筋の長さテスト 腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋・内転筋群・ハムストリングス・梨状筋・下腿三頭筋・胸椎伸筋群・腰方形筋
筋の長さテスト
- 姿勢の評価や運動パターンテストで過緊張を疑う筋に対して、実際に『筋の長さテスト』を行い確認する
- このテストは関節可動域を確認するのではなく、他動的な伸張に対する抵抗感(エンドフィール)を評価する
- 可動域は正常か、短縮により制限があるのかを確認する
- 最終域での抵抗感が短縮か、過緊張なのかを確認する
- 左右差を評価することも大切である
1.腸腰筋
患者の肢位
- 患者はベッドの端に座位をとる
- セラピストは患者の両下肢を屈曲位に保持しながら背臥位にする(トーマス肢位変法)
方法
- 非検査側の下肢を屈曲位にし、セラピストの体幹で固定する
- 腰椎が平らになるように、非検査側の股関節屈曲で調節する
- 検査側の下肢をゆっくりと伸展させ、動きが止まるとことで抵抗感をみる
- 標準では股関節伸展0°、オーバープレッシャーをかけると股関節伸展10°になる
2.大腿直筋
患者の肢位
- 患者はベッドの端に座位をとる
- セラピストは患者の両下肢を屈曲位に保持しながら背臥位にする(トーマス肢位変法)
方法
- 非検査側の下肢を屈曲位でセラピストの体幹で固定する
- 腰椎は平らになるように非検査側の股関節屈曲で調節する
- その際、検査側の股関節を伸展0°位に保持する
- 代償運動の股関節屈曲を防ぐ
- 標準では股関節屈曲90°に位置する
- そして、下腿部前面に当てた手で膝関節を屈曲させ、動きが止まるところで抵抗感をみる
- 標準ではオーバープレッシャーをかけると膝関節屈曲125°になる
3.大腿筋膜張筋
患者の肢位
- 患者はベッドの端に座位をとる
- セラピストは患者の両下肢を屈曲位に保持しながら背臥位にする(トーマス肢位変法)
方法
- 非検査側の下肢を屈曲位で、セラピストの体幹で固定する
- 腰椎は平らになるように非検査側の股関節屈曲で調節する
- その際、検査側の股関節を伸展0°位に保持する
- 代償運動の股関節屈曲を防ぐ
- そして、大腿外側に当てた手で股関節を内転させ、動きが止まるところで抵抗感をみる
- 過緊張の場合、男性では大腿外側部に溝、女性では平坦さを観察できる
- 標準では股関節は伸展0°位で15~20°内転する
4.股関節内転筋群
患者の肢位
- 背臥位にする
方法
- 股関節内旋、外旋中間位で股関節を外転させASISを触診し、動きが出たら留める
- 代償運動である骨盤の回旋、股関節の屈曲を防ぐ
- 標準では股関節は伸展0°位で40~45°外転する
5.内転筋群の単関節と二関節内転筋の鑑別
患者の肢位
- 背臥位にする
方法
- 膝関節屈曲位で行うことで、単関節内転筋の鑑別になる
- 股関節内旋、外旋中間位で股関節を外転させASISを触診し、動きが出たら留める
- 代償運動である骨盤の回旋、股関節の屈曲を防ぐ
- 標準では股関節は伸展0°位で40~45°外転する
- もし、股関節外転が膝関節屈曲位で大きくなればハムストリングス・薄筋が短縮、変わらなければ恥骨筋・大内転筋・長内転筋・短内転筋が短縮している
6.ハムストリングス
患者の肢位
- 背臥位で、非検査側の膝関節を屈曲させて腸腰筋を緩める
方法
- 患者の足部をセラピストの肘窩で保持し、前腕で下腿を把持する
- そして、股関節を屈曲させてASISを触診し、骨盤の動きをみる
- 膝関節が屈曲するか、または骨盤の動きが起こるところで止める
- 非検査側の膝関節屈曲位の場合、標準では下肢伸展挙上 (SLR) の可動域は90°、伸展位の場合、80°である
7.梨状筋
患者の肢位
- 背臥位にする
方法
- 2種類の方法がある
- 1つは股関節屈曲60°以下でテストを行う
- まず、大腿長軸方向に圧迫を加え、次に股関節内転・内旋を加え抵抗感をみる
- もう1つの方法は、股関節屈曲90°でテストを行う
- まず、大腿長軸方向に圧迫を加え、次に股関節内転・外旋を加え抵抗感をみる
8.下腿三頭筋
患者の肢位
- 背臥位で足部をベッドの端から出す
方法
- セラピストは一方の手で踵を保持、もう一方の手で前足部の外側で足関節背屈方向に力を加え、エンドフィールをみる
- 正常な長さは内反・外反中間位で足関節背屈0°である
- 子の肢位から膝関節をくっきょくさせて足関節背屈角度が増える場合、腓腹筋の短縮が疑われる
9.胸腰椎伸筋群
患者の肢位
- 座位にする
方法
- 2種類の方法がある
- 1つはセラピストが患者の骨盤を固定し、患者に体幹を屈曲してもらい、額と膝の間の距離を測る
- 標準では額と膝の間が30㎝以下である
- もう1つの方法は、PSISレベルと10㎝情報をマークしたうえで、患者に体幹屈曲してもらい、PSISとマークした部位との距離を測る(ショーバーテスト変法)
- 標準では距離が6㎝以上増加する
- しかし、この方法は椎間関節の可動性の問題も含まれるので、正確とは言えない
10.腰方形筋
患者の肢位
- 座位または立位にする
方法
- セラピストはは患者の骨盤を保持し、骨盤の偏位を防ぐ
- 患者は検査側と反対方向に体幹を側屈する
- セラピストは第12胸椎から第5腰椎までの弯曲を観察する
- 標準では、滑らかなカーブが腰部から胸部にかけてみられるはずだが、そうでない場合、反対側の腰方形筋の短縮が疑われる
- しかし、この方法は椎間関節の可動性の問題も含まれるので、正確とは言えない
『運動パターンテスト Jandaのテスト』を復習したい方はこちら
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参考文献
理学療法士列伝ーEBMの確立に向けて 荒木茂 マッスルインバランスの考え方による腰痛症の評価と治療 (三輪書店 2012年9月10日)