総指伸筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『総指伸筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨外側上顆
- 外側側副靭帯
- 橈骨輪状靭帯
- 前腕筋膜
停止
- 示指から小指の基節骨底
- 基節骨底に停止後、中心束(central band)となり中節骨底に停止する
- 中節骨に停止する前に外側束(lateral band)をのばし、終末腱となり末節骨に停止する
神経支配
- 橈骨神経(C6~C8)
特徴
- 総指伸筋より伸びた外側束には虫様筋、掌側骨間筋、背側骨間筋の腱が合流し、互いにPIP関節、DIP関節の伸展運動に関与する
- 総指伸筋腱は伸筋支帯により構成される第4区画を通過する
- 手関節を超えて遠位の総指伸筋腱は、示指から小指に向かって腱をのばすが、それぞれの腱は腱管結合により固定されている
①総指伸筋 ②小指伸筋 ③尺側手根伸筋
作用
筋機能の特徴
筋連結
野球との接点
上腕骨外側上顆炎
- 上腕骨外側上顆炎は外側上顆に起始する筋腱の付着部炎である
- その疼痛の発生には短橈側手根伸筋や総指伸筋が疼痛の引き金になる場合が多い
- 外側上顆炎に対する保存療法として、短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは症状の改善に有効である
- 十分な握力の回復には、深指屈筋、浅指屈筋の強化も大切であるが、手関節の固定に作用する総指伸筋の強化もあわせて必要である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
尺側手根伸筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『尺側手根伸筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨外側上顆
- 尺骨の後面上部
停止
- 小指中手骨底背側
神経支配
- 橈骨神経(C6~C8)
特徴
- 尺側手根伸筋腱は前腕回外位から回内位へと変化する際、尺骨茎状突起基部の膨隆を乗り越えるように走行が変化する
①総指伸筋 ②小指伸筋 ③尺側手根伸筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の背屈と尺屈に作用する
筋連結
野球との接点
上腕骨外側上顆炎
- 上腕骨外側上顆炎は外側上顆に起始する筋腱の付着部炎である
- その疼痛の発生には短橈側手根伸筋や総指伸筋が疼痛の引き金になる場合が多い
- その一部には尺側手根伸筋が疼痛発生に関与するケースも散見される
- 外側上顆炎に対する保存療法として、短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは症状の改善に有効である
尺側手根伸筋腱腱鞘炎
- 尺側手根伸筋腱腱鞘炎は前腕回内・回外により尺側手根伸筋腱の走行が変化することによる機械的ストレスが原因である
- 前腕回内位における尺側手根伸筋腱は、尺骨茎状突起の撓側にある尺側手根伸筋腱構を通過している
- 前腕の回外に伴い尺側手根伸筋腱は、茎状突起基部の膨隆を尺側へ乗り越えるように移動する
解剖学を学んでおいた方がよい理由
短橈側手根伸筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『短橈側手根伸筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨外側上顆
- 外側側副靭帯
- 橈骨輪状靭帯
停止
- 中指の中手骨底背側
神経支配
- 橈骨神経深枝(C6~C7)
特徴
- 手関節の近位背側では長母指外転筋と短母指外転筋の筋腹が、長・短橈側手根伸筋の上方を横切るように走行し、総指伸筋の深層へと進入する
- 短橈側手根伸筋腱はリスター結節の撓側を通過する
①腕橈骨筋 ②長橈側手根伸筋 ③短橈側手根伸筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の背屈と撓屈に作用する(短橈側手根伸筋は停止が中手骨底となるため、撓屈作用は長橈側手根伸筋と比べ弱い)
