肩関節包靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『肩関節包靭帯』について共有していきます。
起始・停止
①肩関節包
- 起始:肩甲頸および関節唇とその外周
- 停止:上腕骨の解剖頸、大・小結節
②上関節上腕靭帯(SGHL:Superior Gleno-Humeral Ligament)
- 起始:上腕二頭筋長頭腱付着部の前方
- 停止:小結節の上方
③中関節上腕靭帯(MGHL:Middle Gleno-Humeral Ligament)
- 起始:前上方の関節窩および関節唇
- 停止:小結節の内側
④前下関節上腕靭帯(AIGHL:Anterior Inferior Gleno-Humeral Ligament)
- 起始:前方関節唇
- 停止:解剖頸の下縁
⑤後下関節上腕靭帯(PIGHL:Posterior Inferior Gleno-Humeral Ligament)
- 起始:後方関節唇
- 停止:解剖頸の下縁
特徴
- AIGHLとPIGHLの間は腋窩陥凹とよばれ、合わせて下関節上腕靭帯複合体(IGHLC:Inferior Gleno-Humeral Ligament Complex)とよぶ
- 関節包は幅が広く、後面は薄く、靭帯による補強がされていない
- 前面は3つの靭帯(上・内側・下関節上腕靭帯)によって、上方は烏口上腕靭帯によって補強されている
- 上腕が下垂位の時、関節包の下方は筋肉で補強されず、たるんで腋窩陥凹を作る
- 長い間腕を動かせないでいると、腋窩陥凹は委縮したり、癒着して閉鎖したりして挙上や外転の運動を妨げる
- 肩甲下筋の腱下包と烏口腕筋包は、関節腔と交通している
- 上腕二頭筋長頭の腱鞘は結節間溝を通過する際に関節腔と交通する
肩関節包靭帯の安定化機構
- 肩関節包靭帯は上腕骨長軸に対し約45°の角度で付着している
- このため、下垂位では上方部が緊張し、45°以上の外転位では下方部が緊張する
- この肢位の違いによる組織緊張の変化により、骨頭が関節窩に安定する
- 外旋では前方が、内旋では後方が緊張し、同様に骨頭の安定化に関与する
野球との接点
肩関節周囲炎・肩関節拘縮
- 肩関節下垂位での外旋制限は、SGHLと烏口上腕靭帯がその原因となる
- 肩関節外転位における外旋制限は、MGHLとAIGHLがその原因となる
- 肩関節屈曲位における内旋制限は、後方関節包ならびにPIGHLがその原因となる
- 肩関節水平外転制限は、前方関節包ならびにMGHL、AIGHLがその原因となる
肩関節脱臼
- 肩関節前方脱臼は、MGHLとAIGHLの断裂と前下方の関節唇の破綻がその本態である
- 肩関節直立脱臼は、IGHLCの断裂がその本態である
- いわゆるローズショルダーは関節包靭帯が過度に弛緩した状態である