アキレス腱炎 病態と分類・アキレス腱付着部症・踵骨後部滑液包炎・付着部以外のアキレス腱障害・発生要因・理学療法評価
アキレス腱炎の病態
- アキレス腱周囲に痛みを訴えるものを総じてアキレス腱炎と称する
- 病態の違いを区別するために、アキレス腱周囲に痛みがあるものはアキレス腱障害と称されることが多くなっている
- アキレス腱障害は、踵骨付着部より約2㎝を境界として、アキレス腱付着部症と、付着部以外の腱障害とに分けられる
病態の分類
アキレス腱付着部症
アキレス腱付着部症は、アキレス腱の踵骨付着部そのものの障害と、踵骨後部滑液包炎の2つの病態に分けられる
アキレス腱の踵骨付着部の障害
- アキレス腱の踵骨付着部は、健常な環境では血行が比較的乏しく、微細損傷がいったん生じると修復に時間がかかる
- 過度の牽引ストレスにより付着部線維軟骨組織の微細損傷が誘発され、その修復状態が不良のうちに牽引ストレスが加わることで、変性が進行していくものと考えられる
踵骨後部滑液包炎
- アキレス腱付着部には踵骨後上部滑液包が存在し、足関節底屈・背屈運動により圧迫刺激を受けやすい構造になっている
- 圧迫刺激が繰り返し加わることで滑液包炎を呈するとされている
付着部以外のアキレス腱障害
付着部以外のアキレス腱障害は、アキレス腱症、アキレス腱周囲炎、アキレス腱症を伴うアキレス腱周囲炎に分けられる
アキレス腱症
- 腱組織そのものの微細損傷や小断裂など、アキレス腱そのものに炎症が発生した状態である
- 足関節底屈、背屈運動の際の圧痛部位は一定でない
アキレス腱周囲炎
- パラテノンなどの研修医組織に炎症が生じた状態である
- 足関節底屈、背屈運動の際の圧痛部位は一定である
アキレス腱炎の発生要因
①足部アライメント不良
- 踵骨内反、外反
- 足部回内、回外
②筋・腱の問題
- 下腿三頭筋の短縮や筋緊張増大
- アキレス腱の変性による弾性低下
③トレーニングの問題
- オーバーユース
- トレーニング内容の変更
④その他
- 加齢、肥満
- 高血圧症、糖尿病、関節リウマチなどの全身性疾患
- ステロイド、エストロゲン製剤の使用歴
- 靴の不適合
アキレス腱炎の理学療法における評価
問診
- 主訴
- 現病歴
- 既往歴
- 目標とする復帰時期
- 症状が発生する部位
動作観察・分析
- 症状が発生するるん認ぐの位相を確認しておく
- その前後の位相も確認し、特徴を確認しておく
各種検査・測定
①痛み
- 圧痛部位の特定
- 運動時痛
- 動作時の痛み
- 疼痛誘発、再現テスト
②腫脹・熱感
③静的アライメント
- 後側部:レッグヒールアライメント
- 足部アーチ(内側・外側・縦)の状態、程度
④足部機能
- トラスの動き
- ウィンドラス機構
- 足趾開排
⑤筋の状態
- 腓腹筋内・外側頭の萎縮、収縮、タイトネス
- ヒラメ筋の萎縮、収縮、タイトネス
⑥筋力
- 足関節:底屈、背屈、内返し、外返し
- 膝関節:屈曲、伸展
- 股関節:屈曲、伸展、外転、内転、外旋
- 体幹:屈曲、伸展、回旋
⑦運動協調性
- 股関節、膝関節、足関節の運動協調性
⑧周囲径
- 下腿最大囲、大腿
⑨関節可動域
- 足関節背屈、底屈
- 膝関節伸展
- 股関節屈曲、伸展、内旋、外旋
⑩関節動揺性・不安定性
- 足関節内反、外反、前方 (距骨下関節の可動性)
- 足部回内、回外、外転
⑪関節弛緩性
- ジェネラルジョイントラキシティーテスト
⑫その他
- 全身的な体力の測定
アキレス腱炎に対する理学療法
- 筋力、筋機能の低下、関節可動域制限に対しては各種エクササイズを実施する
- アキレス腱炎を有する対象者では下腿三頭筋の収縮機能が低下している例がみられ、電気刺激下で足関節底屈エクササイズを実施することも有効である
- 下腿三頭筋の伸張性が低下している例も多く、伸張ストレスを考慮しながらストレッチングを実施する
- 患部の状態の改善にともない、エクササイズの運動範囲、抵抗強度、運動強度の各設定を漸増していく
- 関節動揺性、不安定性の不可逆的な問題や、足部機能が低下している場合、テーピングや足底挿板などの補装具を用いる
- レッグヒールアングル増大(回内足)やランニングフォームのアライメント不良の場合、アキレス腱内側部への伸張ストレスが増強しやすいため、テーピングや足底挿板などでコントロールすることも有効である
- スポーツあk津堂を制限したことによる全身持久力低下の防止や身体組成の管理を目的に、上肢エルゴメーターや下肢エルゴメーター、ステップマシーンなどを用いる
- アキレス腱炎の症状が強い時期には非荷重でのエクササイズとなる水泳も用いる
- 下肢エルゴメーターでは、動作エクササイズを行う前段階で下肢関節の運動協調性を改善する目的でも実施する
- ランニング再開時に患部への力学的ストレスが増強することを回避するため、前足部で設置するランニングフォームの対象者であっても、踵接地でのランニングフォームから開始させる
- これにより、体幹の前方へのスムーズな移動も学習できる
- また、ストライドが大きい筋・腱への負荷が増強することが考えられるため、再開時にはピッチの頻度を増し、ストライドを小さくしておく
『アキレス腱断裂』について復習したい方はこちら
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参考文献
アキレス腱炎の理学療法における臨床推論(理学療法 33巻9号 2016年9月 岡戸敦男)