投球動作分析と投球障害部位

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概要

  • 野球投手の投球動作は、投球側下肢に溜めた力を指先まで伝える高速で緻密な全身運動である

 

  • 投球障害肩の多くは、いわゆる over use からの身体機能低下により投球動作が変化し起こる場合と、未熟な投球動作により起こる場合が考えられる

 

  • 臨床場面では、身体機能の改善に重点を置くが、再発予防のためにはそれをふまえての投球動作の再構築が重要となる

 

  • 投球動作を三次元動作分析し、各関節運動を数値化することで、投球動作から各関節にかかる負荷を算出し、投球障害の原因を探ることができる

 

肩関節にかかる関節間力

  • 信原克哉は、投球動作を4層に分類している

 

  • 疼痛の訴えが多い acceleration phase は、踏み出し脚の接地(フットプラント)~最大外旋を経てボール・リリースまでである

 

  • ボール・リリースにおける肩関節に加わる前後方向の関節間力と、水平内転・外転角度に強い相関がある

 

  • 関節間力が高いことは、関節周囲の軟部組織にかかる負荷が大きいことを意味している

 

  • ボール・リリースにおいて肩関節に加わる負荷が最小になる上腕姿勢は、水平内転4.49°、外転89.99°である

 

  • 肉眼では、前から見ても上から見ても肩-肩-肘ラインが一直線であるであることを指標とする

 

投球障害につながる投球動作の特徴

  • acceleration phase は投球動作中で最も高速に上肢を運動させる動作であるため、意識的にコントロールすることは困難である

 

  • よって、これより前相である wind up phase ~フットプラントまでの間で acceleration phase に影響を及ぼしていることがないかをチェックする

 

  • cocking phase での肩最大水平外転が大きい

 

  • フットプラントから最大外旋において水平外転が大きいまま外旋が起こると、ボール・リリースで肩水平外転位となりやすい

 

  • ボール・リリース直後には急激な内旋が起こるが、肘が完全に伸展位ではないため、内旋の機能軸は上腕骨軸ではなく、肩・肘・手を結んだ三角形の中にできる

 

  • 従って、内旋によって肘が跳ね上がるように見える

 

  • 肘の屈曲角度が大きければ、肩が大きく揺さぶられるようになることが想像でき、肩後方や肘関節外側に強いストレスが加わる可能性がある

 

  • 障害発生の相として、最大外旋を中心に acceleration phase が注目されているが、このボール・リリース直後の急激な内旋位にもっと注目すべきではないだろうか

 

  • 下半身においては、 wind up phase での踏み出し脚膝最高位時に下半身重心に対する上半身重心が一塁方向(右投手の場合)に大きくなると骨盤後傾が増大する傾向にあり、以後の投球動作に影響を及ぼす可能性がある

 

  • フットプラントで骨盤回旋が大きい、いわゆる体の開くタイミングが早いとボール・リリースで肩水平外転位となりやすい

 

投球障害部位を探る

肩峰下インピンジメント

  • 疼痛部位     :肩峰下
  • 疼痛が出現する位相:cocking 以降
  • 誘発テスト    :Neer テスト、Hawkins テスト
  • 徒手検査     :SSP テスト、ISP テスト

 

インターナルインピンジメント

  • 疼痛部位     :肩峰角より後方
  • 疼痛が出現する位相:最大外旋
  • 誘発テスト    :水平外転位で最大外旋を強制
  • 徒手検査     :後方タイトネス、前方不安定性

 

腱板疎部損傷

  • 疼痛部位     :三角筋前部・中部線維の境界
  • 疼痛が出現する位相:最大外旋~ボール・リリース
  • 誘発テスト    :最大外旋を強制、Zero position test
  • 徒手検査     :Dimple sign 、腱板疎部の圧痛

 

棘下筋・小円筋の損傷

  • 疼痛部位     :棘下筋・小円筋の筋腹
  • 疼痛が出現する位相:ボール・リリース直後、フォロースルー
  • 誘発テスト    :水平内転と内旋を強制
  • 徒手検査     :棘下筋・小円筋の圧痛

 

投球動作の特徴からの身体機能評価

障害を起こしやすい投球動作の特徴 (最大外旋、ボール・リリースでの肩-肩-肘ラインの逸脱)

上半身の身体機能評価のポイント
  • 肩関節ルーズにングの有無(sulcus sign、load and shift test、dimple sign)

 

  • 肩甲上腕リズムの確認(肩過外転、肩甲骨情報回旋不足)

 

  • 肩甲上腕関節の可動性(後方タイトネスを含めた可動域制限や過可動性のチェック)

 

  • 肩甲骨の可動性

 

  • 肩甲骨の向きと位置を調整し、胸郭に固定する能力

 

  • 肩甲帯-腱板機能(腱板筋力低下、肩甲帯-体幹機能低下)

 

  • 前胸部、肋骨の柔軟性(大胸筋、小胸筋、外腹斜筋) 

 

下半身の身体機能評価のポイント
踏み出し脚膝最高位着目
  • 骨盤後傾角度、下半身に対する上半身重心が後方へ位置していないか

 

  • 左股関節屈曲、右股関節伸展可動域の確認

 

  • 右大殿筋・腸腰筋、右股関節内旋・外旋筋群のバランス(右下肢の安定性)

 

  • 下肢-骨盤-体幹の位置関係(姿勢のチェック)

 

 

踏み出し脚膝最高位~フットプラントに着目
  • 下肢-骨盤-体幹の位置関係(姿勢のチェック)

 

  • 右股関節内転筋力

 

  • 右股関節外転・伸展・外旋方向の動的安定性の確認(サイドランジ)

 

  • 左下肢の支持性(左股関節内転筋力)

 

肩甲骨の向きと位置を調整し、胸郭に固定する能力の低下

  • 投球障害を有する投手の多くは、ゼロポジションからさらなる屈曲や、リーチ動作(肩甲骨外転)で肩甲骨を固定できず、僧帽筋中部・下部線維や前鋸筋の機能低下が疑われる

 

  • 僧帽筋上部線維や肩甲挙筋での代償動作を認めることが多い

 

参考文献

モーションキャプチャ・システムを用いた投球動作分析からの理学療法 (関節外科 Vol.33 No.10 2014 亀田淳)