足関節捻挫

f:id:sakuraiku:20210806222923p:plain


                       

 

 

 

 

 

 

足関節捻挫の評価と理学療法

足関節捻挫の病態

  • 足関節捻挫は代表的なスポーツ外傷の一つであり、その発生頻度は高い

 

  • 中でも内反捻挫は70~77%と報告されており、発生機転は着地や方向転換時の内返し強制が大多数を占める

 

  • 損傷部位は前距腓靭帯が65~73%と最も多く、前距腓靭帯と踵腓靭帯の複合損傷は20%とされている

 

  • 前脛腓靭帯や腓骨筋腱、後脛骨筋腱などの損傷もみられる

 

  • 足関節捻挫の問題として、機能的不安定性の残存や後遺症、再受傷率の高さなどが挙げられ、年間3回以上の捻挫を繰り返す慢性的な足関節捻挫に移行した患者が11%に達したとの報告がある

 

前距腓靭帯・後距腓靭帯・踵腓靭帯について復習したい方はこちら


 

足関節捻挫のアライメント評価の実際

  • 足関節捻挫のアライメント評価では、calcaneus-angle やアーチ高などの静的アライメントだけでなく、動的アライメントを的確に評価することが重要となる

 

  • 後足部機能の評価に heel-floor test (HFT)がある

 

  • HFTは、片脚立位時の床面に対する踵骨軸の傾斜角を基準として片脚スクワット時およびカーフレイズ時の変化量を評価する方法である

 

  • 片脚立位時の傾斜角と各動作時の傾斜角との差を把握し、以下の5段階に分類し、それぞれカッコ内に示した記号で表示する
  1. 5°未満の外反は陽性 :(+)
  2. 5°以上の外反は強陽性:(++)
  3. 5°未満の内反は陰性 :(-)
  4. 5°以上の内反は強陰性:(--)
  5. 変化なし      :( ± )

 

  • 強陽性例では片脚スクワット時の膝外反が大きくなることが分かっており、足部アライメントが上位関節に与える影響を考慮しつつ、必要な評価を選択することが重要となる

 

  • アライメントと痛みや不安定性との関連に着目し、問題となる負荷様式を推察し、アライメントを崩す要因と考えられるROMや筋機能を評価する

 

  • 痛みについては、前距腓靭帯や踵腓靭帯にとどまらず、前脛腓靭帯や腓骨筋腱、後脛骨筋腱などとの合併損傷の存在を疑って評価する

 

  • ROMについては、その制限因子を特定することが重要であり、関節包内運動や筋スパズム、痛みなどによる制限の有無を確認する

 

  • 足関節捻挫の場合は、背屈ROMだけでなく距骨下関節の可動性が重要となる

 

  • 距骨下関節に回内制限があると足関節内反を引き起こす可能性が高くなる

 

  • また、正常な背屈運動を誘導するためには、背屈に伴って距骨頭内外側の後方への滑りが均等に生じているか評価する

 

  • 筋機能については特に長腓骨筋が重要であり、筋力評価の際に母趾球を底側および外反方向に蹴り出せるか確認する

 

  • さらに、足関節背屈筋群の評価も必要に応じて実施する

 

評価によって得られるアライメント情報

  • 足関節捻挫は急性外傷であるため、受傷機転と静的アライメントとの関連性は高いとは言い難い

 

  • ハイアーチや calcaneus-angle が内反位の症例では足関節内反捻挫を惹起しやすいと考えられるが、実際には偏平足の症例でも足関節捻挫は多発しており、静的アライメントよりは動的アライメントが受傷機転に関連する

 

  • ニーアウト&トゥインの動的アライメントでは、スポーツ動作時に足関節内反が生じやすくなるため、足関節内反捻挫の発生リスクは高くなる

 

  • 片脚スクワットでHFTが陰性となりニーアウト&トゥインを呈する症例は、踏み込み動作やジャンプの着地で足関節内反が生じやすくなるが、ニーイン&トゥアウトタイプに比べるとアット的に少ない

 

  • カーフレイズでHFTが陰性となる症例は、足関節内反が生じやすい

 

  • このことは接地動作に関連がないように思われるが、蹴り出し後のリカバリーが遅れると足関節内反位のまま接地することになるため、実際のスポーツ動作や足関節内反捻挫の発生に大きな影響を与える

 

アライメントからみた理学療法

距骨下関節・立方骨モビライゼーション
  •  ハイアーチや calcaneus-angle が内反位の症例では、静的アライメントが足関節外側靭帯に対する伸張負荷を高め、距骨下関節の回内ROMに制限を認める場合が多い

 

  • さらに、偏平足であってもHFTやニーアウト&トゥインを呈する症例では、距骨下関節回内に制限が認められる場合がある

 

  • これらの症例に対しては、距骨下関節の回内ROMを改善することで踵骨内反位を修正する

 

  • 踵骨を把持し、回内方向に徒手的操作を加え、距骨が足関節窩に固定される背屈位か中間位で実施する

 

  • 外側アーチ低下例に対しては、立方骨のモビライゼーションを施行する

 

  • 立方骨を把持し、回外方向に徒手的操作を加え、足底側から押し上げ、外側縁を引き下げるイメージで実施する

 

長腓骨筋エクササイズ
  • カーフレイズでHFTが陰性となる症例は、長腓骨筋の機能低下を有していることが多い

 

  • 長腓骨筋の筋力エクササイズでは、ゴムチューブを利用した方法に加え、母趾球荷重を意識した片脚立位エクササイズやカーフレイズを実施する

 

足趾伸筋および短腓骨筋のエクササイズ
  • 足関節背屈ROM制限や足趾伸筋機能低下、短腓骨筋機能低下も動的アライメントを崩す要因となるため注意する

 

  • 背屈ROMが十分獲得されていない場合、スポーツ動作時の重心位置が高くなり、距骨の前後径の形状から内反を引き起こしやすくなる

 

  • HFTが陰性で足趾伸筋群や短腓骨筋の機能低下を有する症例は症例は蹴り出し後のリカバリーが十分得られず、足関節内反が生じやすい

 

  • この場合、短腓骨筋のチューブエクササイズや足趾伸筋を伴ったカーフレイズなどを実施する

 

 

参考文献

アライメントからみた足部・速関節のスポーツ障害と理学療法 (理学療法 32巻5号 2015年5月 加賀谷善教)