肩関節包靭帯の拘縮の評価と運動療法 上方構成体・下方構成体・前方構成体・後方構成体・伸張テスト・運動療法
機能解剖
『関節包や各靭帯の起始・停止・特徴』について復習したい方はこちら
⇩⇩⇩
『肩関節運動時の関節包・靭帯の伸張部位』について復習したい方はこちら
⇩⇩⇩
静的安定化機構の伸張肢位とその機能
上方構成体
- 肩関節を下垂位にすると、上方関節包が緊張する
- 上方関節包の張力は、上腕骨頭の支点形成力とともに、骨頭を上方から支持する
- 上方支持組織には前上関節上腕靭帯(SGHL)や、中関節上腕靭帯(MGHL)が存在し、上方関節包を補強している
下方構成体
- 肩関節を肩甲骨面上で外転すると、下方関節包が緊張する
- 下方関節包の張力は、上腕骨頭の支点形成力とともに骨頭を下方から支持する
- 下方支持組織には前下関節上腕靭帯(AIGHL)、後下関節上腕靭帯(PIGHL)、関節陥凹(AP)が存在し、下方関節包を補強している
- APは下方支持支持組織の中で最も厚く、伸びやすく切れやすい物質特性がある
前方構成体
前上方関節包・SGHL・CHL
- 第1肢位で肩関節を外旋すると、前上方関節包、SGHL、CHL(烏口上腕靭帯)が緊張する
- これらの組織の緊張は、第1肢位における骨頭の前方不安定性を制動する
前方関節包・MGHL
- 肩関節を約45°外転位で外旋すると、前方関節包とMGHLが緊張する
- これらの組織の緊張は、軽度外転位における骨頭の前方不安定性を制動する
前下方関節包・AIGHL
- 肩関節を第2肢位で外旋すると、前下方関節包とAIGHLが緊張する
- これらの組織の緊張は、第2肢位における骨頭の前方不安定性を制動する
- apprehension test が陽性の場合、前下方組織の破綻を示唆する
後方構成体
後上方関節包
- 肩関節を第1肢位で内旋すると、後上方関節包が緊張する
- 後上方関節包の緊張は、第1肢位における骨頭の後方不安定性を制動する
後方関節包
- 肩関節を肩甲骨面上に約45°外転位で内旋すると、後方関節包が全体として緊張する
- この組織は、結滞動作や肩関節伸展位からの内旋により緊張する
後下方関節包・PIGHL
- 肩関節を第3肢位で内旋すると、後方関節包やPIGHLが緊張する
- これらの組織の緊張は、第3肢位における骨頭の後方不安定性を制動する
肩関節包靭帯の評価方法
前上方関節包・SGHL・CHLの伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は第1肢位とする
- 肩甲骨を固定し、内外旋中間位とする
- 肩関節を外旋させる
- 外旋45°まで達しない場合、前上方関節包・SGHL・CHLの伸張性低下が示唆される
前方関節包・MGHLの伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は45°外転位とする
- 肩甲骨を固定し、内外旋中間位とする
- 肩関節を外旋させる
- 外旋70°まで達しない場合、前方関節包・MGHLの伸張性低下が示唆される
前下方関節包・AIGHLの伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は第2肢位とする
- 肩甲骨を固定し、内外旋中間位とする
- 肩関節を外旋させる
- 外旋50°まで達しない場合、前下方関節包・AIGHLの伸張性低下が示唆される
後上方関節包の伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は第1肢位とする
- 肩甲骨を固定し、肩関節を軽度屈曲位、内外旋中間位とする
- 肩関節を内旋させる
- 外旋90°まで達しない場合、後上方関節包の伸張性低下が示唆される
後方関節包の伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は肩甲骨面上で45°外転位とする
- 肩甲骨を固定し、内外旋中間位とする
- 肩関節を内旋させる
- 外旋70°まで達しない場合、後方関節包の伸張性低下が示唆される
後下方関節包・PIGHLの伸張テスト
- 背臥位で行う
- 肩関節は第3肢位とする
- 肩甲骨を固定し、内外旋中間位とする
- 肩関節を内旋させる
- 外旋50°まで達しない場合、後下方関節包・PIGHLの伸張性低下が示唆される
肩関節包靭帯の運動療法
前上方関節包・SGHL・CHL
- 背臥位とする
- 肩関節は20~30°外転とする
- 一方の手で上腕骨頭の後方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の前方偏位とともに、伸展・内転運動を反復する
- 前上方関節包・SGHL・CHLの伸張程度にあわせて、肩関節の外旋角度を増加させていく
前方関節包・MGHL
- 背臥位とする
- 肩関節は肩甲骨面上で約30°外転とする
- 一方の手で上腕骨頭の後方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の前方偏位とともに、伸展運動を反復する
- 前方関節包・MGHLの伸張程度にあわせて、肩関節の外旋角度を増加させていく
前下方関節包・AIGHL
- 背臥位とする
- 肩関節は肩甲骨面上で約45°外転とする
- 一方の手で上腕骨頭の後方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の前方偏位とともに、外旋運動を反復する
- 前下方関節包・AIGHLの伸張程度にあわせて、肩関節の外転角度を増加させていく
後上方関節包
- 背臥位とする
- 肩関節は約20~30°屈曲とする
- 一方の手で上腕骨頭の前方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の後方偏位とともに、屈曲・内転運動を反復する
- 後上方関節包の伸張程度にあわせて、肩関節の内旋角度を増加させていく
後方関節包
- 背臥位とする
- 肩関節は肩甲骨面上で約30°外転とする
- 一方の手で上腕骨頭の前方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の後方偏位とともに、内転・内旋運動を反復する
- 後方関節包の伸張程度にあわせて、肩関節の内旋角度を増加させていく
後下方関節包・PIGHL
- 背臥位とする
- 肩関節は約45°外転とする
- 一方の手で上腕骨頭の前方を把持し、他方の手で上肢を把持する
- 上腕骨頭の後方偏位とともに、屈曲・内転・内旋運動を反復する
- 後下方関節包・PIGHLの伸張程度にあわせて、肩関節の内旋角度を増加させていく
AP
- 背臥位とする
- 肩関節は肩甲骨面上で60°外転とする
- 一方の手で肩甲骨を把持するとともに上腕骨頭の上方に置き、他方の手で上腕骨を把持する
- 上腕骨頭の下方偏位とともに、外転運動を反復する
- APの伸張程度にあわせて、肩関節の外転角度を増加させていく