歩行と体幹・股関節筋の活動 立脚初期と立脚中期と立脚後期それぞれの前額面・矢状面・水平面

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歩行時における体幹筋の筋活動パターン

  • 歩行中の体幹筋の筋活動は、腹筋群においてそれぞれ異なる筋活動パターンを示した

 

  • 背筋群においては、多裂筋、最長筋、腸肋筋ともに類似した筋活動パターンを示した

 

 

歩行時における股関節周囲筋の筋活動パターン

  • 中殿筋は立脚初期から筋活動が増大し、立脚中期まで筋活動が増大するパターンであった

 

  • 内転筋は立脚初期および終期にかけて筋活動が増大し、立脚中期および遊脚期に筋活動が低下するパターンであった

 

 

各歩行周期における体幹筋・股関節周囲筋の役割

1.立脚初期

矢状面
  • 踵接地時、支持面である足底に対し重心は後方にある

 

  • そのため、骨盤および胸郭には前傾モーメントが増大する

 

  • よって、骨盤前傾に対し大殿筋、ハムストリングスによる制御が必要となる

 

  • 胸郭の前傾に対しては、腰背筋による制御が必要になる

 

  • さらに、腹筋群では腹直筋の筋活動が増大する

 

  • これは、踵接地直前まで下肢を前方に挙上しているため、骨盤には前傾モーメントが生じることになり、腹直筋による骨盤の空間保持としての機能が求められる

 

  • 踵接地時には腰背筋との同時収縮による体幹の矢状面での安定化に機能している

 

前額面
  • 踵接地の衝撃により骨盤には反対側骨盤の下制もしくは挙上モーメントが生じる

 

  • これは、歩行速度が遅いときにはより骨盤下制が生じ、歩行速度が速いときには骨盤挙上が生じやすい

 

  • 内転筋と中殿筋の筋活動パターンは、ともに筋活動が増大するパターンであるためこの踵接地時における骨盤の不安定は両筋の同時収縮によって安定させている

 

  • ブリッジの状態であるため、股関節は重力により外転方向に崩れる力が生ずる

 

  • そのため、内転筋のブリッジ活動により股関節外転位を保持させている

 

水平面
  • 上肢は後方へ振り出されている状態である

 

  • それに伴い胸郭は骨盤の回旋方向とは反対側に回旋する

 

  • 外腹斜筋の筋活動パターンは増大するが、これは胸郭の回旋に対するブレーキング作用であると考えられる

 

  • 広背筋と外腹斜筋は体幹回旋に関連しているといわれており、胸郭の回旋に対し求心性に、または遠心性に制御していると考えられる

 

 

2.立脚中期

矢状面
  • 支持面状に骨盤および胸郭がのっており、矢状面においては安定している状態である

 

  • 腹直筋および腰背筋の筋活動パターンは筋活動が低下する時期である

 

前額面
  • 内腹斜筋の筋活動は立脚初期、中期を通して筋活動が増大しており、特に中期をピークとして終期、遊脚期と比較して優位に増加した

 

  • 下肢への荷重量の増大と内腹斜筋の筋活動には関連性がある

 

  • 荷重によって仙腸関節へ剪断力が働くとし、内腹斜筋は骨盤内で横方向の筋線維であることから、内腹斜筋の筋活動はこの仙腸関節への剪断力を防ぐ効果がある

 

  • これにより、立脚期の骨盤帯の安定性に寄与したと考えられる

 

  • 片脚立位となるため、遊脚側の骨盤は下降する

 

  • 中殿筋の筋活動は、中期まで筋活動は増大しており、骨盤下降を防ぐ作用がある

 

水平面
  •  中期では体幹の回旋が生じない

 

  • 外腹斜筋の筋活動パターンにおいても、活動が低下している時期である

 

 

3.立脚後期

矢状面
  •  踵接地直後とつま先離地直前に、第5腰椎と仙骨の椎間板へ最も負担がかかる

 

  • 腰背部の筋活動は、初期と終期において増大が認められた

 

  • 最も腰椎への負担が増加する時期に腰背筋の筋活動を増大させることで、第5腰椎と仙骨の椎間板へのストレスを軽減させていると推察できる

 

前額面
  •  立脚初期から中期にかけて股関節は4°内転するといわれており、中期から後期にかけて外転し、歩行周期50%で股関節外転0°、歩行周期60%では股関節外転角度4°になる

 

  • 歩行周期における股関節内転筋の筋活動パターンは、踵接地時に筋活動が増大し、立脚中期で筋活動低下し、再度歩行周期50~60%で筋活動が増大するパターンである

 

  • これらのことから、立脚終期に股関節外転し、反対側下肢が設地する直前に股関節内転筋の筋活動が増大することからブリッジ活動が生じていると考えられる

 

  • このように、両側下肢が接地する直前および直後は重力の影響でアーチ内に崩れる力が働き、さらに荷重が均等にかかっていない状態であることから、ブリッジ活動は動作を継続するうえで非常に重要となる

 

水平面
  • 外腹斜筋の筋活動は立脚後期で優位に増大した

 

  • 後期では同側上肢の前方への振り出しに伴い体幹回旋が生ずる

 

  • 外腹斜筋と腹直筋の求心性収縮によって体幹回旋運動が生じたと考えられる

 

  • また、外腹斜筋と腹直筋の筋活動パターンは類似しており、立脚初期および終期で筋活動が増大するパターンであった

 

  • 立脚初期が胸郭の立脚側への回旋運動に対する遠心性の制御であるのに対し、後期では求心性収縮による胸郭の遊脚側への回旋に機能したと考えられる

 

 

 

参考文献

The Center of the Body -体幹機能の謎を探る- (関西理学療法学会 2005年12月18日)