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
筋連結
野球との接点
上腕骨外側上顆炎
- 上腕骨外側上顆炎は外側上顆に起始する筋腱の付着部炎である
- その疼痛の発生には短橈側手根伸筋が強く関係している
- 長橈側手根伸筋は外側上顆に付着がないため、疼痛発生の引き金とはならない
- 外側上顆炎に対する保存療法として、短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは症状の改善に有効である
後骨間神経麻痺
- 後骨間神経麻痺(回外筋症候群)の大きな臨床的特徴は、下垂手ではなく下垂指を呈することにある
- これは、回外筋内に神経が進入する前に長・短橈側手根伸筋に神経の枝が分布し、その機能が失われないために起こる現象である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
長橈側手根伸筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『長橈側手根伸筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨外側上顆に至るまでの外側顆上稜
- 外側上腕筋間中隔
停止
- 示指の中手骨底背側
神経支配
- 橈骨神経深枝(C6~C7)
特徴
- 手関節の近位背側では長母指外転筋と短母指外転筋の筋腹が、長・短橈側手根伸筋の上方を横切るように走行し、総指伸筋の深層へと進入する
①腕橈骨筋 ②長橈側手根伸筋 ③短橈側手根伸筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の背屈と撓屈に作用する
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
筋連結
野球との接点
上腕骨外側上顆炎
- 上腕骨外側上顆炎は外側上顆に起始する筋腱の付着部炎である
- その疼痛の発生には短橈側手根伸筋が強く関係している
- 長橈側手根伸筋は外側上顆に付着がないため、疼痛発生の引き金とはならない
- 外側上顆炎に対する保存療法として、短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは症状の改善に有効である
後骨間神経麻痺
- 後骨間神経麻痺(回外筋症候群)の大きな臨床的特徴は、下垂手ではなく下垂指を呈することにある
- これは、回外筋内に神経が進入する前に長・短橈側手根伸筋に神経の枝が分布し、その機能が失われないために起こる現象である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
浅指屈筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『浅指屈筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕頭:上腕骨内側上顆
- 尺骨頭:尺骨粗面
- 橈骨頭:橈骨近位前面
停止
- 上腕頭:示指から小指までの中節骨底掌側
- 尺骨頭: 〃
- 橈骨頭: 〃
神経支配
- 正中神経(C7~Th1)
特徴
- 浅指屈筋は前腕掌側にある屈筋群の中間層に位置する
- 手関節近位レベルの浅指屈筋腱は長掌筋腱のすぐ尺側を走行する
- 手関節近位レベルの浅指屈筋腱は中指と環指へ向かう腱が浅層にあり、示指と小指に向かう腱が深層に配列委して走行する
- 浅指屈筋腱は中節骨に停止する手前で2つに分かれ、その間を深指屈筋腱が通過する
①円回内筋 ②浅指屈筋 ③撓側手根屈筋
④尺側手根屈筋 ⑤長掌筋
作用
筋機能の特徴
- 主にPIP関節の屈曲に作用する
- MP関節の屈曲に作用する
- 手関節の掌屈に作用する
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
- 示指から小指までの4つの筋束がそれぞれ単独で収縮することができる
筋連結
大胸筋・広背筋 ↔ 内側筋間中隔 ↔ 前腕屈筋群 ↔ 手掌面の筋群
野球との接点
内側型投球障害肘
- 投球障害肘でもっと多い内側型は、加速期における過度な外反負荷が原因で生じる
解剖学を学んでおいた方がよい理由
