PIR 等尺性収縮後弛緩法 胸腰部脊柱起立筋・腰方形筋・腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋・梨状筋

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PIRとは

  • PIRとは、PNFの contract-relax と筋エネルギー法 (muscle energy) を応用したテクニックである

 

  • チェコの神経科医 Vladimir Janda によって開発された

 

 

 

PIRの手順

患者の位置および肢位

  • 患者にできるだけリラックスした肢位をとらせる

 

 

筋の緩みをとる

  • 肢位が整ったら、目的とする筋の緩みをとる

 

  • ストレッチとは異なり、できるだけ筋をリラックスさせ、動きの止まるところで保持する

 

等尺性収縮

  • セラピストの軽い抵抗に対して目的とする筋を等尺性収縮させる

 

  • 通常5~8秒行うが、延長することもでき、これを3~5回繰り返す

 

  • もし、8秒以内でリリースされない場合、長い収縮が必要である

 

  • この収縮は最大収縮の10~20%の力で行いできる限り緩やかに行うべきである

 

  • したがって、セラピストは最小限の抵抗から始めるのが望ましい

 

 

呼吸と視覚の共同運動

  • 呼吸と眼の動きは筋の抑制に役立つ

 

  • 等尺性収縮の時に吸気を行わせ、目で筋の収縮をみる

 

  • そして、呼気を行いながら力を抜き、リラクセーションを促す

 

  • その際には筋から目をそらす

 

  • この呼吸と視覚の共同運動は、筋のリラクセーションに役立つといわれている

 

 

 

PIRの実際

胸腰部脊柱起立筋

患者の肢位
  • 患側を上にした側臥位とする

 

方法
  1. 下側の肩は後方に回旋させ、下肢は曲げる
  2. 両方の腕は治療台の外に垂らし、上側の下肢はわずかに伸ばす
  3. セラピストは患者の背後に回り、片手を上前腸骨棘に置き、もう一方の手は胸郭下部に置く
  4. 筋の緩みをとるために上前腸骨棘を後方に動かし、胸郭下部を前上方に動かす。これによって緩みをとり、筋の抵抗感をみつける
  5. セラピストの手で胸郭下部に抵抗を与え、等尺性収縮を促す。この時、患者には上をみてもらい、深く息を吸うように指示する 

 

 

腰方形筋①

患者の肢位
  • 側臥位とする

 

  • 腰椎をわずかに側屈させるために、巻きタオルなどを下に入れる

 

  • 患者の上側の上肢は挙上し、頭上の治療代を軽くつかむ

 

方法
  1.  患者に股関節を屈曲するように下肢を持ち上げさせ、セラピストの大腿部で下肢を挟むようにする
  2. セラピストの両手を患者の腸骨稜に置く。そして、前腕は股関節のあたりに軽く置く
  3. 可動域の最終を見つけるために、腸骨稜をまっす尾側に動かす。これによって緩みが取れ、筋の抵抗感がみつかる
  4. 患者はセラピストの抵抗に対して腸骨稜を引き上げ、腰方形筋の等尺性収縮を促す。この時、患者には上をみてもらい、深く息を吸うように指示する 
  5. 筋が弛むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで筋を伸張するように腸骨稜を尾側に導く

 

 

腰方形筋②

患者の肢位
  • 側臥位で行う

 

  • 患側の股関節を上側にして伸展した肢位とする

 

方法
  1.  セラピストは患者の背後に回り、患者の下肢を後方にもってきて、大腿部で挟む
  2. 筋の緩みをとるために、腸骨稜をまっすぐ尾側に動かす。これによって緩みが取れ、筋の抵抗感がみつかる
  3. 患者はセラピストの抵抗に対して腸骨稜を引き上げ、腰方形筋の等尺性収縮を促す。この時、患者には上をみてもらい、深く息を吸うように指示する 
  4. 筋が弛むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで筋を伸張するように腸骨稜を尾側に導く

 

 

腸腰筋

患者の肢位
  • 背臥位で行う

 

  • ベットの端から患側の下肢を出す(トーマス肢位変法)

 

方法
  1.  セラピストは健側に立ち、患者の両下肢を屈曲位に保持する
  2. 患者の股関節をゆっくりと伸展させ、長預金の緩みをとる。その際、健側の下肢はセラピストの側腹部で固定する
  3. 患側の股関節が可動域の最終に達したら、セラピストの手に抵抗するよう患者に患側股関節を屈曲してもらう
  4. 患者に力を抜かせ、ゆっくりと息を吐かせる。リラックスするのを待ち、筋が弛むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで患側の股関節を伸展して筋を伸張するよう導く

 

 

大腿直筋

患者の肢位
  • 側臥位とする

 

  • 患側を上側にする

 

方法
  1. 患者の上体をまっすぐにし、そして患者の骨盤が前傾しないようセラピストの骨盤を患者の臀部に押しつけ、患側の大腿を一方の手で、下腿をもう一方の手でセラピストが持つ
  2. 筋の緩みをとるために患側の股関節を伸展、膝関節を屈曲し、大腿直筋の抵抗が感じるところまで行う
  3. この位置で、股関節屈曲と膝関節伸展運動を同時に行ってもらい、大腿直筋の等尺性収縮を促す
  4. 患者に力を抜かせ、ゆっくりと息を吐かせる。リラックスするのを待ち、筋が緩むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで患側の股関節を伸展、膝関節を屈曲して筋を伸張するよう導く

 

 

大腿筋膜張筋

患者の肢位
  • 側臥位とする

 

  • 患側を上側にする

 

方法
  1. セラピストは患側の大腿を一方の手で、下腿をもう一方の手で持ち、そして患者の骨盤を固定するためにセラピストの骨盤を患者の臀部に当てる
  2. 筋の緩みをとるために患側の股関節を伸展・内転し、大腿筋膜張筋の抵抗が感じるところまで行う
  3. この位置で患者に股関節を屈曲・外転してもらい、大腿筋膜張筋の等尺性収縮を促す
  4. 患者に力を抜かせ、ゆっくりと息を吐かせる。リラックスするのを待ち、筋が緩むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで患側の股関節を伸展、内転して筋を伸張するよう導く

 

 

梨状筋

患者の肢位
  • 背臥位とする

 

方法
  1. セラピストは健側に立ち、患側の大腿を一方の手で、下腿をもう一方の手で持ち、そして股関節を60°以下に屈曲する
  2. 患側の股関節を内転し、大腿骨長軸に向かって圧縮を与える
  3. 筋の緩みをとるために患側の股関節を内旋し、梨状筋の抵抗が感じるところまで行う
  4. この位置で患者に股関節を外旋してもらい、梨状筋の等尺性収縮を促す
  5. 筋が緩むのを感じたら、次の抵抗感を感じるところまで患側の股関節を内旋して筋を伸張するよう導く

 

 

 

 

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参考文献

理学療法士列伝ーEBMの確立に向けて 荒木茂 マッスルインバランスの考え方による腰痛症の評価と治療 (三輪書店 2012年9月10日)