発育期の肘内側障害

今回は『発育期の肘内側障害』について共有していきます!

 

 

概要

  • 学童期のスポーツによる肘関節の障害はほとんどが野球である
  • 内側上顆の骨端離開、下端の剥離骨折・分節化が主体であり、両者が合併していることが多い
  • 徳島大学での少年野球肘検診で、肘痛や可動域制限を有した症例のX線検査では、全選手の18.1%に異常所見があった
  • 内側上顆の分離・分節が16.5%と大半を占めていた

 

診断

  • 小学生時代の肘内側障害の初期の圧痛は内側上顆下端であり、多くは1~2週で疼痛が消失するが、疼痛の記憶がない例も多い
  • X線検査は必ず両肘の正・側2方向撮影に加え、患側の45°屈曲位正面撮影を行う
  • 超音波検査も有用である

 

治療

  • 小学4、5年生が多い疼痛初発時の治療が問題である
  • 屈曲位正面45°の撮影で剥離骨片を認めれば約2ヶ月投球を控えるよう指示し、ストレッチ、投球フォームの指導などを行う
  • 疼痛がなくなればX線像で骨癒合が得られなくても制限しながらでも野球を許可する
  • この治療により、1年で76%に骨癒合がみられた
  • 非癒合例では肘関節痛を残した例が多かったとする報告がある
  • 最近は基本的には骨癒合が得られるまで投球を制限して平均44ヶ月時点で78%に骨癒合が得られた報告がある
  • 癒合しなかった例では64%にパフォーマンスの低下がみられていた
  • 剥離骨片が癒合せず、遺残骨片となった場合の処置に関する論文は少ない
  • 内側上顆骨端線癒合以前でも、大きな遺残骨片とのギャップが4mm以上で、疼痛が持続する例では積極的に肘頭からの骨移植、tesion band wiring で再接合を行い、好成績を得ている

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参考文献

発育期の肘内側障害 (関節外科 Vol.33 No.11 2014 伊藤恵康)