偏平足 病態・FPI-6・HFT・ウィンドラス機能

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偏平足の評価と理学療法

偏平足障害の病態

  • 偏平足障害は『内側縦アーチの偏平化に伴う慢性的な足部・足関節の諸症状』と定義される

 

  • 近年では、後脛骨筋機能不全(PTTD:Posterior tibial tendon dysfunction)という名称が用いられることが多い

 

  • PTTDは、急性外傷やオーバースースなどによる滑膜炎や腱変性に伴う後脛骨筋の筋力低下、後脛骨筋腱の機能不全や痛みの総称である

 

  • 偏平足障害の発生頻度は、内側縦アーチ構造が未成熟である小児期において高く、大学スポーツ選手に関しては14.7%との報告がある

 

  • 中年以降に増加するとも言われている

 

  • 踵骨外反が蔓延化すると短腓骨筋優位の筋活動となり、前足部外転が起こる

 

  • それに伴い、足底内側の靭帯とショパール関節の関節包が伸張され、骨・関節・靭帯性組織の破綻によって偏平足障害へと進展する

 

  • 内側縦アーチが低下している症例は、後脛骨筋腱の滑走抵抗が増大することがあり、筋力だけでなく腱の滑走性の改善が求められる

 

  • 痛みは距骨舟関節、踵立方関節、足底などに生じ、関節関連性により足部以外の下腿、膝関節、腰部などに波及する場合も少なくない

 

 

偏平足障害に対する評価

  • 偏平足障害の後足部アライメントでは、calcaneus-angle が外反位で、HFT(Heel -Floor test)が陽性となる例において、内側縦アーチの低下が最も大きい

 

  • 背屈時に距骨頭内側の後方への滑りが阻害され外側優位に活動すると、踵骨外反・前足部外転が増大するため、距骨内側頭・外側頭の活動性評価が重要となる

 

  • 立位で患者の踵部を後方から観察し、外側に1.5趾以上が見える場合を陽性と判断する too many toes sigh は、PTTD患者で感度9.2%、特異度75%と報告されており、有用な評価の1つである

 

 

FPI-6
  • 国際的には、足部・速関節の静的アライメント評価に foot posture index (FPI-6)が用いられている

 

1:距骨頭アライメント

「距骨頭内側触知可、外側触知可+2」~「内側触知不可、外側触知可-2」

 

2:外果上下のカーブ

「外果下のカーブは外果上より明らかに大きく凹+2」~

「外果下のカーブが凸・平ら-2」

 

3:踵骨内外反

「約5°以上の外反+2」~「約5°以上の内反-2」

 

4:距舟関節周囲の突出

「距舟関節周囲が明らかに凸+2」~「明らかに凹-2」

 

5:内側縦アーチの形状

「アーチがかなり低く中央部が地面に接触+2」~

「アーチが高く後方に向かって急にに傾斜-2」

 

6:前足部の内外転

「内側のつま先は見えないが外側ははっきり見える+2」~

「外側のつま先は見えないが内側ははっきり見える-2」

 

 

  • 合計点が+10以上を極度の回内足、+6~+9を回内足、0~+5を正常、-1~-4を回外足、-5~-12を極度の回外足と評価する

 

 

HFT
  • 偏平足障害では内側縦アーチの問題に着目しがちであるが、外側アーチや横アーチには偏平化が認められる例も少なくない

 

  • HFTは、陽性か陰性かを判断するだけでなく、スクワット動作の初期に踵骨外反が強くなるのか、前足部に体重が移動してから内側縦アーチが降下するのかなど、詳細な評価のために行う

 

 

ROM
  •  距骨下関節やショパール関節、リスフラン関節についても確認する

 

  • 距骨下関節が回内するとショパール関節やリスフラン関節第1列の柔軟性が高くなる

 

  • 下腿外旋が強い例ではフットアングルが大きくなるため、荷重に伴い内側アーチが降下する場合がある

 

  • 症例に応じて近接関節の評価も必要となる

 

 

筋機能
  • アーチを構成する筋の機能が重要であり、特に長腓骨筋は内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチのすべてに影響を及ぼす

 

  • 内側縦アーチを構成する筋のうち、長母趾屈筋は距骨内側結節と踵骨載距突起部を支持しており、長趾屈筋とともに踵骨外反を制動する

 

  • 後脛骨筋は舟状骨と内側楔状骨に停止しており、アーチ機能のキーポイントとなる中足部を支持する最も重要な役割を担う

 

  • 特に、内果後方での後脛骨筋腱の滑走抵抗増大が筋力低下をもたらすと考えられており、同部の伸張性や県の滑走性も確認する

 

 

長腓骨筋・長母趾屈筋・後脛骨筋の起始停止』などを復習したい方はこちら

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ウィンドラス機能
  • 内側縦アーチの安定性に関与する足底内側組織には足底腱膜の貢献度が最も大きいと言われており、ウィンドラス機能の評価も必要に応じて実施する

 

  • ウィンドラス機能の評価では、足関節中間位で母趾を他動的に伸展し抵抗感を触知する

 

  • ウィンドラス機能が十分に発揮されない者は、抵抗感なく30°以上容易に伸展し、歩行の蹴り出し時に影響を与えることが予測され、CKCでのヒールアップ時に足底腱膜の緊張が得られるか否かを評価することも必要である

 

 

評価から得られるアライメントの情報

  • 偏平足障害の典型的な動的アライメントはニーイン&トゥアウトであり、片脚スクワット時のHFTでは強陽性となる

 

  • 静的アライメントは、calcaneus-angle が外反位で、内側縦アーチおよび横アーチが低下し、前足部外転位となる

 

  • too many toes sigh は陽性で、距骨頭アライメントは「内側触知可、外側触知不可」である

 

  • 距舟関節周囲の凸形状が認められ、足部・足関節の内側構成体には明らかな伸展負荷が生じていることが推察される

 

  • 関節運動連鎖の関係から上位関節への影響も大きく、アライメントを崩す要因を特定し適切なアプローチを実施することが求められる

 

 

 

 

『足関節捻挫』について復習したい方はこちら

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参考文献

アライメントからみた足部・速関節のスポーツ障害と理学療法 (理学療法 32巻5号 2015年5月 加賀谷善教)