棘下筋の伸張テストと圧痛好発部位

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この記事は次のような人におススメ!

棘下筋の伸張テストの方法・圧痛部位を知りたい!

 

 

機能解剖

  • 棘下筋は肩関節の内外転軸を上下にまたぎ、大結節に停止している
  • そのため、内外転軸の上方を走行する上部線維(横走線維)は下垂時に張力が強くなる
  • 下部線維(斜走線維)は挙上時に張力が強くなる
  • 棘下筋の上腕骨に対する作用は以下の通りである

第1肢位 (上部線維が伸張位となる)

  1. 肩関節の外転
  2. 上腕骨の下方偏位
  3. 肩関節の外旋
  4. 上腕骨の前方偏位

 

第2肢位 (下部線維が伸張位となる)

  1. 肩関節の外転
  2.  〃 の外旋
  3.  〃 の水平伸展
  4. 上腕骨の前方偏位

 

第3肢位 (棘下筋全体が伸張位となる)

  1. 肩関節の水平伸展

 

臨床的特徴

  • 腱板断裂は、従来、棘上筋腱が主体とされてきたが、棘下筋腱も多く含まれていることが報告されている
  • 棘下筋腱断裂は、肩関節の外転筋力にも大きな影響を与える
  • 正常肩と比較し、棘上筋の切除では39%、棘上筋・棘下筋の切除では63%外転トルクが減少したと報告されている

 

圧痛好発部位

上部線維

  • 肩甲上腕関節の後面部は顕著である
  • 肩甲棘下縁付近に多い

 

評価方法
  1. 肩甲棘の下縁を触診し、肩甲上腕関節まで進めていく
  2. 肩関節伸展位で内旋に誘導する
  3. すると上部線維が緊張するため圧痛を確認する

 

下部繊維

  • 肩甲上腕関節の後面部は顕著である
  • 肩甲骨外側縁に多い

 

評価方法 
  1. 小円筋の起始部の近位部を触診し、肩甲上腕関節まですすめていく
  2. 肩関節外転位で内旋に誘導する
  3. すると下部線維が緊張するため圧痛を確認する

 

伸張テスト

上部線維

  1. 背臥位で行う
  2. 肩関節30°屈曲する
  3. 肩甲骨の固定は内外旋中間位で行う
  4. そこから肩関節を内旋させる
  5. 内旋90°まで達しない場合、上部線維の伸張性低下が示唆される

 

下部繊維

  1. 背臥位で行う
  2. 肩関節90°外転する
  3. 肩甲骨の固定は内外旋中間位で行う
  4. そこから肩関節を内旋させる
  5. 内旋30°まで達しない場合、下部線維の伸張性低下が示唆される

 

運動療法

リラクセーション

上部線維
  1. 肩関節の軽度伸展・内転・内旋を他動的に加える
  2. 上部線維の伸張を触診で確認する
  3. 肩関節の屈曲・外転・外旋方向に自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
  4. 上部線維が収縮するのを触診で確認する
  5. その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

下部線維
  1. 肩関節の屈曲・外転・内旋を他動的に加える
  2. 下部線維の伸張を触診で確認する
  3. 肩関節を伸展・内転・外旋の自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
  4. 下部線維が収縮するのを触診で確認する
  5. その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

ストレッチング

上部線維
  1. 肩関節の伸展・内転・内旋を他動的に加える
  2. 上部線維がある程度伸張されるのを触診で確認する
  3. 肩関節の屈曲・外転・外旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
  4. 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
  5. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

下部線維
  1. 肩関節の屈曲・外転・内旋を他動的に加える
  2. 下部線維がある程度伸張されるのを触診で確認する
  3. 肩関節の伸展・内転・内旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
  4. 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
  5. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

治療法を選択する基準は?

まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。

筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら


治療法のベースとなる反復性等尺性収縮について復習したい方はこちら

 

 

 

 

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