尺側手根屈筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『尺側手根屈筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨内側上顆
- 肘頭の内側面から尺骨の後面近位2/3
停止
- 豆状骨を介し、小趾の中手骨底掌側
- 有鉤骨鉤
神経支配
- 尺骨神経(C8~Th1)
特徴
- 手関節掌側では最も尺側に位置する腱で、浅指屈筋腱の尺側に位置する
- 尺側手根屈筋腱のすぐ撓側を尺骨動脈と尺骨神経が走行している
- 尺側手根屈筋は前腕の屈筋群のなかで、唯一尺骨神経単独で支配される
①円回内筋 ②浅指屈筋 ③撓側手根屈筋
④尺側手根屈筋 ⑤長掌筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の掌屈と尺屈に作用する
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
- 豆状骨より起始する小指外転筋の固定筋としても作用する(豆状骨は支持組織がルーズで静的安定性に欠ける。そのため、小指外転筋はその収縮力を有効に作用させるためには土台である豆状骨の安定化が不可欠である。尺側手根屈筋はこの豆状骨の安定化に寄与し、小指外転筋の機能を高めている)
筋連結
大胸筋・広背筋 ↔ 内側筋間中隔 ↔ 前腕屈筋群 ↔ 手掌面の筋群
野球との接点
内側型投球障害肘
- 投球障害肘でもっと多い内側型は、加速期における過度な外反負荷が原因で生じる
- 内側型投球障害肘では尺側手根屈筋に痙攣や圧痛を呈することは比較的少ない
- 重症例では尺側手根屈筋に強い症状を呈する場合がある
- このような症例では小指に痺れを訴えるケースも散見される
肘部管症候群
- 尺側手根屈筋は肘部管を構成するひとつの要素であり、同部での尺骨神経の絞扼の原因となる場合がある
- 肘部管症候群では尺側手根屈筋は麻痺する
解剖学を学んでおいた方がよい理由
撓側手根屈筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『撓側手根屈筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨内側上顆
停止
- 示指、中指の中手骨底掌側
神経支配
- 正中神経(C6~7)
特徴
- 手関節掌側では長掌筋腱の撓側に位置する
- 撓側手根屈筋腱と長掌筋腱の間には正中神経が位置し、撓側手根屈筋腱の撓側には橈骨動脈が位置する
①円回内筋 ②浅指屈筋 ③撓側手根屈筋
④尺側手根屈筋 ⑤長掌筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の掌屈と撓屈に作用する
- 掌屈運動は撓側手根屈筋と尺側手根屈筋のバランスのなかで調整されている
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
- 前腕が回外位では回内作用を有している(内側上顆から斜め外方へ走行しているため)
筋連結
大胸筋・広背筋 ↔ 内側筋間中隔 ↔ 前腕屈筋群 ↔ 手掌面の筋群
野球との接点
内側型投球障害肘
- 投球障害肘でもっと多い内側型は、加速期における過度な外反負荷が原因で生じる
- 撓側手根屈筋の筋腹に強い痙攣と圧痛を呈する例が多い
解剖学を学んでおいた方がよい理由
長掌筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『長掌筋』について共有していきます!
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨内側上顆
停止
- 手掌腱膜
神経支配
- 正中神経(C7~Th1)
特徴
- 手関節掌側で観察される長掌筋腱は、その他の屈筋腱を確認するうえで重要なランドマークとなる
- 長掌筋腱の撓側には撓側手根屈筋腱、尺側には浅指屈筋腱、浅指屈筋腱の尺側に尺側手根屈筋腱が走行している
- 長掌筋が先天的に欠損する例は比較的多く、その欠損率は4~13%といわれている
①円回内筋 ②浅指屈筋 ③撓側手根屈筋
④尺側手根屈筋 ⑤長掌筋
作用
筋機能の特徴
- 手関節の掌屈に作用する
- 肘関節の屈曲に補助的に作用する
- 手掌腱膜に緊張を与える
筋連結
大胸筋・広背筋 ↔ 内側筋間中隔 ↔ 前腕屈筋群 ↔ 手掌面の筋群
野球との接点
