前胸鎖・肋鎖靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『前胸鎖・肋鎖靭帯』について共有していきます。
起始・停止
起始
- 前胸鎖靭帯:鎖骨の胸骨端前面
- 肋鎖靭帯 :第1肋軟骨内側端の上面
停止
- 前胸鎖靭帯:胸骨柄の前面
- 肋鎖靭帯 :鎖骨の肋鎖靭帯圧痕
特徴
- 胸鎖関節関節包の前面の補強には前胸鎖靭帯、後面の補強には後胸鎖靭帯が存在する
- 胸鎖関節は自由度3の関節であり、形態上、球関節(関節頭は球状で、関節窩は関節頭に対応するような凹面となっている)である
- 鎖骨の伸展を前胸鎖靭帯が、鎖骨の屈曲を後胸鎖靭帯が制動する
- 鎖骨の挙上と後方回旋を肋鎖靭帯が制動する
胸鎖関節の周辺解剖
- 胸鎖関節は関節包内に関節円板をもつ
- 線維軟骨の関節円板は、鎖骨と胸骨柄の二つの鞍状の不整合な関節をつないでいる
胸鎖関節をを中心とした鎖骨運動
- 胸鎖関節は運動は3つの運動に分類される
- 矢状軸:挙上45°、下制5°
- 垂直軸:屈曲15°、伸展15°
- 前額軸:後方回旋50°、前方回旋5°
- 肩関節屈曲における鎖骨の動きは、屈曲初期では回旋優位で上方傾斜は緩やかである。屈曲90°以降では、上方傾斜が増加する。屈曲110°以降では後退が始まる。
野球との接点
胸鎖関節脱臼
- 非常に稀な外傷の一つであるが、その中でも前方脱臼が大部分を占める
- 前方より外力が作用し肩甲骨の過度な内転とともに鎖骨の伸展が強要されると前方脱臼が生じ、前胸鎖靭帯が断裂する
- 後方より外力が作用し肩甲骨の過度な外転とともに鎖骨の屈曲が強要されると後方脱臼が生じ、後胸鎖靭帯が断裂する
前方脱臼では上方へ転位し、後方脱臼では下方へ変位する
- 後方脱臼を乗じた場合、食堂・気管・大血管を圧迫する可能性があり、生命の危険を伴うことがある
- Allmanの分類(胸鎖関節のX線分類)
- 長期にわたる不良姿勢を呈した症例では、胸鎖関節における伸展・挙上が制限されていることが多く、前胸鎖靭帯や肋鎖靭帯の拘縮は重要な治療対象となる