膝半月板損傷 半月板の構造と機能・荷重分散機能・関節の安定化機能・発生原因・断裂の様式・原因動作・理学療法評価・

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概要

  • 半月板損傷は膝疾患の中でも発生頻度が高く日常的にみられる疾患の一つである

 

  • 半月板損傷の治療では損傷部位や範囲などを考慮した保存療法が施行されるか、観血療法として半月板切除術、半月板縫合術が選択され理学療法が施行される

 

  • 半月板損傷の程度や範囲、損傷形態、受傷機転などは千差万別である

 

  • 個々の病態の正確な把握と、損傷部位への力学的ストレスをいかに軽減させるかが、半月板損傷後の膝機能を改善するうえで重要となってくる

 

 

半月板の構造と機能

機能解剖

  • 半月板の主に機能は以下の4つがある
  1. 関節の荷重伝達
  2. 関節の安定化
  3. 関節湿潤
  4. 関節軟骨の栄養補給

 

  • 組成はタイプⅠコラーゲンが全体の90%以上を占めている

 

  • コラーゲン線維は、円周状に走行する主線維が、中心方向に放射状に走行する線維によって補強されるように配列しており、線維が円周方向に裂けるのを防いでいる

 

  • さらに、表層のすぐ下の層は線維が不規則に入り組んでおり、関節表面に加わる様々な応力に適応できる構造となっている

 

  • 半月板は、成長に伴い内縁の血行が乏しくなり、成人では外縁の10~30%しか血液が供給されていない

 

  • 組織の治癒には血流が必要であることから、血流が乏しい内縁付近では治癒が起こらないと考えられている

 

  • したがって、半月板縫合術は結構領域の損傷のみに適応されている

 

 

内側半月板
  • C字状を呈し、辺縁部は関節包や内側側副靭帯深層により脛骨に強固に固定されているため、可動性は小さい

 

 

外側半月板

  • O字状を呈し、辺縁部は関節包や外側側副靭帯と連結しないため、内側半月板に比べて可動性は大きい

 

 

運動学

  • 膝関節運動に伴う半月板の移動方向は以下の通りである

 

 

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バイオメカニクス

荷重分散機能
  • 半月板は膝関節に生じた荷重を一部伝達している

 

  • 膝関節の内側コンパートメントに生じた応力の50%を内側半月板が、外側コンパートメントに生じた応力の70%を外側半月板が担う

 

  • 膝関節伸展位では応力の50%を半月板が伝達する

 

  • 膝関節屈曲位では応力の85~90%を半月板が伝達する

 

  • 半月板は断面がくさび状であるため、軸圧が加わると円周方向の張力に変換され、最終的には前角と後角の脛骨付着部に吸収される

 

 

関節の安定化機能
  • 半月板の断面の形状が大腿骨顆部を中心方向に戻すベクトルに作用し、関節の安定化に寄与する

 

  • 前十字靭帯不全膝では、内側半月板の特に後角が脛骨前方移動に重要な役割を果たす

 

  • 靭帯機能が低下した膝では、半月板がスタビライザーとして関節安定性に寄与することが示唆される

 

 

 

半月板損傷の分類と発生メカニズム

発生原因

発生原因は以下の3つに分類される

 

  1. スポーツなどにおける外傷性断裂(靭帯損傷を伴う場合もある)
  2. 加齢による中高年の変性断裂
  3. 円板状半月を誘因とした若年者の断裂

 

 

断裂の様式

  1. 縦断裂
  2. 横断裂
  3. 水平断裂
  4. フラップ状断裂
  5. バケツ柄状断裂
  6. 変性断裂

 

 

原因動作

  • スポーツでは切り返しやジャンプ動作を反復する種目が挙げられる

 

  • 基本的には、膝屈伸動作と内外旋の協調性が崩れた時に生じることが多い

 

  • 内側半月板であれば、膝軽度屈曲位で脛骨外旋が強制されたとき、または、膝深屈曲位で固い外旋が強制されたときに生じる

 

  • 加齢による半月板の変性断裂は、内側半月板後節を中心に発生する

 

  • 先天的要因、スポーツによる負荷、生活様式(和式)、肥満などが原因となる

 

  • 誘因なく膝関節内側痛を訴えることが多い

 

  • とくに中高年では、変形性膝関節症の曽木症状である可能性が考えられる

 

 

 

半月板損傷の理学療法評価

  • 評価の際に重要な3点

 

  1. 画像診断および術中所見と症状が合致しているか否かの検討
  2. 受傷部分へのストレスの増減と症状との関係の把握
  3. 受傷に至った原因の追究

 

 

問診

  • 受傷時の膝の屈曲角度や内外反、内外旋に関する情報

 

  • 運動時痛の有無および部位

 

  • 疼痛を生じる動作の種類

 

  • 疼痛が出現する角度

 

  • 荷重痛の有無

 

  • キャッチングやロッキングの有無

 

 

視診・触診

  • 関節水腫

 

  • アライメント異常の有無(膝関節内反、脛骨外旋)

 

  • 損傷側の半月板に一致した圧痛

 

 

関節可動域

  • 膝関節屈伸

 

  • 疼痛が出現する部位および角度

 

  • 膝関節屈伸に伴う下腿内外旋の動き

 

  • 疼痛により可動域が制限されている場合、大腿骨と脛骨の位置関係を徒手的に操作して疼痛や可動域の変化を確認する

 

  • ロッキング症状が疑われた場合、医者に報告し治療方針を相談する

 

  • 足関節背屈

 

  • 股関節内外旋

 

 

筋力

  • 大腿四頭筋

 

  • 特に内側広筋の機能低下が認められることが多い

 

  • 内側ハムストリングス

 

  • 体幹

 

  • 股関節

 

 

特殊検査

  • マックマレーテスト

 

  • アプレーテスト

 

  • 跳ね返りテスト

 

  • ディスコ検査

 

 

スクワッティングテスト

  • 患側下肢を一歩前に出した状態で前足に荷重させ、膝をまっすぐ、または、内反位、外反位に誘導し疼痛の変化を確認する

 

  • その際、足部を内向きにしたり外向きにしたりして回旋の動きも誘導する

 

  • また、膝の屈曲角度をさまざまに変えて疼痛の変化を確認する

 

  • 膝外反位で疼痛が出現すれば外側半月板損傷が疑われる

 

  • 膝内反位で疼痛が出現するば内側半月板損傷が疑われる

 

 

姿勢および動的アライメント

片脚立位

  • 遊脚側の骨盤が降下するトレンデレンブルグ徴候

 

  • 体幹を支持側に傾けるデュシェンヌ徴候

 

 

片脚スクワット

  • ニーインアライメント

 

 

参考文献

膝半月板損傷の機能解剖学的病態把握と理学療法 (理学療法 29巻2号 2012年2月 松本尚)