上肢の運動器疾患における体幹機能とアプローチ

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上肢の運動器疾患における体幹機能とアプローチ

  • 運動器疾患の発生に関連する力学的負荷は『牽引』、『圧縮』、『剪断』の3つに集約される

 

  • 生体には通常その3つの負荷が複合して加わっている

 

  • 靭帯や筋などの軟部組織損傷は、直接的な打撲の場合を除いて牽引力によって生じ、骨軟骨損傷は牽引力、圧縮力、剪断力のいずれによっても生じる

 

  • つまり、運動器疾患の病態を離開するためには、生体に生じている力学的負荷を特定できなければならない

 

  • 力学的負荷の減少や分散は、それ自体がその負荷によって生じている症状の緩解や予防につながるものである

 

  • 体幹が屈曲位を呈する状況では、肩関節のアライメントが変化し、肩関節屈曲・外転可動域が制限され、伸展可動域は増大する

 

  • この伸展可動域は増大は、上腕骨頭が前方偏位したことによるもので、それによって肩関節前方での牽引力と後方での圧縮力が増大する

 

上肢のアライメント不良に関連する体幹機能

  • 上肢の代表的アライメント不良の原因となるもので、共通しているものに菱形筋群の機能不全と、小胸筋の短縮がある

 

  • 上肢の代表的アライメント不良にとって重要な体幹機能として、傍脊柱筋の筋緊張や筋活動、腹直筋や側腹部の筋の筋緊張や筋活動が挙げられる

 

 

菱形筋群の機能不全

  • 菱形筋群は上肢のアライメントだけでなく、体幹機能を考える上でも非常に重要である

 

  • 菱形筋群は、肩甲骨を介して肩甲帯を脊柱に連結し、肩甲帯の運動を安定化せせるだけでなく、様々な運動において脊柱に加わる外乱に抗しながら、脊柱の自由度を保つ作用をもっている

 

  • この作用は、骨盤帯における腸腰筋にもみわれ、肩甲帯と骨盤帯が各々の運動を協調的におこない、脊柱を安定化させることを菱形筋-腸腰筋バランスとしている

 

  • すなわち、菱形筋群の働きによって胸椎後方の自由度のある安定化が得られることと、腸腰筋の働きによって骨盤帯の機能的な運動が可能になることで、腰背部を含めた体幹機能が非常に安定して直立位を保持することが可能になる

 

  • 具体的には、肩甲帯の肢位によって上位胸椎と頚椎、頭部の位置が決定され、上位胸椎の肢位を正すには肩甲帯の動きをコントロールすることが必要になる

 

小胸筋の短縮

  • 小胸筋は、その短縮により肩甲骨を前傾・挙上・外転させ、上腕骨頭を対側に対して前方に変位させる

 

  • これにより、肩甲帯は前方突出し、上位胸椎や頚部のアライメントに影響を及ぼし、さらに菱形筋群の活動が起こりにくくなるという悪循環を生じさせる

 

傍脊柱筋・腹部筋の機能不全

  • 傍脊柱筋の機能不全によって、脊柱背部の筋緊張が低下し、脊柱の後弯が増強して骨盤が後傾しやすくなる

 

  • 骨盤後傾により重心線が正常よりも後方に落ちた状態で脊柱の後弯が増強すると、さらに脊柱背部の筋活動が生じにくい状態となり、両側の肩甲骨は外転位をとり、肩甲帯のアライメント不良を引き起こす

 

  • 一方、体幹の矢状面におけるアライメント不良に関係するのに対して、腹部筋の機能不全は体幹の前額・水平面アライメント不良に関係する

 

  • なぜなら、一側のみの腹部筋が機能不全になることで体幹は同側に側屈し、それによって同側の肩甲骨は下制・外転位を呈し、肩甲帯のアライメント不良が惹起される

 

  • また、腹部筋の機能不全は胸部の回旋に影響する

 

  • 脊柱が直立した状態では脊椎の回旋可動域は大きいが、脊柱全体に後弯がみられる場合には椎体間の回旋が制限され、胸腰部移行部での代償や、胸部での体幹側屈、肩甲帯の下制が生じる

 

  • 体幹回旋は腹部筋の緊張による腹圧の変化にも影響を受け、腹部筋の緊張が低い場合、側弯を伴った回旋運動を呈する

 

  • このように、体幹筋に機能不全がある場合、一側の上肢を挙上していくと、挙上側に凸の側弯が生じる

 

代表的アライメント不良

上腕骨頭前方変位
  • 上腕骨頭前方変位は、肩甲骨前方傾斜や肩関節内旋の程度が大きくなった場合に生じやすい

 

  • 肩甲骨前方傾斜は、胸椎の後弯増強や骨盤後傾を伴う脊柱の全体的な屈曲により生じる

 

  • また、小胸筋の短縮や、菱形筋群・僧帽筋中部線維の機能不全による肩甲骨内転不全によっても生じる

 

  • 肩関節内旋の増大は、大円筋や広背筋の短縮および外旋筋の機能不全によって生じる 

 

翼状肩甲
  • 翼状肩甲は、肩甲骨が胸郭に固定されにくくなった状態である

 

  • 前鋸筋や菱形筋群の機能不全および肩甲骨挙上筋の短縮によって生じる

 

外反肘
  • 外反肘は肘関節の問題だけでなく、上肢を用いた動作時にみられる肩甲帯の下制や肩関節の外旋制限によっても生じる

 

  • 外反肘に関連する肩甲骨の下制は、体幹が側屈した状態の誘因となり、外旋制限とともに日常生活における上肢の到達範囲を制限するものである

 

上肢のアライメント不良に関連する体幹機能とアプローチ

ウィンギングエクササイズ

  • 脊柱の全体的な後弯を矯正しながら、肩甲骨を脊柱・体幹に引きつける菱形筋群と肩甲骨の上方回旋に重要な役割を果たす肩甲挙筋を優位に活動させるエクササイズである

 

  • 翼状肩甲の改善と脊柱後弯を矯正・防止し、肩甲骨の内転安定性を高め、さらに肩甲骨の上方回旋を肩甲挙筋優位に行わせることである

 

 

 

 

 

参考文献

The Center of the Body -体幹機能の謎を探る- (関西理学療法学会 2005年12月18日)