筋攣縮と筋短縮 生理的機序・圧痛所見・筋緊張・筋力低下・収縮時痛・運動療法・反復性等尺性収縮

f:id:sakuraiku:20220414065939p:plain

 

 

 

この記事は次のような人におススメ!

筋攣縮と筋短縮の違いを知りたい!
筋攣縮と筋短縮の評価方法を知りたい!

 

 

 

 

 

 

 

生理的機序

筋攣縮

  • 筋攣縮とは、筋が痙攣した状態のことを意味し、同時に血管のスパズムも伴っている

 

  • 筋攣縮のメカニズムには脊髄反射が強く関連している

 

  • 関節周囲組織に何らかの物理的、科学的刺激を受けることで、侵害受容器が反応し、その信号が脊髄内に入る

 

  • その後は、脳へ伝達される経路と脊髄反射を介して末梢へと伝達される経路に分かれる

 

  • 前者は関氏の後角でシナプスを介し、外側脊髄視床路を上行して視床でシナプスを介した後、大脳の体性感覚野に投射され、疼痛を認知する

 

  • 後者は脊髄反射を形成し、前角細胞のα運動線維と交感神経に関与する節前繊維とに作用し、筋や血管の痙攣を引き起こす

 

  • 長期に及ぶ筋、血管の痙攣は局所循環を停滞させる

 

  • すると、筋細胞は虚血に伴い組織が編成し、その過程において生じる発痛関連物質が監査し、疼痛や運動制限をきたす

 

  • これらの脊髄反射が反復して生じることで、負のスパイラルを形成し、関節拘縮を助長する

 

 

筋短縮

  • 筋短縮とは、筋の伸張性が欠如した状態のことを意味する

 

  • これは筋実質部の伸展性低下と筋膜の線維化によって生じる

 

 

筋実質部の伸展性低下
  • 筋繊維を構成する基本単位である筋節が減少することで生じる

 

  • 筋を伸ばすと太いフィラメントに対して隣り合う細いフィラメントが引き離され、筋節間が延長する

 

  • そのため、長軸上に連なる筋節の数が多くなるほど筋繊維の伸展性は増加することになる

 

  • つまり、筋実質部による伸展性低下とは、筋節数の減少によって伸展に対する抵抗が増す状態である

 

 

筋膜の線維化
  • 関節の不動や運動不足によって発症する

 

  • 筋膜や筋内膜のコラーゲ分子の末端に架橋結合が形成され、コラーゲン含有量の増加とともに組織自体の硬度が高くなる(分子間架橋)

 

  • つまり、筋膜の線維化とは、コラーゲン分子が架橋結合によって伸展に対する抵抗が増す状態である

 

 

筋攣縮と筋短縮を見分ける評価

  • 筋攣縮と筋短縮は生理学的・組織学的に異なった機序で発生するため、こられを見極める能力とともに、その状態に適した評価および治療技術の選択が必要である

 

 

1.圧痛所見の有無

筋攣縮
  • 圧痛を認めることが多い

 

  • その理由として、筋細胞外に発痛関連物質を放散し、高閾値機械受容器やポリモーダル受容器の閾値を低くさせるため、圧迫を侵害刺激として受容する

 

 

筋短縮
  • 圧痛を認めにくい

 

  • その理由として、組織編成がより進んだ状態であり、いわゆる伸びにくくなっているが、組織としては安定した状態であるためである

 

 

2.伸張位と弛緩位の緊張程度

筋攣縮
  • 関節肢位に関わらず、筋の緊張は持続的に高くなっている

 

  • したがって、筋を短縮位としても触診上の緊張が高い

 

  • また、筋を伸張位に強要すると緊張はさらに増強し疼痛が出現しやすい

 

 

筋短縮
  • 伸張位にすると引き伸ばされ、触診上の緊張は高くなる

 

  • 逆に短縮位にすると筋は弛緩するため、触診上の緊張は低くなる

 

 

3.筋力低下の有無

筋攣縮
  • 筋力低下を認める

 

  • その理由として、筋実質部に萎縮を認めないものの、筋肉の生理的な機能障害によってうまく筋力を発揮できないためである

 

 

筋短縮
  • 基本的には著名な筋力低下は認めない

 

  • 筋内圧も上昇していない

 

 

4.等尺性収縮時痛の有無

筋攣縮
  • 強い等尺性収縮を強要すると筋内圧はさらに上昇し、疼痛が出現しやすくなる

 

  • 特に、虚血を伴っている筋攣縮では収縮時痛がより顕著となる

 

