上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病期、臨床症状、理学所見

今回は『上腕骨離断性骨軟骨炎の病期、臨床症状、理学所見』について共有していきます!

 

 

病期分類の歴史的変遷

  • 1979年、三浪らが単純X線像にて透亮期、分離期、遊離期の3期に分けた
  • 1988年、岩瀬らが単純X線像にて三浪分類の分離期をさらに前期と後期および巣内遊離期と詳細に定義した(X線撮影方法を肘45°屈曲正面像に標準化)

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  • 1990年代、離断性骨軟骨炎における骨軟骨片の不安定性有無をMRIの脂肪抑制T2強調矢状断像にて判別する試みがなされた
  • Takaharaらは骨軟骨片と母床との間の高信号の介在、関節軟骨を貫通する高信号ならびに関節面の局所的欠損が小頭離断性骨軟骨炎の不安定性を示す所見であり、高信号は関節液を反映していると述べた
  • 病巣部がMRIのT1およびT2強調像で共に均一で低信号を示す場合は、早期の病変を示し、elbow at disc の状態と表現している
  • 木田は、小頭離断性骨軟骨炎の分離期において、母床と分節部の間の帯状の領域を分界層とし、この部位が修復に向かうか、離断に向かうかの鍵を握り、分離前期以降の不安定な時期を分界層の改変期と呼称した
  • この改変期を最も鋭敏に詳細にとらえることのできる画像検査はMRIであり、軟骨の亀裂から分界層への関節液の流入が1つのポイントであるとしている
  • 2000年、最も一般的に普及しているICRS分類が提示された

 

病期分類のグローバルスタンダード「ICRS分類」

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  • ICRS Grade1:正常軟骨で覆われた軟らかい部分があるが、連続性で安定した病変
  • ICRS Grade2:部分的には不連続性であるが、プロービングでは安定した病変
  • ICRS Grade3:完全に不連続性だが、まだ転位していない病変
  • ICRS Grade4:転位した骨軟骨片や遊離体がある骨軟骨欠損
関節鏡あるいは関節切開による肉眼所見による分類であり、手術適応を決めるための画像診断ではない

 

各病気における臨床症状および理学所見

  • 初期病変(単純X線像での小さな透亮像、MRIでのelbow at discの状態)では症状が皆無の時期もあり、屈曲位での外反ストレスや上腕骨小頭部の圧痛も認めない
  • 典型的な臨床症状は、投球時痛と可動域制限である
  • 病期が進行するとともに関節炎や関節水腫を生じ、腫脹・疼痛の増強とともに可動域制限も悪化する
  • 遊離体の出現により、ロッキング症状を呈するようになる
  • 理学所見としては、小頭部の限局した圧痛、可動域制限による伸展・屈曲強制時痛、屈曲位での外反ストレスでの疼痛が特徴的である
  • 関節炎の併発により、腕頭関節周囲や外側滑膜ヒダに圧痛を認めるようになる

 

参考文献

 上腕骨離断性骨軟骨炎の病期、臨床症状、理学所見 (関節外科 Vol.33 No.11 2014 山崎哲也)