肩鎖靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『肩鎖靭帯』について共有していきます。
起始・停止
起始
- 鎖骨肩峰端上面
停止
- 肩峰の上面
特徴
- 肩甲骨運動の支点として機能する肩鎖関節を支持する
- 肩峰に対し鎖骨の上昇を制御する
- 肩甲骨の上方回旋では肩鎖関節の後方部分が、下方回旋では前方部分が緊張する
- 肩鎖関節の運動は垂直軸において最大約50°、矢状軸において最大約30°、前額軸において最大約30°の可動性がある
肩鎖関節での運動
- 肩鎖関節は平面関節(相対する関節面が平面で、運動は主に横滑りによる:2軸性)に分類されているものの、椎骨等にみられるような直線的な運動ではなく、鎖骨肩峰端の丸みに沿って肩峰が運動する
- 鎖骨に対し肩峰が後方へ移動する運動を内転とよび、肩峰が前方へ移動する動きを外転とよぶ
肩甲骨運動による肩鎖靭帯の緊張の違い
- 肩鎖靭帯は肩甲骨運動の違いにより、その制動部位(緊張部位)が変化する
- 肩甲骨外転には必ず上方回旋が伴うため、肩峰は運動に伴い前方へ移動しながら内側が下方に下がる
- この動きに対し抵抗する部分は、肩鎖靭帯の後方線維群である
- 肩甲骨内転時には、逆に前方線維群が緊張する
肩鎖関節を中心とした肩甲骨運動
- 肩鎖関節における肩甲骨の運動は3つに分類される
- 垂直軸:上下方向に約50°
- 矢状軸:回旋方向に約30°
- 前額軸:前後方向に約30°
- 肩関節屈曲における鎖骨の動きは、屈曲初期では回旋優位で上方傾斜は緩やかである。屈曲90°以降では、上方傾斜が増加する。屈曲110°以降では後退が始まる。
野球との接点
肩鎖関節脱臼
- Ⅰ型は不安定性がないもの
- Ⅱ型は肩鎖靭帯は断裂しているが烏口鎖骨靭帯は残存しているもので亜脱臼肢位を呈するもの
- Ⅲ型は肩鎖靭帯、烏口鎖骨靭帯とも断裂し肩鎖関節は完全な脱臼肢位にあるものをいう
- high arch test:他動的に肩関節屈曲160°~最大前方挙上を行い肩鎖関節部に痛みが誘発される場合、肩鎖関節内の損傷が疑われる
- horizontal arch test:肩甲骨を固定し他動的に水平内転を加えたときに肩鎖関節部で痛みが誘発される場合、肩鎖関節内の損傷が疑われる
- piano key sign:肩鎖靭帯・菱形靭帯・円錐靭帯が断裂すると鎖骨は僧帽筋により情報に引き上げられ、鎖骨の遠位端が上方に突出する。これを指で押さえてもピアノの鍵盤のように再び上方転位してくる現象をいう。
- 長期にわたる不良姿勢を呈した症例では、肩鎖靭帯の拘縮が散見される