棘上筋の伸張テストと圧痛好発部位 

f:id:sakuraiku:20210513071256p:plain

 

この記事は次のような人におススメ!

棘上筋の伸張テストの方法・圧痛部位を知りたい!棘上筋に対する運動療法を知りたい!

 

 

 

 

機能解剖

  • 筋の生理的横断面積の70%が棘上筋実質部の前1/3に集中している

 

  • 肩関節の挙上動作の中で、最大荷重、最大応力、弾性係数が棘上筋腱の前1/3で高い

 

  • このことから、棘上筋の中でも前部線維は機能学的に重要な部位と考えられる

 

  • 棘上筋腱は肩関節の回旋軸を前後にまたぎ、大結節に付着している(一部は小結節にも付着している)

 

  • そのため、回旋軸の前方を走行する前部線維は内旋運動に作用する

 

  • 回旋軸の後方を走行する後部線維は外旋運動に作用する

 

  • 棘上筋の主な作用は、上腕骨頭を関節窩に引き寄せる支点形成である

 

  • 肩関節外転時、棘上筋は支点形成力として作用し、三角筋は強力な回転モーメントの発揮に関与し、お互いが協調作用することで外転運動が遂行される

 

  • しかし、三角筋の作用で生じる上方偏位力の制動効果は棘上筋よりむしろ棘下筋・小円筋・肩甲下筋で優位だったという報告がある

 

  • また、肩関節外転運動に伴う下方偏位力は、すべての外転角度において、棘上筋よりも棘下筋、肩甲下筋の方が大きかったという報告がある

 

  • つまり、三角筋とのフォースカップル機構は、棘上筋単独ではなく他の腱板と協調しながら作用すると考えられる

 

 

臨床的特徴

  • 棘上筋は下垂位と比較して挙上角度を増していくと、長さ張力曲線の関係から棘上筋の機能も徐々に低下する

 

  • モーメントアームの大きい三角筋が腋窩神経麻痺などで機能が破綻すると、外転機能は著しく低下する

 

 

圧痛好発部位

前部線維

  • 棘上窩の内側1/4で認めることが多い

 

  • 上角部付近で顕著である

 

評価方法
  1. 棘上窩を触診し、さらに上角付近まで進めていく
  2. 肩関節を伸展・内転・外旋方向に誘導する
  3. すると前部線維が緊張するため圧痛部位を確認する

 

 

後部繊維

  • 棘上窩の内側1/4で認めることが多い

 

  • 肩甲棘の上縁で顕著である

 

評価方法
  1. 棘上窩を触診し、さらに肩甲棘の上縁まで進めていく
  2. 肩関節を伸展・内転・内旋方向に誘導する
  3. すると後部線維が緊張するため圧痛部位を確認する

 

 

伸張テスト

前部線維

  1. 座位で行う
  2. 肩関節45°外転の肢位で肩甲骨を固定する
  3. 肩関節をさらに30°外旋させる
  4. そこから肩関節を内転させる
  5. 内外転0°まで達しない場合、伸張性の低下が示唆される

 

 

後部繊維

  1. 座位で行う
  2. 肩関節45°外転の肢位で肩甲骨を固定する
  3. 肩関節をさらに30°内旋させる
  4. そこから肩関節を内転させる
  5. 内外転0°まで達しない場合、伸張性の低下が示唆される

 

 

運動療法

リラクセーション

前部線維
  1. 肩関節の軽度の外旋、肩甲骨面上での内転を他動的に加える
  2. 前部線維の伸張を触診で確認する
  3. 肩甲骨面上での外転と肩関節内旋の自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
  4. 前部線維が収縮するのを触診で確認する
  5. その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

後部線維
  1. 肩関節の軽度の内旋、肩甲骨面上での内転を他動的に加える
  2. 後部線維の伸張を触診で確認する
  3. 肩甲骨面上での外転と肩関節外旋の自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
  4. 後部線維が収縮するのを触診で確認する
  5. その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

 

ストレッチング

前部線維
  1. 肩関節の軽度の外旋、肩甲骨面上での内転を他動的に加える
  2. 前部線維がある程度伸張されるのを触診で確認する
  3. 肩甲骨面上での外転と肩関節内旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
  4. 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
  5. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

後部線維
  1. 肩関節の軽度の内旋、肩甲骨面上での内転を他動的に加える
  2. 後部線維がある程度伸張されるのを触診で確認する
  3. 肩甲骨面上での外転と肩関節外旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
  4. 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
  5. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

 

治療法を選択する基準は?

まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。

筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら

 

 

 

棘上筋の起始・停止など基礎知識を復習したい方はこちら