今回は『野球肘の画像診断』について共有していきます!
野球肘の分類
- 野球肘における病態は大きく3つに分けられる
- 内側障害
- 後方障害
- 外側障害
- 投球動作では外反ストレスが生じる
- 内側には屈曲回内屈筋群・内側側副靭帯により牽引力が生じる
- 後方には肘頭と肘頭窩でのインピンジメントが生じる
- 外側には圧迫・剪断・回旋力が生じる
- 頻度としては内側障害が圧倒的に多いが、手術適応になるのは外側障害である
病態
内側障害
- 内側上顆では分離、分節、裂離、肥大および骨端線離開などが生じる
- いずれも単純X線像で診断可能である
- 内側上顆の病変は遠位の前方下端に位置している
- 単純X線は肘関節45°屈曲位撮像が必須である
- 投球側、非投球側を比較することも診断に役立つ
- 骨端線離開では45°屈曲位撮像よりも通常の伸展位での撮像のほうがわかりやすい
- 初診時、分離・分節・裂離した骨片と母床間に硬化を伴う境界が鮮明であったものが、数週間の経過で境界が不鮮明になることも多い
- 境界が不鮮明になれば安定性が得られてきたと考えられる
- 非修復例では骨片と内側上顆下端との間の境界が明瞭となり、癒合傾向が完全に停止してしまう
- いずれの内側障害も、基本的に改善していく
- 分離・分節・裂離が残存しても手術に至ることは少ない
- 修復が得られず境界が残存し、内側側副靭帯の機能不全による疼痛が残存する場合は手術を考慮する
後方障害
- 後方障害の代表的なものは肘頭の骨端線閉鎖不全である
- 単純X線側面像の健側・患側の比較により、診断は比較的容易である
- 保存療法が基本であるが、手術が必要かどうかの判断が重要である
- 骨硬化像があり、健側の骨端線が完全に閉鎖し、病変部の骨硬化像と透亮部の幅が3mm以上の症例は保存療法では癒合しない要素として挙げ、手術を考慮すべきである
外側障害
- 外側障害の代表的疾患は上腕骨小頭離断性骨軟骨炎である
- 病期を把握し、修復していくのか、あるいはすでに手術適応なのかを判別するのが日常の診療では最も重要である
- 病変の骨軟骨片の不安定性があり、修復・癒合が期待できない進行期は手術適応である
- 関節内に病変があると関節症変化が生じ、野球のみならず日常生活にも将来的には支障をきたすからである
- 画像診断のポイントは病変部の不安定性の程度把握することにある
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の画像診断
単純X線像
- 三浪の分類、岩瀬の分類が用いられる
- 岩瀬の分類定義
透亮期 外側型:小頭外側にもうろう像と周辺部の軽度の骨化像
〃 中央型:新生骨形成あるいは石灰化を思わせる線状、斑点状の陰影を伴って中央部へ広がる透亮欠損像
分離期 前期型:透亮像内に明らかな島状分離した小骨片像と反応性骨化像との間が明瞭になり、いわゆるクレーター所見で代表される分離像
〃 後期型:修復傾向を示さない分離骨片が軟骨に膨化、文屑、亀裂などの変化を認める像
遊離体期巣内型:遊離寸前ないし完全な遊離体を呈しているもの
〃 巣外型:遊離体遊出後
- 透亮期は小頭骨端線が閉鎖する前で、外側上顆骨端核が出現する前に多い
- 透亮期外側型は優位に低年齢で、全例初診時骨端線は開存している
CTおよびMRIによる不安定性の評価
- 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病因の1つに骨軟骨移行部に損傷が生ずることによる軟骨の骨化障害説がある
- 骨化障害過程をきたした軟骨には肥厚が生じ、石灰化や遅延した骨化が加わる
- 手術が必要になるのはこの骨化障害を生じた骨軟骨片が不安定になった場合である
- 従って、骨化障害を生じた骨軟骨部の評価が治療方針に重要となる
- CTでは3D構築により視覚的立体に病変部の把握が可能で、イメージがつかみやすい
- 実際の骨軟骨部の不安定性を把握するのは、まずCT矢状断像にて骨欠損部(骨化障害部位)を確認する
- 軟骨下骨の陥凹などがあれば不安定性が強いことを示唆する
- 続いてMRI矢状断像で同部位の骨欠損部を確認する
- 不安定性の評価はCTでの骨欠損部に一致した部位の表面輪郭の不整、辺縁の陥凹、骨軟骨片と母床間の高信号の介在、関節軟骨を貫通する高信号で判断する
参考文献
野球肘の画像診断 (関節外科 Vol.33 No.11 2014 西中直也)