投球障害肩症候群 Loose shoulder・肩峰下滑液包炎・上腕二頭筋長頭腱炎・腱板断裂・関節包炎・腱板疎部損傷・Little leaguer‘s shoulder・有痛性Bennett病変

f:id:sakuraiku:20210701152346p:plain

 

 

 

 

 

 

 

Over useによる悪循環

肩の痛みを主訴とするスポーツ障害は多岐にわたります。

 

  1. 肩関節前方亜脱臼障害
  2. Loose shoulder
  3. 肩関節後方不安定症
  4. 腱板疎部損傷
  5. 上方関節唇付着部断裂
  6. インピンジメント症候群
  7. 肩峰下滑液包炎
  8. 上腕二頭筋長頭腱炎
  9. 腱板断裂
  10. 関節包炎
  11. Little leaguer‘s shoulder
  12. 有痛性Bennett病変

 

 

投球動作を頻回に繰り返すこと(Over use)が直接的もしくは間接的に原因となっている可能性が考えられます。

 

投球期間や年齢が増えれば増えるほど単独の病変になる可能性は低く、複数の病変に加え、組織の変性・摩耗・瘢痕化の可能性が高くなってきます。

 

 

 

f:id:sakuraiku:20201012092017p:plain

 

 

 

  • 4つの腱板は強調して収縮し、常に骨頭を関節窩の安定なポイントに位置させようとしている。

 

  • しかし、過度の投球数や不適切な準備や投球動作により腱板が疲労し、あるいは炎症を起こして拘縮し、その強調した収縮が妨げられる。

 

  • すると、関節化と骨頭は良好な位置関係を保てなくなり、ズレが生じ関節窩上腕靭帯ー関節唇ー関節窩縁複合体に過度のストレスが加わる。

 

  • この時の力は生理的限界に近く、その頻度が組織の修復スピードを上回れば複合体に障害が蓄積し、over useによる不安定症が発症する。

 

  • この障害に伴う痛みは腱板の痙攣を引き起こし、さらに腱板の強調した収縮を妨げるという悪循環を成立させる。

 

  • また、関節包の障害に伴い、そこに存在する伸張受容器も障害を受け、適切なフィードバックができなくなるとも考えられる。

 

 

中にはOver useでなくとも痛める場合もあります。

 

肩と肘の位置関係の崩れや腰の開きが速いなどの投球フォームの崩れ、手投げや下半身を上手く使えていないなど一ヵ所に負担がかかるような身体の使い方が原因となることもあります。

 

 

 

Loose shoulder

肩関節外転・外旋・伸展あるいは内転・内旋・にて、上腕骨頭の前方あるいは後方亜脱臼する力が加わり、動的・静的安定化機構へストレスが加わり炎症・弛緩・断裂を起こし、前方あるいは後方への不安定症を招く。

 

  • 痛みの性質:抜けるような痛み、痺れ(脱臼感)

 

  • 圧痛:   腱板疎部、結節間構など様々で非特異的

 

  • 身体所見: sulcus sign、load and shift test、全身関節弛緩性

 

  • 好発年齢: 10~20歳

 

  • 画像検査: ストレスX線、関節造影、MR関節造影

 

 

肩峰下滑液包炎

烏口肩峰アーチ下において、機械的刺激を受け炎症を起こす。

 

これを繰り返すことにより慢性化し、非可逆的な肥厚、癒着といった変化をもたらすと滑液包が十分に滑動を起さなくなる。

 

  • 痛みの性質:後側方~側方

 

  • 圧痛:   肩峰下後側方

 

  • 身体所見: painful arc sign、棘上筋抵抗テスト、impingement sign

 

  • 好発年齢: 10~40歳

 

  • 画像検査: MRI

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎

肩関節外転・外旋にて緊張し、さらに烏口肩峰アーチ下において機械的刺激を受け炎症を生ずる。

 

また、ボールリリース、フォロースルー期においても張力が加わり障害を起こす。

 

  • 痛みの性質:前方

 

  • 圧痛:   結節間構

 

  • 身体所見: Speed test、Yergason test

 

  • 好発年齢: 15~40歳

 

  • 画像検査: MRI

 

 

腱板断裂

第2肩関節において機械的刺激を受け炎症を起こす。

 

特に棘下筋は減速力源として作用し、遠心性収縮に伴う障害を受ける。

 

損傷部位はcritical areaには必ずしも限局せず、関節面の比較的後方に発生しやすく、その発生機序としてeccentric forceによるtensile stressあるいはshearing forceが考えられている。

 

  • 痛みの性質:前方~外側

 

  • 圧痛:   大結節

 

  • 身体所見: delle、crepitus、painful arc sign、棘上筋抵抗テスト、impingement sign

 

  • 好発年齢: 15歳~

 

  • 画像検査: 単純X線、MRI、関節造影

 

 

関節包炎

  • 痛みの性質:全体

 

  • 圧痛:   非特異的

 

  • 身体所見: 可動域制限

 

  • 好発年齢: 15歳~

 

  • 画像検査: MRI、関節造影

 

 

腱板疎部損傷

  • 痛みの性質:抜けるような痛み、痺れ(脱臼感)

 

  • 圧痛:   腱板疎部、結節間構など様々で非特異的

 

  • 身体所見: sulcus sign、load and shift test、全身関節弛緩性

 

  • 好発年齢: 10~20歳

 

  • 画像検査: ストレスX線、関節造影、MR関節造影

 

 

Little leaguer‘s shoulder

発育期の上腕骨近位骨端線部は力学的脆弱部であり、投球に伴う回転トルク、筋張力により理解することがある。

 

  • 痛みの性質:外側

 

  • 圧痛:   上腕近位部後方

 

  • 身体所見: 特異なものなし

 

  • 好発年齢: 8~12歳

 

  • 画像検査: 単純X線(必ず両肩)

 

 

有痛性Bennett病変

加速期における上腕三頭筋の活動、フォロースルー期における上腕三頭筋、小円筋、後方関節包に牽引張力が加わり骨性増殖がみられる。

 

  • 痛みの性質:後方

 

  • 圧痛:   肩関節後方下

 

  • 身体所見: 最大挙上、外転外旋強制時後下方痛

 

  • 好発年齢: 20~40歳

 

  • 画像検査: 単純X線(挙上時)

 

 

 

 

投球フォームの分析』 について復習したい方はこちら

⇩⇩⇩