腰椎の成長期スポーツ障害
今回は『腰椎の成長期スポーツ障害』について共有していきます!
腰椎分離症・すべり症
- 腰椎分離症は、関節突起間の連続性が途絶した状態を指す
- 成長期に発生する関節突起間の疲労骨折であると考えられている
- 不顕性に進行して、明確な腰痛の病歴なしに終末期として発見される症例が少なくない
- 一方、骨髄内に浮腫を思わせるような高信号域が出現するのみならず、骨外まで炎症が波及していると考えられる症例もある
- 腰椎各運動中、応力が関節突起間部に集中し、特に腰椎の伸展・回旋運動が同時に起こったときに著しいことが明らかになっている
- 関節突起間の分離は尾側から進行することが示されている
- 慢性に加わったストレスにより関節突起間の疲労骨折が進行し、そのまま緩徐に分離が完成する場合と、やや強い力がかかることにより腰痛とともに骨折が貫通する場合がある
- 腰椎分離症に続発するすべりは、成人で椎間板の変性に伴って進行するのとは異なり、椎体終板にある成長軟骨板ですべりが発生する
- 従って、骨が未熟であるほど発生・進行しやすい
- すなわち、椎体の二次骨化核が未出現な時期か、出現していても椎体に癒合していない時期ではすべりが進行する危険性がある
診断
- 腰痛が中心であるが、まれに根症状を訴えることもある
- 腰部の伸展やケンプ手技では腰痛を訴え、分離部に一致した圧痛を認める場合には分離症を疑う
- 画像診断は腰椎単純X線像が基本
- 斜位像で「スコッチテリアの首輪」を確認するよう努める
- X線上(斜位像)の病期は簡便に初期、進行期、終末期に分類できる
- 単純X線像で明瞭なものは進行期以降の分離である
- ただ、関節突起部の分離の方向は必ずしも一定でなく、診断には側面像、正面像も参考にする必要がある
治療
終末期の場合
- 保存療法が基本である
- 明らかな終末期分離では骨癒合の可能性はなく、早期のスポーツ復帰を目指して対症的に治療する
- 外固定は疼痛の程度に応じて使用する
- 多くは安静により症状は速やかに消褪する
- 必要なのは体幹筋力の強化、股関節のストレッチを行い、腰痛の再燃を防ぐことである
- 腰部の伸展を減じるようにフォームの矯正や体幹以外の必要な筋力強化も指導する
初期の場合
- 初期病変であれば骨癒合を目指す
- 3ヶ月間スポーツ活動の全面的中断と伸展・回旋を制限した硬性コルセットによる外固定を行う
- この間、固定化で伸展と回旋を制限しながら体幹筋力の強化と股関節可動域の拡大を図る
- 3ヶ月後のMRIで高信号域が消失したところを確認できれば、CTで骨癒合状態を確認し、高信号が消失しない場合には固定期間を延長する
- このように治療した結果、T2で高信号がある初期分離の骨癒合率は80%以上である
- 3ヶ月時点で癒合傾向がないか、逆に増悪傾向があり、高信号が消失しておれば、スポーツを再開させ早期の復帰を目指す
- 骨癒合が得られた後でも癒合部の骨改変が進むまでは腰部の伸展・回旋はある程度の制限が必要だと考える
- 復帰当初は腰椎伸展を制限するベルトを装着させ、直線的な運動から再開させるように心がけている
- 成長期に手術療法を選択するのはきわめて例外的である
- 手術療法を選択するとしても骨成熟がほぼ得られた時期しか適応はないと考える
参考文献
腰椎の成長期スポーツ障害 (関節外科 Vol.32 No.3 2013 加藤真介)