内側型投球障害肘
- 投球障害肘でもっと多い内側型は、加速期における過度な外反負荷が原因で生じる
- 長掌筋の筋腹に強い痙攣と圧痛を呈する例が多い
解剖学を学んでおいた方がよい理由
円回内筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『円回内筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 上腕骨内側上顆
- 尺骨鉤状突起の内側面
停止
- 橈骨中央外側
神経支配
- 正中神経(C6~C7)
特徴
- 起始が上腕頭と尺骨頭に分かれ、その筋間を正中神経が通過する
- その後、浅指屈筋の腱性アーチ内に進入する
- この部分での絞扼は円回内筋症候群と呼ばれ、高位正中神経麻痺の好発部位である
①円回内筋 ②浅指屈筋 ③撓側手根屈筋
④尺側手根屈筋 ⑤長掌筋
作用
筋機能の特徴
- 肘関節の屈曲に作用する
- 前腕の回内に作用する
- 肘関節の外反負荷には動的なスタビライザーとして制動する
筋連結
大胸筋・広背筋 ↔ 内側筋間中隔 ↔ 前腕屈筋群 ↔ 手掌面の筋群
野球との接点
内側型投球障害肘
- 投球障害肘でもっと多い内側型は、加速期における過度な外反負荷が原因で生じる
- このような症例の前弯屈筋群で最も圧痛が強いのが円回内筋である
円回内筋症候群(高位正中神経麻痺)
- 円回内筋の過剰な痙攣や瘢痕形成により、正中神経が絞扼されて生じる正中神経麻痺を円回内筋症候群と呼ぶ
解剖学を学んでおいた方がよい理由
野球と筋トレの関係 除脂肪体重・脂肪量と動作の関係・野球に必要な筋肉
『速い球を投げる・球を遠くに飛ばすために、ピッチングやバッティング練習だけでなく、筋トレも取り入れた方がいいのか?』
『野球のためにはどこの筋肉を鍛えた方がいいのか?』
『どれくらいの筋肉をつけた方がいいのか?』
今回は、そんな疑問に答えていきたいと思います!
野球と筋トレの関係
ずばり、筋トレは必ずやった方がいいと思います。
理由として、野球の競技特性を考える必要があります。
競技特性は、ピッチャーであれば、『極短時間で、高強度の筋力を発揮する動作』を繰り返すことです。
より強い筋力を瞬間的に発揮できるかどうかが、ボールスピードやコントロールの改善につながる可能性があります。
また、最近では、スイングスピードや投球速度と筋力の関係を示す文献が数多く出ています。
それでは、野球に必要な筋力を、量と質の面から紐解いていきましょう。
除脂肪体重
初めに、筋力の量(強さ)についてです。
基本的に、筋力と筋量は比例するといわれています。
日本とアメリカの野球選手の筋量を示した表です。
野球選手必読!トレーニング期に目指すべき体重・筋量の目安とは | Baseball Geeks
日本プロの平均体脂肪率は16%で、MLBでは9.6%と幅があり、単純に筋量が多ければ良い、というわけではなさそうです。
その理由として、筋力以外の要素もパフォーマンスに影響するためだと思われます。
どのくらいの筋量が適切かどうかは、動作の質やパフォーマンスが上がるかどうかを見極める必要があります。
脂肪量と動作の関係
下の図は、疑似的に脂肪量を増やすことで、動作にどの程度影響を与えるかを表しています。
脂肪が増えると、野球の動作に必要となるサイドステップやダッシュのパフォーマンスが低下することが示唆されます。
野球のコンディショニング科学 「除脂肪体重や体脂肪に着目した体づくり」 - ベースボール・マガジン社WEB
除脂肪体重はどうやったらわかるの?
筋量は、除脂肪体重からわりだせます。
体重60㎏・体脂肪率15%の選手の除脂肪体重は、60㎏-60㎏×0.15=51㎏となります。
除脂肪体重とは、字のごとく『脂肪の重さを除いた体重』のことです。
筋肉・骨・皮膚・脳・内臓・血液などの水分の重さを表しています。
内臓や脳の重さは大きくは変わらないため、
筋量は、『除脂肪体重÷2』でわりだせます。
野球に必要な筋肉
次に、筋力の質(どの筋肉が必要なのか)についてです。
野球に必要な筋肉ってなに?
まずは、野球に必要な筋肉をざっくり考えてみます。
バッターであれば、バットを振る動作のため、上肢や体幹は当然のこと、上半身を支える下肢の筋肉も必要になることは予想がつきます。
では、その中でも、どの筋肉がバッティング動作に必要なのでしょうか?
