上腕二頭筋の伸張テストと圧痛好発部位
この記事は次のような人におススメ!
上腕二頭筋の伸張テストの方法・圧痛部位を知りたい!
機能解剖
- 上腕二頭筋長頭は、肩甲骨の関節上結節から上方関節唇に起始する
- 上方関節唇は関節軟骨とは密着しておらず、関節窩辺縁と上方関節唇との結合はルーズである
- 上腕二頭筋長頭腱と上方関節唇との連結部には可動性があり、肩甲上腕関節の安定化に寄与する
- このため、上腕二頭筋長頭腱張力により、上方関節唇は上腕骨頭を覆うように持ち上がり、骨頭の上方偏位を制動する
- 屍体を用いた研究では、肩関節外転90°・外旋90°において、上腕二頭筋長頭に張力を与えると、骨頭の前方偏位を優位に始動したとの報告がある
- 上腕二頭筋短頭は、烏口腕筋と共同腱を形成し、烏口突起に付着している
- 上腕二頭筋の各肢位における上腕骨に対する作用は以下の通りである
第1肢位
肩関節の屈曲
第2肢位
肩関節の水平屈曲
第3肢位
特異的な作用はない
臨床的特徴
上腕二頭筋長頭腱炎
- Yergason testが陽性となる
肩上方関節唇損傷 (SLAP lesion:Superior Labrum Anterior Posterior lesion)
- 投球肩障害の中の一つの病態として考えられている
- 投球動作の繰り返しによるover useと、全力投球時に加わるhyper tension(過大な牽引力)が作用することが原因とされている
- 上腕二頭筋長頭腱による強力な牽引力や骨頭による剪断力による
- Snyder(スナイダー)による分類
- Type1:関節唇の変性
- Type2:関節唇の剥離
- Type3:関節唇のバケツ柄様断裂
- Type4:上腕二頭筋長頭腱の部分断裂に至る垂直断裂
上腕二頭筋長頭腱断裂
- 肘関節を屈曲した時の上腕二頭筋の膨隆が遠位へ変位する特徴的な所見がみられる
圧痛好発部位
- 筋腹より腱レベルで確認できることが多い
- 長頭では、結節間溝レベルとその近位の上腕骨頭レベルで多く認める
- 上腕骨頭レベルでは長頭腱以外の組織も絡んでいるため、鑑別に注意が必要である
- 短頭は、烏口腕筋との共同腱部で認めることが多く、烏口突起付着部は重要な圧痛点である
上腕二頭筋長頭の評価方法
- 肘関節伸展位で肩関節を伸展方向に誘導し、結節間溝部を触診する
- 長頭腱を捉えることができるため、圧痛を確認する
上腕二頭筋短頭の評価方法
- 肘関節伸展位で肩関節を軽度外転方向に誘導し、烏口突起を触診する
- 共同腱(短頭は表層に位置する)を捉えることができるため、圧痛を確認する
伸張テスト
上腕二頭筋長頭
- 座位で行う
- 肩関節を下垂位、肘関節伸展位、前腕回内位とする
- 肩甲骨を固定する
- そこから肩関節を伸展させる
- 伸展30°まで達しない場合、長頭の伸張性低下が示唆される
上腕二頭筋短頭
- 座位で行う
- 肩関節を外転20°、肘関節伸展位とする
- 肩甲骨を固定する
- そこから肩関節を伸展させる
- 伸展30°まで達しない場合、短頭の伸張性低下が示唆される
運動療法
リラクセーション
上腕二頭筋長頭
- 背臥位とする
- 肩関節を軽度内転位から伸展と外旋を他動的に加える
- 上腕二頭筋長頭の伸張を触診で確認する
- 肩関節の屈曲・外転と外旋方向に自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
- 上腕二頭筋長頭が収縮するのを触診で確認する
- その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
上腕二頭筋短頭
- 背臥位とする
- 肩関節を軽度外転位から伸展と外旋を他動的に加える
- 上腕二頭筋短頭の伸張を触診で確認する
- 肩関節の屈曲・内転と内旋方向に自動介助運動(5~10%程度の強度)を行う
- 上腕二頭筋短頭が収縮するのを触診で確認する
- その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
ストレッチング
上腕二頭筋長頭
- 背臥位とする
- 肩関節を軽度内転位から伸展と外旋を他動的に加える
- 上腕二頭筋長頭がある程度伸張されるのを触診で確認する
- 肩関節の屈曲・外転と内旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
- 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
上腕二頭筋短頭
- 背臥位とする
- 肩関節を軽度外転位から伸展と外旋を他動的に加える
- 上腕二頭筋短頭がある程度伸張されるのを触診で確認する
- 肩関節の屈曲・内転と内旋方向に等尺性収縮(10~20%程度の強度)を行い、筋腱移行部に伸張刺激を加える
- 自動介助運動に切り替えて、その筋が動かせる可動範囲にわたり筋収縮を誘導する
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
治療法を選択する基準は?
まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。
筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら
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治療法のベースとなる反復性等尺性収縮について復習したい方はこちら
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上腕二頭筋の起始・停止など基礎知識を復習したい方はこちら
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