小胸筋の圧痛好発部位と運動療法
機能解剖
- 小胸筋の作用は、肩甲骨の下制と前傾である
- さらに、菱形筋・肩甲挙筋との協調運動により肩甲骨の下方回旋に関与する
- 烏口突起を前方に引き、肩甲骨下角が胸郭から離れる(肩甲骨前傾)運動が生じる
- 肩甲骨が固定された場合には、肋骨の挙上に関与し、吸気を補助する
- 烏口突起と胸郭を結ぶ小胸筋を屋根として、その深部を鎖骨下動脈・鎖骨下静脈・腕神経叢が通過する
臨床的特徴
小胸筋症候群
- 小胸筋が直接肩から上肢に痛みを引き起こす
- 大きく分類すると胸郭出口症候群に含まれるが、上肢を外転した時に症状の発現が強いことから、別名、過外転症候群とも呼ばれている
- 小胸筋が攣縮状態にある場合、上肢挙上に伴う神経、血管の圧迫が強く加わり痛みが出現するとされている
- 小胸筋部の圧痛および放散痛が著明であり、斜角筋症候群、肋鎖症候群との鑑別が重要となる
肩関節不安定症
- 小胸筋、肩甲挙筋などの攣縮による不良姿勢が原因で、二次的に肩甲上腕関節の不安定性が出現していることがあるため注意が必要
圧痛好発部位
- 小胸筋の圧痛は、筋腹全長に渡って認めることが多い
- 特に烏口突起から遠位2~3横指の範囲は圧痛が強い
- この部位の深層には腕神経叢が走行しているため、小胸筋の緊張が強い症例では上肢に放散痛やしびれが生じる
評価方法
- 烏口突起の遠位部を触診する
- 肩甲骨を挙上・後傾・上方回旋方向に誘導する
- すると小胸筋が緊張するため圧痛を確認する
運動療法
リラクセーションおよびストレッチング
- 側臥位とする
- 肩甲骨を軽い挙上・後傾・上方回旋を他動的に加える
- 小胸筋の伸張を触診で確認する
- 肩甲骨の下制・前傾・下方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
- 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
治療法を選択する基準は?
まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。
筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら
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