  • その理由として、血管のスパズムも同時に伴っているため静脈還流が停滞し、その結果筋内圧が上昇するためである

 

 

筋短縮
  • 強い等尺性収縮を行っても筋内圧の上昇には直接影響しないため、疼痛は出現しない

 

 

運動療法

  • 筋攣縮および筋短縮に対する運動療法の一つとして、反復性等尺性収縮とストレッチングを組み合わせた方法を効果的に活用している

 

  • 筋攣縮に対する運動療法の目的は、筋緊張の緩和である

 

  • 筋短縮に対する運動療法の目的は、筋の伸張性を獲得することである

 

 

反復性等尺性収縮の生理学的機序

  • 等尺性収縮がもつ機能的特性として、筋の基本構造は筋腹を中心にして両端には腱が位置し、腱は骨に固着している

 

  • そのため、一方の関節を固定したまま筋収縮を行うと、両端の腱を中心に引き付ける力が発生する

 

  • 基本的に腱の伸張度は乏しく、筋収縮した分の足りない長さは筋腱移行部で負担することになる

 

  • つまり、等尺性収縮は筋腱移行部に効果的な伸張刺激が入る有効な方法であるといえる

 

 

ゴルジ腱器官の興奮によるIb抑制
  • 等尺性収縮に伴う筋腱移行部への伸張刺激により、ゴルジ腱器官が反応することで、脊髄レベルにおいて抑制性介在ニューロンを介した筋の弛緩が得られる

 

  • ゴルジ腱器官の閾値は意外に低く、軽度の伸張刺激でも十分に反応することが知られている

 

  • そのため、筋攣縮では軽い等尺性収縮を反復して行うことで緊張が緩み、伸長に対する抵抗が減少する

 

 

筋節の増加・合成と筋の伸張性獲得
  • 筋腱移行部への伸張刺激が筋の構成単位であるフィラメントの再合成を促進することが報告されている

 

  • 筋を適度に伸張させた肢位で等尺性収縮を行うと、筋腱移行部への有効な伸張刺激を加えることが可能であり、筋節の再合成を促す

 

  • これに、持続伸長に伴う筋膜の柔軟性の改善を併用すると効果的である

 

 

筋ポンプ作用の利用による筋内発痛物質の排除
  • 反復的に筋収縮を行うと筋ポンプ作用により筋内の血液循環やリンパ液還流を促通するため、筋内浮腫の改善とともに発痛関連物質の除去に有効である

 

  • 筋攣縮は圧痛所見を認めるが、軽い反復性等尺性収縮を繰り返し行うことで、徐々に圧痛が軽減するとともに、筋緊張も低下する様子がよく観察できる

 

 

反復性等尺性収縮の臨床応用

  •  大事な点は筋収縮の強さと等尺性収縮にかける時間の長さを使い分けることである

 

  • 同時に等尺性収縮の後には必ず自動介助運動を加えることがポイントである

 

 

筋攣縮に対する反復性等尺性収縮

  • 筋収縮の強さは最大筋収縮時の5~10%程度とし、収縮時痛を伴わない範囲内とする

 

 

烏口腕筋が筋攣縮しているケースでの治療方法

  1. 肩関節45°外転位から軽度伸展・内旋位を開始肢位とする
  2. そこから肩関節を屈曲・外旋方向に軽い等尺性収縮を行う
  3. その後は自動介助により運動を促す
  4. 続いて、肩関節伸展・内旋方向に自動介助運動を行い、烏口腕筋の伸張刺激や疼痛が生じない角度まで徐々に広げていく
  5. 圧痛所見の軽減と筋緊張の低下が得られるまで繰り返し行う

 

 

筋短縮に対する反復性等尺性収縮

  • 筋収縮の強さは最大収縮時の10~20%程度にとどめておく

 

  • それ以上の強要は目的以外の筋まで収縮が生じるため注意する

 

 

上腕三頭筋が短縮しているケースの治療方法

  1. 肘関節を最大屈曲させたまま肩関節を屈曲し、上腕三頭筋長頭の筋膜や筋線維に適度な伸張刺激を加え、開始肢位とする
  2. そこから肩関節伸展・肘関節伸展方向に等尺性収縮を十分に行う
  3. その後は自動介助により運動を促す
  4. 続いて、肩関節および肘関節を屈曲方向に自動運動介助を行い、上腕三頭筋長頭の伸張刺激や疼痛が生じない角度まで徐々に広げていく
  5. 肘関節を最大屈曲位での肩関節屈曲角度の増大や抵抗感が減弱するまで繰り返し行う