肩甲挙筋の圧痛好発部位と運動療法
機能解剖
- 肩甲挙筋の作用は肩甲骨の挙上である
- さらに大・小菱形筋、小胸筋との協調運動により、肩甲骨の下方回旋運動に関与する
- この筋は頚椎以外に乳様突起や後頭骨などへ幅広く付着し、肩甲骨の懸垂や姿勢保持に関与する
- 肩甲骨が固定された状態では、両側が作用した時に頚部の伸展、片側が作用した時は頚部の側屈と同側への回旋に関与する
臨床的特徴
肩結合織炎(肩こり)
- 筋硬結が著明な筋に肩甲挙筋があげられる
- 肩甲背神経の絞扼との関連が強い
肩関節不安定症
- 肩甲挙筋の過剰な攣縮は、肩甲骨を下方回旋・挙上位でブロックし、二次的な肩甲上腕関節の不安定性や腕神経叢症状を引き起こすことが多い
肩甲背神経の絞扼
- 肩甲背神経はC5神経根から分岐後、前斜角筋の下を中斜角筋に向かって走行する。中斜角筋の筋腹を貫通すると、肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋の深部を通過して終止する。
- 絞扼の部位は中斜角筋・肩甲挙筋・菱形筋で、中斜角筋で絞扼しやすい
- 絞扼により、肩甲挙筋・菱形筋の機能低下により肩甲骨の上方回旋変位や内側縁の安定性低下が起こることがある
- 絞扼により、肩甲骨内側の鈍痛や上肢の痛みを起こすことがある
圧痛好発部位
- 肩甲挙筋の圧痛は、筋腹全体に渡って確認できることが多い
- 特に肩甲骨上角部付近、頚椎横突起付着部周辺は圧痛の好発部位である
評価方法
- 第1~4頚椎横突起を触診する
- 肩甲骨上角部を下制・上方回旋方向に誘導する
- すると肩甲挙筋が緊張するため圧痛を確認する
運動療法
リラクセーションおよびストレッチング
- 側臥位とする
- 肩甲骨を軽い下制と上方回旋を誘導し、停止部を第1~4頚椎横突起から引き離すように他動的に加える
- 肩甲挙筋の伸張を触診で確認する
- 肩甲骨の挙上と下方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
- 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
治療法を選択する基準は?
まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。
筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら
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