菱形筋の圧痛好発部位と運動療法

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この記事は次のような人におススメ!

菱形筋の圧痛部位と運動療法を知りたい!

 

 

機能解剖

  • 菱形筋の作用は肩甲骨の内転である
  • さらに、小胸筋・肩甲挙筋との協調運動により、肩甲骨の下方回旋運動を遂行する

 

  • 肩甲背神経に支配される菱形筋は、僧帽筋に分布する頚横動脈の深枝である貫通枝を境界に、大菱形筋と小菱形筋に分けられる
  • 小菱形筋は腱膜を介して肩甲挙筋と結合していることがあり、触診や治療の際にはこれらの知識を踏まえた対応が必要となる

 

  • 前鋸筋と大・小菱形筋は肩甲骨の内・外転作用からは拮抗筋であるが、協調して肩甲骨を胸郭に固定している

 

臨床的特徴

胸郭出口症候群

  • 牽引型では菱形筋、僧帽筋中部線維による胸郭への肩甲骨の固定作用が低下している症例が多く、痛みの発生に強く関係している

 

肩甲背神経の絞扼

  • 肩甲背神経はC5神経根から分岐後、前斜角筋の下を中斜角筋に向かって走行する。中斜角筋の筋腹を貫通すると、肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋の深部を通過して終止する。
  • 絞扼の部位は中斜角筋・肩甲挙筋・菱形筋で、中斜角筋で絞扼しやすい
  • 絞扼により、肩甲挙筋・菱形筋の機能低下により肩甲骨の上方回旋変位や内側縁の安定性低下が起こることがある
  • 絞扼により、肩甲骨内側の鈍痛や上肢の痛みを起こすことがある

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圧痛好発部位

  • 大菱形筋や小菱形筋の脊柱側で確認できることが多い
  • 肩甲骨内側縁付近は圧痛の好発部位である

 

評価方法

大菱形筋
  1. 肩甲棘三角部より遠位側の内側縁を触診する
  2. 肩甲骨を外転・上方回旋方向に誘導する
  3. すると大菱形筋が緊張するため圧痛を確認する

 

小菱形筋
  1. 肩甲棘三角部より近位側の内側縁を触診する
  2. 肩甲骨を外転・上方回旋方向に誘導する
  3. すると小菱形筋が緊張するため圧痛を確認する

 

運動療法

リラクセーションおよびストレッチング

大菱形筋
  1. 側臥位とする
  2. 肩甲骨を軽い外転と上方回旋を誘導し、停止部を第2~5胸椎棘突起から引き離すように他動的に加える
  3. 大菱形筋の伸張を触診で確認する
  4. 肩甲骨の内転と下方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
  5. 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
  7. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

小菱形筋
  1. 側臥位とする
  2. 肩甲骨を軽い外転と上方回旋を誘導し、停止部を第7頚椎~第1胸椎棘突起から引き離すように他動的に加える
  3. 小菱形筋の伸張を触診で確認する
  4. 肩甲骨の内転と下方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
  5. 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
  6. リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
  7. この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う

 

治療法を選択する基準は?

まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。

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治療法のベースとなる反復性等尺性収縮について復習したい方はこちら

 

 

 

 

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