前鋸筋の圧痛好発部位と運動療法
この記事は次のような人におススメ!
前鋸筋の圧痛部位と運動療法を知りたい!
機能解剖
- 前鋸筋の作用は上束部と下束部に分けることができる
- 上束部は、第1肋骨と第2肋骨から起始し、上角に停止する
- 肩甲骨の外転と下方回旋の作用を有する
- 下束部は、第2肋骨の一部と第9肋骨から起始し、内側縁から下角に停止する
- 肩甲骨の外転と上方回旋の作用を有する
- 僧帽筋との協調運動により、肩甲骨の上方回旋運動と肩甲骨の内側縁を胸郭に引き付ける作用がある
- 前鋸筋は長胸神経によって支配されているが、上束部はさらに肩甲挙筋や菱形筋へ向かう第5・6頚椎神経根の枝からも支配されており、解剖学的および機能学的に下方回旋筋群と扱う方が臨床上都合がよい
- 前鋸筋の肋骨付着部は、外腹斜筋と鋸歯状に嚙み合っており、ここをGerdy線と呼ぶ
- 前鋸筋による肩甲骨への作用は、外腹斜筋が胸郭を固定することで、その作用効率が高まる
- 前鋸筋と大・小菱形筋は肩甲骨の内・外転作用からは拮抗筋であるが、協調して肩甲骨を胸郭に固定している
臨床的特徴
長胸神経麻痺
- 前鋸筋の機能低下による肩甲骨安定化のの破綻は、肩関節運動の重篤な障害となる
- 前鋸筋の機能を確認する際は、肩関節屈曲運動で確認することが重要である。その理由として、僧帽筋の代償により挙上が可能となる場合がある。
- 肩関節下垂位で後方から観察した時、肩甲骨内側縁が胸郭から浮き上がった所見がある時は、前鋸筋の機能不全を疑う
肩関節不安定症
- 前鋸筋の機能低下により、二次的に肩甲上腕関節の不安定性が出現する可能性がある
圧痛好発部位
- 上束部で確認できることが多い
- 上束部の圧痛は、上角から2横指外側のやや腹側(僧帽筋上部線維の前方)に圧迫を加えると第1肋骨を触診でき、この部分が圧痛の好発部位である
評価方法
- 第1肋骨部位を触診したまま肩甲骨を内転・上方回旋方向に誘導する
- すると上束部が緊張するため圧痛を確認する
運動療法
リラクセーションおよびストレッチング
上束部
- 側臥位とする
- 肩甲骨の軽い内転と上方回旋を他動的に加える
- 前鋸筋上束部の伸張を触診で確認する
- 肩甲骨の外転と下方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
- 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
下束部
- 側臥位とする
- 肩甲骨の軽い内転と下方回旋を他動的に加える
- 前鋸筋下束部の伸張を触診で確認する
- 肩甲骨の外転と上方回旋方向に軽い等尺性収縮を行いⅠb抑制を促す
- 自動介助運動に切り替え、その筋が動かせる可動範囲にわたり誘導する
- リラクセーション効果が得られ、その後、さらに伸張を加える
- この一連の動作をリズミカルに反復し、筋緊張と圧痛が改善するまで行う
治療法を選択する基準は?
まずは筋攣縮なのか、筋短縮を評価して見分けます。
筋攣縮と筋短縮の評価法について復習したい方はこちら
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