シンスプリント

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シンスプリントの発症メカニズム

  •  シンスプリントの発症メカニズムは、筋腱の牽引損傷に起因するものと、脛骨への曲げ応力が加わるものの2つの理論がある

 

  • 後者は骨実質への微細損傷に起因すると考えられており、近年報告が増えている

 

  • シンスプリントはふくっ数に分類する試みがなされている

 

TypeⅠ:脛骨前内側の疼痛で、骨の微細損傷によるもの

TypeⅡ:下腿後方筋群の深部筋膜から下腿内側縁を起始とする筋の疼痛と張り

TypeⅢ:TypeⅠとTypeⅡが組み合わさった、中長距離ランナーに生じるものや、骨の未熟や低い骨密度によるもの

 

  • 筋腱の牽引損傷が原因であるとする発症理論では、ランニングなどによる下腿後面筋群の緊張力の高まりから筋膜・骨膜連結部で疲労損傷が生じると考えられている

 

  • したがって、疼痛発現に関与する筋群については、運動時痛や圧痛の部位となる脛骨内側部に付着する筋に焦点が絞られてきた

 

  • 下腿後面筋群の筋付着部

長趾屈筋:脛骨遠位後面内側からヒラメ筋線

ヒラメ筋:腓骨近位の後面、脛骨の後内側面、ヒラメ筋線

後脛骨筋:骨間膜後面、脛骨後面の外側面、腓骨後面の内側面

 

下腿後面筋群の復習をしたい方はこちら

 

 


シンスプリントの鑑別

  • シンスプリントは下腿後内側面遠位1/3から中央1/3の運動時痛や圧痛を主たる書症状とするため、同部位に疼痛を有する疾患との鑑別が極めて重要となる

 

  • 鑑別の対象となる疾患は、下腿コンパートメント症候群と下腿疾走型疲労骨折が該当する

 

下腿コンパートメント症候群

  • 下腿コンパートメント症候群は、筋区画内の内圧が運動に伴って上昇し、痺れや疼痛の出現する疾患である

 

  • 下腿の筋区画には、前方、外側、浅後方、深後方の4区画が存在する

 

  • ランニング障害として出現する

 

  • 前方コンパートメントに出現することが多いため、疼痛部位が重複することはない

 

  • しかし、頻度としては少ないが、深後方コンパートメントの疼痛では鑑別の判断が困難となる

 

  • スポーツによって生じるコンパートメント症候群は、運動停止とともに症状が軽減ないしは消失することが多く、シンスプリントとは病態が異なることが判断材料となる

 

下腿疾走型疲労骨折

  • 下腿疾走型疲労骨折はシンスプリントと疼痛発現部位が類似するため、慎重な判断が求められる

 

  • 臨床的には、シンスプリントでは比較的広範囲(最低でも5㎝以上)に圧痛が認められるのに対して、疾走型疲労骨折ではより限局される(2~3㎝)

 

  • しかしながら、これらの理学所見のみで判断することは難しく、画像所見でも確認する必要がある

 

  • シンスプリントでは、MRIのT2強調画像あるいはSTIR像で筋膜上に高輝度像が観察される

 

  • 一方、疾走型疲労骨折では皮質骨骨膜上に高輝度像が認められ、かつ骨髄内にも高輝度像が観察される

 

シンスプリントの発生因子

性差

  • 男性よりも女性で多い

 

  • 女性は男性よりもストライドが小さく、同じ距離を走るのにステップ数が多くなることが理由である

 

  • 長趾屈筋やヒラメ筋の脛骨付着部位置が異なるなど男女間の解剖学的差異の影響も指摘されている

 

体格指数の増加

  • 体格が増大し体格指数が増加すると、ランニングやジャンプ着地時に足部の緩衝能を超えて負荷が加わることになり、筋腱への牽引ストレスが増大することが考えられる

 

内側縦アーチの低下

  • 内側縦アーチの低下や過回内がシンスプリントの発症と関連があることについては多くの報告がある

 

  • シンスプリント発症の起点となるのはアーチを支える下腿筋群の牽引損傷であるため、シンスプリントに伴う内側縦アーチの低下は筋損傷による足部アーチ構造の機能不全が背景にあると考えられる

 

  • 内側縦アーチの低下はレントゲン画像と体表上のランドマークから計測される

 

  • レントゲン画像では、踵骨傾斜度(踵骨下縁と床面がなす角度であり、10°以下となった場合に偏平足と判断される)が用いられる

 

  • 体表面上からの評価は、安静立位で距骨下関節を中間位とし、舟状骨内側の舟状骨粗面と床面との距離を計測する

 

競技特性

  • 競技によっては下肢のマルアライメントを導きやすい姿勢や動作が含まれている

 

  • 体重心を下げたアスレティックポジションを動作の起点とすることが多い

 

  • Q-angle の大きい選手では不適切なアスレティックポジションからニーイン・トゥアウトを形成している場合があり、すでに内側縦アーチの低下や後足部の過回内を形成している

 

シンスプリント治療のための臨床推論

マルアライメントの改善

  • 静的アライメント(内側縦アーチや過回内)の改善を行う

 

  • Q-angleが15°以上になるとニーインの傾向が強くなるため、スクワットやカット動作時に膝と足部長軸が同一方向を向くよう石指揮させる

 

ストレッチング

  • ヒラメ筋あるいは長趾屈筋のストレッチングでは膝関節屈曲位で足関節を背屈させていく

 

テーピング

  • 筋腱に対する牽引ストレスを軽減する目的や、内側縦アーチの低下を防ぐためのテーピングがよく用いられる

 

  • 内側縦アーチを維持するためには、後足部の回内だけでなく、前足部の回内や母趾列の回内を抑制する必要がある

 

  • 前足部まで過回内となるアライメントは、母趾MP関節を外反へ誘導し、長母指屈筋腱の停止位置を底側から外側へと変化させ、トラス機構に対する十全な張力伝達を妨げる

 

  • そこで、母趾を内反方向へ誘導するテープを最初に貼付し、そのあと母趾球から背側に巻き上げて前足部回外を誘導し、外側縦アーチから底側に入り踵骨を巻き上げ、外反に対する制限を加える

 

  • 母趾球接地時の母趾外反を制限するとともに後足部の過度回内を制限することで、足底圧中心の軌跡の正常化も目的としている

 

  • また、回内の制限を強化するため、後足部からテープを脛骨後方に回している

 

参考文献

シンスプリントの理学療法における臨床推論(理学療法 33巻9号 2016年9月 渡邊裕之)