上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の治療
今回は『上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の治療』について共有していきます!
治療方針
- 小頭骨離断性骨軟骨炎の治療は保存療法に始まり、鏡視下廓清術、骨軟骨片固定術、骨軟骨移植術、骨切り術とさまざまな方法がある
- 最も治療成績が良いのは保存的に修復した症例である
- 症状発現後に来院する一般外来では進行した例が多く、無症状か軽微な初期に発見するには、発症する小学生での検診が有効である
- 保存療法の適応は、骨端線残存例の透亮期、分離期前期であるといわれる
- 保存療法か手術療法かの境界となる骨端線開存例の分離期では保存療法を選択し、その臨床経過から囲碁の治療法を選択している
病期、病型による治療法の選択
- 病巣の位置と大きさで治療成績に差がある
- 外側広範型は中央型に比べて橈骨頭肥大や亜脱臼を認める症例が多く、遊離骨片切除や骨軟骨移植などの術後生成績が安定せず、関節症変化が進行するといわれる
- 腕橈関節外側部の適合不良に伴う橈骨頭の支持性低下により、微小な関節動揺性が生じ、関節全体に及ぶ関節症性変化が惹起される
- 一般的な小頭骨離断性骨軟骨炎は小頭の外側に透亮化が起こり、骨吸収、骨新生を繰り返しながら病巣の中心が外側から中央に移動していく
- 外側型、広範型、中央型という病変部からの分類は病型の違いでなく、同一の小頭骨離断性骨軟骨炎の病期による様相の違いである
- 臨床上、外側広範型で発見された例が保存療法で、外側から修復し中央型となる例を多く経験する
- 中央型の鏡視下廓清術の成績が安定していることから、外側が修復する時期の保存療法はより重要である
- 骨端線開存例の透亮期、分離期では保存療法を第一選択としているが、3~6ヶ月の保存療法で改善が見込まれないときは修復機転の停止が予想され、手術療法が選択される
- 骨端線開存例の遊離期、骨端性閉鎖の分離期、遊離期でも手術療法が選択される
ICRS分類による手術法の選択
- 手術法は病巣の肉眼所見で決定している
- 肉眼病期分類にはICRSの関節鏡分類が使用される
- ICRS分類Ⅰは、柔らかい部分があるが連続性で安定した病変
- ICRS分類Ⅱは、部分的に不連続性であるが安定した病変
- ICRS分類Ⅲは、完全に不連続性だが転位していない病変
- ICRS分類Ⅳは、転位した骨軟骨片や遊離体がある骨軟骨欠損
ICRS分類Ⅰ、Ⅱの場合
- 基本的に保存療法であることが多い
- 経過、画像所見から手術と判断した場合は、drilling、骨軟骨片固定術(骨釘、吸収ピン)を行っている
- 病巣部の除圧と血流改善を目的に上腕骨外側顆楔状骨切り術の報告もある
ICRS分類Ⅲ、Ⅳの場合
- 外側広範型では病巣廓清のみでは関節不安定性が増強し、関節症性変化や橈骨頭肥大、亜脱臼をきたす可能性が高いことから、骨軟骨移植術を行っている
- 中央型では腕頭関節の適合性、橈骨頭の支持性は保たれ、肘関節の動揺性は認められないため、鏡視下廓清術を行っている
- 病巣が大きく、外側壁の破壊が心配な例や、体操などで腕頭関節に過負荷が加わることが予想される症例には、骨軟骨移植術を行っている
- 外側の広範な骨軟骨欠損に対して肋骨肋軟骨移植術の報告もみられる
参考文献
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の治療 (関節外科 Vol.33 No.11 2014 石田康行)