野球肩の原因となる5つの器質的病変 腱板病変・肩甲骨運動異常・肩不安定性・上腕二頭筋病変・肩甲上腕関節内旋可動域制限
この記事は次のような人におススメ!
- 野球肩の原因となる器質的病変を知りたい
- 器質的病変の鑑別方法を知りたい
投球動作の理解について
- 野球肩が起こるようになってことについて、基本的な投球動作を理解することが必要である
- 投球動作は便宜上、いくつかの動作局面に分けて論じられる
- 投球動作を考える際に押さえておかなければことは、1回の動作が約2秒以内という短時間で終了することである
- コッキング期からボールリリース時まではたったの0.139秒である
- ボールリリース前後での肩関節内外旋運動の最大角速度は6100°/秒に達する
- 投球動作は高速で強い慣性力の中での運動であり、コッキング期からボールリリース直後の減速期までは意識的に関節運動をコントロールすることは難しい
- この間は、伸張反射を利用した受動的な遠心性から求心性への筋活動の切り替えと関節運動が要求される
- 関節構成体には、肩挙上位での外旋から内旋、水平外典から水平内転、外転から内転へと大きな角度変化を要求される
- 身体機能の評価では、筋の遠心性収縮機能や反射性収縮、投球動作を模倣した最終可動域での張力発揮などを評価することがポイントである
5つの器質的病変
- 腱板病変
- 肩甲骨運動異常
- 肩不安定性
- 上腕二頭筋腱病変(SLAP)
- GIRD (肩甲上腕関節内旋可動域制限)
鑑別方法
腱板病変
インピンジメント症状あり
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- Jobeテスト陽性
- Neerテスト陽性(前方の痛み)
- Hawkinsテスト陽性
- Apprehensionテスト陽性 の場合、
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エクスターナルインピンジメント(肩峰下)
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- Relocationテスト陰性 の場合、
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一次的インピンジメント(肥厚した肩峰下滑液包などが挟み込まれるもの)
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- Full canテスト陽性 の場合、
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腱板病変
肩甲骨運動異常
インピンジメント症状あり
⇩
- Jobeテスト陽性
- Neerテスト陽性(前方の痛み)
- Hawkinsテスト陽性
- Apprehensionテスト陽性 の場合、
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エクスターナルインピンジメント(肩峰下)
⇩
- Relocationテスト陽性 の場合、
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二次的インピンジメント(腱板断裂などの原因で不安定症の結果として生じるもの)
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- Scapular assistance test(SAT)陽性
- Scapular retraction test(SRT)陽性 の場合、
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肩甲骨運動異常
肩不安定性
インピンジメント症状あり
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- Jobeテスト陰性
- Neerテスト陽性(前方の痛み)
- Hawkinsテスト陰性
- Apprehensionテスト陽性 の場合、
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インターナルインピンジメント(後上方関節窩)
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- Relocationテスト陽性 の場合、
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二次的インピンジメント(腱板断裂などの原因で不安定症の結果として生じるもの)
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- Laxityテスト陽性
- Apprehensionテスト陽性
- Relocationテスト陽性 の場合、
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肩不安定性
上腕二頭筋腱病変(SLAP)
インピンジメント症状あり
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- Jobeテスト陰性
- Neerテスト陽性(前方の痛み)
- Hawkinsテスト陰性
- Apprehensionテスト陽性 の場合、
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インターナルインピンジメント(後上方関節窩)
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- Relocationテスト陽性 の場合、
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二次的インピンジメント(腱板断裂などの原因で不安定症の結果として生じるもの)
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- O'Brienテスト陽性
- Speed'sテスト陽性
- biceps load Ⅱテスト陽性 の場合、
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上腕二頭筋腱病変(SLAP)
GIRD (肩甲上腕関節内旋可動域制限)
インピンジメント症状あり
⇩
- Jobeテスト陰性
- Neerテスト陽性(前方の痛み)
- Hawkinsテスト陰性
- Apprehensionテスト陽性 の場合、
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インターナルインピンジメント(後上方関節窩)
⇩
- Relocationテスト陽性 の場合、
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二次的インピンジメント(腱板断裂などの原因で不安定症の結果として生じるもの)
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- インターナルローテーション可動域低下 の場合、
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GIRD (肩甲上腕関節内旋可動域制限)
参考文献
野球肩の理学療法における臨床推論 (理学療法 33巻8号 2016年8月 元木純)