姿勢と下肢
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『下肢』について共有していきます。
下肢の概観
ヒトの下肢の特徴的な形態と特殊的な機能
- ヒトの上肢が資格情報を基に巧妙な運動機能を獲得するに伴い、下肢は直立二足歩行に適応したメカニズムへと進化した。
- こうした進化がヒトという霊長類に特徴的な進化を作り出している。
- 人独特の形態とプロポーションの構造は従来、霊長類が持っていた重心と内臓の位置から再配置を繰り返してきた最終結果であるといえる。
- ヒトは形態とバイオメカニクスを劇的に変化させ、より効率的な二足歩行を作り出してきた。
- 他の霊長類にも直立した姿勢をとって二足歩行をする能力はあるが、ほんの短時間しか継続できず、ヒトと比較するとはるかに大きなエネルギーを費やす。
- ヒトの習慣的な直立歩行は、骨格筋系の一連の解剖学的適応により達成されてきた。
- この解剖学的適応のうち、最も重要なものが脊柱と骨盤における適応である。
- ヒトの脊柱の構造は、他の霊長類と比べて著しく異なる。
- 例えば、チンパンジーにおける脊椎の1つの“弓と弦“構造は、ヒトにおいてはS字状弯曲なり、その結果、ヒトの体軸骨格は、衝撃吸収のバネとして機能することになった。
- 一方、体幹全体の重量は負荷を担う足面にかかることになった。
- 直立姿勢に関連したこの変化が腹部内臓全体の重量を骨盤に負わせることになった。
- こうして、内臓の負荷に耐えるため、ヒト特有の構造が作り出されたのである。
下肢の軸
成長段階における正常な下肢軸の推移
- 20°までの内反膝は生後1年ならば正常範囲である。
- 10°までの外反膝も2歳までは正常である。
- 小学校に入学する時期までに、筋骨格が成長し、その結果、下肢は本質的にまっすぐになる。
解剖学的な軸・力学的な軸
- 軸のアライメントが正常な個体では、下肢の大きな関節(股関節、膝関節、距腿関節)が一直線上にあり、その軸は下肢を縦走する荷重線(ミクリッチ線)にあたる。
- この荷重軸は、大腿骨頭の中心点から脛骨上関節面の顆間隆起を通って下行し、足関節窩の中心を通る。
- 脛骨骨幹では解剖学的軸と荷重軸は一致するが、大腿骨骨幹では解剖学的軸と荷重軸の間には6°の開きがある。
- よって、大腿骨と脛骨を縦に走る解剖学的軸は一直線上ではなく、冠状面において膝関節の高さで外側に174°の隅角(大腿骨脛骨角)を作る。
- 内反膝の場合、膝関節の中心は荷重軸の外側になり、外反膝の場合、膝関節は荷重軸の内側にずれる。
- どちらの状態も異常で、関節にアンバランスな負荷がかかるため関節包や靭帯および筋の伸展、そして骨・軟骨の変性が生じてくる。
- 例えば、内反膝では膝関節の内側に異常な荷重がかかりやすく、外側の関節構造(外側側副靭帯など)や腸脛靭帯、大腿二頭筋は異常な張力を受けやすい。
- 内反膝は、足の外側縁にもより大きな圧を懸けることになり、結果として足弓の低下が起こる。
足を少し開いた状態とそろえた場合の荷重軸の位置
- 足を少し開いて直立した姿勢において、荷重軸は3つの大関節の中心をほぼ垂直に通る
- 足を合わせたとき、普通は下肢がまっすぐとみなされるとすると、対する膝と内果は接する。
- よって、下肢間の顆間距離と果間距離は内反膝と外反膝計測のための指数になる。
- この姿勢をとった時、顆間距離が3㎝以上、または、果間距離が5㎝以上ならば異常である。
重心線に関する正常な解剖学的位置
- 重心線は全身の重心から地表面に垂直に走る。
- 正常の直立したヒトにおいて、重心線は外耳道、軸椎(第2頚椎)の歯突起、脊柱の正常弯曲間の弯曲点、全身の重心、股関節、膝関節、足関節を交差する。
- この線のあらゆる基準点における慢性的な変位は、それぞれの筋骨格系に異常な負荷をかけることになる。