスト
  • 患者は背臥位

 

  • 軸椎の椎弓を固定し、セラピストの肩と同側の手で菅屋の頭を前後から挟む

 

  • 上位頚椎だけを屈曲させる

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

 

4.上位頚椎腹側並進テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは一方の手を患者の後頭骨下部に置く

 

  • もう一方の手は前方から軸椎横突起に置いて固定する

 

  • 後頭骨を腹・頭側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

 

翼状靭帯のためのテスト

1.側屈ストレステスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは軸椎の椎弓から棘突起を一方の手と母指手固定する

 

  • もう一方の手で頭部を把持する

 

  • 後頭骨と環椎を側屈させる

 

  • 上位頚椎を屈曲位、中間位、伸展位でも行う

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

2.回旋テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは軸椎の椎弓から棘突起を一方の手の母指と示指で固定する

 

  • もう一方の手で頭部を把持する

 

  • 後頭骨と環椎を回旋させる

 

  • もし、20~30°以上の回旋がみられる場合、反対側の翼状靭帯の損傷が示唆される

 

  • また、過度の回旋の動きが同側への過度の側屈を伴う場合、翼状靭帯の損傷が示唆される

 

  • 過度の回旋の動きが反対側の過度の側屈を伴う場合、環軸関節性の不安定性が示唆される

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

3.上位頚椎回旋テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは下方の手の示指と中指を軸椎の椎弓に置き、尾背側へ押すように固定する

 

  • 上方の手は示指を乳様突起、中指を環椎横突起に置き、回旋を加えるように頭腹側へ動かす

 

  • このテストは、軸椎に対する後頭骨・環椎の回旋の動きの質と量を評価するためのテストである
 

 

4.側方並進運動テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは環椎を右手母指と示指の間を用いて右から他動的に固定し、環椎が左方へ移動した状態を維持する

 

  • そして、左手母指と示指の間を用いて軟部組織のたわみを取り、軸椎を右方向に動かす

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

5.環軸関節の後方安定性テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは患者の頭側に立ち、両手掌全体で患者の後頭骨を把持し、左右の示・中指を患者の環椎と軸椎の横突起から棘突起に置き、後頭骨に対して環・軸椎を同時に腹側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

6.環軸関節の前方不安定性テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは患者の頭側に立つ

 

  • 左右の母指を患者の環・軸椎の左右の横突起の前・側方に置き、両手掌全体と残りの指で後頭骨を背側から固定する

 

  • そして、両母指で同時に環・軸椎を背側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

 

治療

  • 上位頚椎に不安定性が認められた場合、基本的に徒手療法は禁忌となる

 

  • 頚椎の深部筋に対するスタビライゼーションは、不安定性を保護するためにも必要である

 

  • 下位頚椎の不安定性により椎間孔が狭窄し、神経根が圧迫されて疼痛やしびれなどの症状が出現している場合、頚椎の牽引や神経のモビライゼーションを行う

 

 

1.スタビライゼーション

  • 上位頚椎周囲の深部筋を中心にしたスタビライゼーションは、眼球の動きと上位頚椎の動きが同調していることを利用して行われる

 

 

背側の筋のスタビライゼーション
  • まずは眼球だけで上方視を行ってもらう

 

  • 頚椎は動かさないように注意する

 

  • 5~7秒間上方視し、休憩を5秒入れて、10回繰り返す

 

  • 最初は深部筋だけが収縮するように注意して行う

 

  • うまくできるようになれば、真横や斜め上、上下にも動かすとよい

 

  • 次に、座位になり、眼球で上方視しながら頭部から体幹を真っ直ぐにしたまま、股関節屈曲し、ゆっくり戻す

 

  • 1回につき5秒程度時間をかけて行うとよい

 

  • 休憩を入れて、10回繰り返す

 

  • 頚部の背側にベルトやタオルで抵抗をかけて、スタビライゼーションを行うこともできる

 

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過可動性のある部位に対するスタビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

腹側の筋のスタビライゼーション
  • まずは眼球だけで下方視を行ってもらう

 

  • 頚椎は動かさないように注意する

 

  • 5~7秒間上方視し、休憩を5秒入れて、10回繰り返す

 

  • 最初は深部筋だけが収縮するように注意して行う

 

  • 次に、患者に5~7秒下方視しているときに、セラピストが一方の手で患者の頭を背側から把持し、腹側から眉間に抵抗をかける

 

  • もしくは、5~7秒間下方視しながら自分の両母指で眉間に抵抗をかける

 

  • どちらも休憩を入れて10回繰り返す

 

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過可動性のある部位に対するスタビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

2.牽引

  • 椎間孔の狭窄により症状が出現している場合、椎間孔を開大させて症状の改善を図る目的で行う

 

 

頚椎全体の牽引治療
  • 患者は座位か背臥位

 

  • セラピストは患者の背側に立ち、両手で患者の頭部を把持し、頭部の重さを取り除く程度の力で頭部を30秒以上牽引する

 

  • 症状の改善が認められるなら、1分程度行う

 

  • 疼痛などの症状が強い場合は、もっとも症状が軽い肢位で行い、症状の改善に合わせて中間位で行うようにする

 

 

セグメント単位の牽引治療
  • 患者は座位か背臥位

 

  • セラピストは一方の手で牽引を行うセグメントの尾側の椎体を固定し、もう一方の手を頭側の椎体の横突起から椎弓にあてがう

 

  • 頭側にわずかな力で30秒以上牽引する

 

  • 症状の改善が認められるなら、1分程度行う

 

 

3.神経モビライゼーション

牽引を加えての神経モビライゼーション
  • 患者は座位か背臥位

 

  • 正中神経レベルのモビライゼーションを行う場合、セラピストは患者の背側に立ち、両手で患者の頭部を把持し牽引する

 

  • 患者は、その状態で患側上肢の肩関節を伸展・外転・外旋、肘関節を伸展、前腕を回外、手関節を背屈、手指伸展する

 

  • 次に、患側上肢の肘関節を屈曲する

 

  • そして、この動きをゆっくりと繰り返す

 

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牽引した状態での神経モビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

神経モビライゼーション
  • 患者は座位か背臥位

 

  • 正中神経レベルのモビライゼーションを行う場合、患者は患側上肢の肩関節を伸展・外転・外旋、肘関節を伸展、前腕を回外、手関節を背屈、手指伸展し、家五男w患側に側屈する

  • 次に、患側上肢の肘関節を屈曲すると同時に、頚椎を患側と反対に側屈させる

 

  • この動きを繰り返す

 

  • セラピストが動きを誘導する場合、もう一方の手で患者の頭部を把持し、動きをコントロールする

 

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頭部の動きと同調した神経モビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

 

参考文献

頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法 (理学療法学 第41巻第8号 622~629項 2014年 山内正雄)