表より、ロングバッティングとベンチプレス・レッグカールに相関があることがわかります。
前鋸筋とハムストリングス
ベンチプレスでは、大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・前鋸筋を使います。
レッグカールでは、ハムストリングスを使います。
これらの筋肉の中でも、前鋸筋とハムストリングスは特に重要になってきます。
前鋸筋は、肩甲骨と体幹を連結し、両者の安定に関わっています。
前鋸筋は腹斜筋と連結し、体幹の安定を強化する作用もあります。
そのため、スイング動作には欠かせない筋肉になります。
ハムストリングスは、股関節と膝関節の運動に関わっています。
スイング動作は、上行性(下肢→体幹→上肢)に力を伝える運動特性のため、土台となる下肢の安定性に重要な筋肉になります。
腸腰筋と筋連結し、体幹の安定を強化する作用もあります。
『野球に必要な筋肉 上半身・下半身』について復習したい方はコチラ
⇩⇩⇩
『前鋸筋の起始・停止』などについて復習したい方はコチラ
⇩⇩⇩
『ハムストリングスの起始・停止』などについて復習したい方はコチラ
⇩⇩⇩
まとめ
- 野球の競技特性として、『短時間での高強度の筋力を発揮する動作』がある
- 筋量は最低でも体脂肪率16%が必要
- さらに筋量を増やしていく時は、動作やパフォーマンスが改善するかを見極めて判断する方がよい
- スイング動作には、前鋸筋やハムストリングスを鍛えることが必要
参考文献
健常者における筋力と筋量の関係 (理学療法基礎系38 855 高芝潤、川野紗央里)
筋力が遠投およびロングバッティングに及ぼす影響 (神戸医療福祉大学紀要 第15巻 第1号 2014 韓一栄)
スプリング靭帯(底側踵舟靭帯)
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『スプリング靭帯(底側踵舟靭帯)』について共有していきます!
起始・停止
起始
- 底側踵舟靭帯:踵骨の載距突起
停止
- 底側踵舟靭帯:舟状骨粗面の後面
特徴
- スプリング靭帯(底側踵舟靭帯)は踵骨の載距突起と舟状骨粗面の後面をつなぐ靭帯である
- スプリング靭帯は底側距立方靭帯、長足底靭帯および足底腱膜らとともに足部アーチ構造を維持する
- スプリング靭帯は底側より距骨頭を入れる関節窩を拡大することで、距舟関節を安定化させ、足部アーチの頂点を維持している
野球との接点
扁平足
- 成人期扁平足は靭帯の緊張や筋力が低下するために生じるアーチの低下である
- 非荷重では正常な形態でも荷重によりアーチが低下するため、スプリング靭帯や底側踵立方靭帯が伸張されて足底部痛が出現する場合が多い
縦足弓の能動的安定化構造
- 第2放線(第2趾、第2中足骨、中間楔状骨、舟状骨、踵骨から成る線)は、足底弓の縦足弓全体の中で最も高いアーチを形成する
- この縦足弓の主な能動的安定化構造は、母趾外転筋、短母趾屈筋、短趾屈筋、足底方形筋、小趾外転筋である
縦足弓の受動的安定化構造
- 縦足弓の主な受動的安定化構造は長い足底の靭帯である足底腱膜とスプリング靭帯である
- 足底腱膜はその長いテコの腕により特に重要である
- スプリング靭帯は最も弱い部分である(縦足弓の先端からの距離が最も短い)
- 長母趾屈筋と長趾屈筋の停止腱も縦足弓の沈下防止を助ける
- 長母趾屈筋腱は載距突起の直下を走るが、弧に対する弦のように縦足弓を強固にするために特に効果的である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
足底腱膜
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『足底腱膜』について共有していきます!
