上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病因と病態 発生頻度・発生時期・発生部位・発生要因・炎症の関与・外力の関与・局所血流の関与
今回は『上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病因と病態』について共有していきます!
発生頻度
- 10~12歳の小学生選手で2.1%
- 12~18歳の中・高校生選手で3.4%
病因
発生時期
- 9歳以上でみられた
- 8歳以下は皆無であった
- 本障害は単純X線像にて透亮像の初期、離断像の進行期、遊離体を有する終末期の3期に分けることができる
- 自験例では、初期で11歳、進行期で13歳、終末期で14歳にピークがある
- 初期例の大半が10~12歳に集中していた
- 成長期では同じ暦年齢でも骨年齢は様々である
- 病因、病態を探るうえでは骨年齢による検討を要する
- 小頭骨年齢を5段階に分けて評価する
- 骨端核が固有形
- 骨端線が癒合開始
- 癒合中
- ほぼ閉鎖
- 閉鎖
- 初期例の大半は骨端核が固有形から骨端線癒合開始の時期に集中している
- 本障害は小頭骨端線の癒合開始後に発生するものと推測される
発生部位
- 初期病変の大半が小頭の前外側に発生する
- そのため、X線で検出しようとすると肘伸展位より、45°屈曲位が適している
- 超音波検査では、初期病変では軟骨下骨に不整像がみられるが、軟骨には明らかな損傷を認めない
- すなわち、障害は小頭前外側の軟骨下骨に発生する
発生要因
- 肘離断性骨軟骨炎の成因については、持続外傷説、血行障害説などが唱えられてきた
- 臨床的には野球や体操の選手に多くみられることから、持続的な微小外力説が最も有力とされてきた
- 投球動作では外反ストレスにより腕頭関節に圧迫・剪断力が加わり、小頭の前外側に発生すると考えられている
- CTで投手経験者、野手経験者、投球競技未経験者の上腕骨遠位関節面における軟骨下骨の骨密度分布を解析し、投手では小頭前方への応力集中が生じていることを報告している
- 小頭の骨端核は1歳前後に出現し、12~14歳で骨端線が閉鎖する
- 骨端核出現から閉鎖までの期間が他の骨端核よりも長く、この間、小頭の骨端核は後方からの1~2本の動脈のみで栄養されている
- 小頭局所は虚血性変化をきたしやすいと考えられ、血行障害が病院の1つとして挙げられる所以となっている
病態
炎症の関与
- 病理組織像で炎症所見の欠如を指摘して以来、炎症所見が主体であるとの考え方は否定的となっている
外力の関与
- 野球や体操の選手に多いことから持続的な微力外力が病態に関与していることは事実である
- 特に障害の増悪には深く関与していると思われる
- 検診にて初期で発見された症例が、投球中止の勧めに応じず継続した結果、翌年には増悪しているケースを経験している
- 自験例で、初期で投球中止した群では初期、進行期共に投球続行群よりも高い修復率が得られている
- 持続的な外力を除去することで病巣修復へと導きやすいといえる
局所血流の関与
- 初期で投球を中止したとしても全例で修復が得られるわけではない
- 投球を継続しても修復する症例があることから、他の要因の関与が示唆される
- X線像の修復過程をみてみると、典型例では小頭の外側にみられた透亮像が徐々に中央にまで拡大する
- 次いで、島状の骨陰影が出現する
- 外側上顆や小頭の骨化進展とともに、外側より島状の骨陰影と母床との間に新たな骨陰影がみられるようになる
- この骨陰影は徐々に中央に進み、同時に島状の骨陰影の厚さも増して修復が進み、虚血性病変の修復過程と考えて矛盾しない
- 障害が発生し、修復あるいは終末期に至る時期は小頭骨端線が癒合する過程に重なっている
- この時期、小頭の骨端核は後方からの1~2本の動脈で栄養されている
- この栄養血管や栄養血管が小頭に流入した後の髄内血行が病巣修復に関与していることが示唆される
参考文献
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病因と病態について (関節外科 Vol.33 No.11 2014 松浦哲也)