野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『烏口上腕靭帯』について共有していきます。
起始・停止
起始
- 烏口突起の基部
停止
- 上腕骨の大結節、小結節
特徴
- 烏口上腕靭帯には、一部小胸筋からの線維がそのまま合流し、構成されている
- 烏口上腕靭帯は肩関節内転・伸展・水平外転で緊張し、外転・屈曲水平内転で弛緩する
- 烏口上腕靭帯は肩関節下垂位での外旋に強く緊張し、この緊張は骨頭の下方不安定性に抵抗している
烏口上腕靭帯の周辺解剖
- 烏口上腕靭帯は烏口突起の基部から上腕骨の大結節・小結節をつなぐ靭帯であるが、多くの例で小胸筋からの腱線維が合流し構成されている
- 疎性結合組織が主体の靭帯で、非常に柔軟性に富む一方で、いったん瘢痕化すると著明な拘縮を引き起こす
烏口上腕靭帯の機能解剖
- 烏口上腕靭帯は肩関節下垂位外旋で強く緊張し、同時に腱板疎部(Rotator Interval)は前後方向で狭小化し、骨頭の安定化に関与する
- 内旋では烏口上腕靭帯は弛緩し、腱板疎部も前後に拡大する
- 下方不安定肩において、外旋位で下方不安定性(サルカスサイン)がみられる場合は、烏口上腕靭帯を含めた前上方組織の弛緩が疑われる
野球との接点
肩関節拘縮
- 烏口上腕靭帯の癒着、肥厚は肩関節外旋可動域を著明に制限し、肩関節拘縮のキーポイントとなる組織である
肩関節不安定症
- 烏口上腕靭帯を含めた腱板疎部が弛緩すると、骨頭の下方不安定性が生じる
- 肩関節外旋位で下方不安定性(サルカスサイン)がみられるときは、烏口上腕靭帯を含めた上前方組織の弛緩が疑われる
Sulcus sign(サルカスサイン)
- 肩関節下垂位とし、患者の上腕をつかみ下方へ牽引力を加える
- このとき、肩峰と上腕骨頭との間に陥凹認める場合を陽性とする
- 肩関節内旋位、中間位、外旋位の3つの肢位で比較することが大切である