起始・停止
起始
- 足底腱膜:踵骨隆起
停止
- 足底腱膜:第1~5足趾の基節骨底面
特徴
- 足底にある筋はすべて足底腱膜により覆われている
- 足底腱膜は厚く、丈夫な表在性の筋膜から生じている
- 足底腱膜は踵骨隆起から起こり、足趾へ放散する縦走繊維が最も強靭で、これら縦走繊維を結びつける役割を横走線維が果たしている
- 足底腱膜は筋膜が厚く肥厚した組織ではあるが、機能的には足部アーチ構造を維持する靭帯装置としての役割が主体である
野球との接点
足底腱膜炎
- 歩行や運動時に足底に疼痛が生じる疾患に足底腱膜炎がある
- 付着部の炎症では踵骨付近に、腱膜自体の炎症では土踏まずの部分に疼痛がある
扁平足
- 成人期扁平足は靭帯の緊張や筋力が低下するために生じるアーチの低下である
- 非荷重では正常な形態でも荷重によりアーチが低下するため、スプリング靭帯や底側踵立方靭帯が伸張されて足底部痛が出現する場合が多い
縦足弓の能動的安定化構造
- 第2放線(第2趾、第2中足骨、中間楔状骨、舟状骨、踵骨から成る線)は、足底弓の縦足弓全体の中で最も高いアーチを形成する
- この縦足弓の主な能動的安定化構造は、母趾外転筋、短母趾屈筋、短趾屈筋、足底方形筋、小趾外転筋である
縦足弓の受動的安定化構造
- 縦足弓の主な受動的安定化構造は長い足底の靭帯である足底腱膜とスプリング靭帯である
- 足底腱膜はその長いテコの腕により特に重要である
- スプリング靭帯は最も弱い部分である(縦足弓の先端からの距離が最も短い)
- 長母趾屈筋と長趾屈筋の停止腱も縦足弓の沈下防止を助ける
- 長母趾屈筋腱は載距突起の直下を走るが、弧に対する弦のように縦足弓を強固にするために特に効果的である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
後距踵靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『後距踵靭帯』について共有していきます!
起始・停止
起始
- 距骨後突起の内側結節と外側結節
停止
- 踵骨
特徴
- 後距踵靭帯は、距骨後突起の内側結節・外側結節と踵骨をつないでいる
- 外側突起をつなぐ線維は踵骨の回外(内反)で緊張する
- 内側突起をつなく線維は踵骨の回内(外反)で緊張する
野球との接点
後距踵靭帯損傷
- 足底屈位での足関節後方部痛は、三角骨障害によるものが多いが、X線で三角骨がない例も散見される
- このような例では後距踵靭帯を含めた後方支持組織のインピンジメントが原因である場合がある
- 歩行時やランニング時の後側部のアライメントが過度に回内位(外反)や回外位(内反)にある場合の足関節後方部痛は、アキレス腱周囲炎であるのか、後距踵靭帯による疼痛であるの過には十分な鑑別が必要である
距骨後突起剥離骨折
- ジャンプ後の着地の際に人の足を踏んだりなどの外傷に伴い、後距踵靭帯による剥離骨折が原因で偽関節となった例は、三角骨障害との鑑別が難しい
解剖学を学んでおいた方がよい理由
二分靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は『二分靭帯』について共有していきます!
起始・停止
起始
- 踵舟靭帯 :踵骨前方突起
- 踵立方靭帯: 〃
停止
- 踵舟靭帯 :舟状骨
- 踵立方靭帯:立方骨
特徴
- 二分靭帯は踵骨前方突起から舟状骨、立方骨へと2つに分かれて走行する靭帯で、前者を踵舟靭帯、後者を踵立方靭帯とよぶ
- ショパール関節に加わる内転強制に対し抵抗する靭帯である
野球との接点
二分靭帯損傷
- 足関節靭帯損傷のなかで、外側側副靭帯損傷に次いで多いのが二分靭帯損傷である
- ジャンプ後の着地の際に、足関節底屈位でショパール関節に強い内転強制が作用した時に損傷する例が多い
- 足関節捻挫の既往を持つケースの40.5%に二分靭帯損傷を認めるとしている
- 二分靭帯損傷は4つに分類される
- 踵骨前方突起が剥離骨折を起す場合
- 立方骨の付着部で剥離骨折を起こす場合
- 舟状骨の付着部で剥離骨折を起こす場合
- 靭帯自体が損傷する場合