成長期スポーツ外傷・障害の特徴

今回は『成長期スポーツ外傷・障害の特徴』について共有していきます!

 

 

成長期の身体

身長の成長

  • 成長期とは、一般に10歳前後からの身体成長が加速する時期から、年間身長増加量が1㎝未満となる直前までの時期と考えられている
  • 身長の全国平均値

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  • 身長の標準偏差と各年齢の前年からの増加量

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  • 全国平均値は10歳より、女子が男子を上回る
  • 12歳には男子が逆転し、その後男女差が大きくなる
  • 全国平均値の増加が最大となるのは男子で12歳、女子で10歳であり、標準偏差が最大となる年齢と一致している

 

骨格の成長

  • 骨格の長さの成長は骨端軟骨での骨形成によっており、骨端軟骨の閉鎖癒合時期は部位によって異なる
  • 末梢より中枢側が遅く、四肢より体幹が遅い傾向がある

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  • 骨端核の骨化の進行とともに関節軟骨の厚さも徐々に減少する
  • 骨長成長に対して、骨量増加の時期は遅れ、全身骨量増加が最大となる年齢は、身長増加が最大となる年齢より8ヶ月遅い
  • 骨長増加と骨量増加時期のずれは骨密度の増加の停滞や一過性の減少を生じる可能性がある
  • 起始、停止を骨に置く筋腱複合体の長さは骨長成長により決定される
  • 従って、骨長成長が活発な時期に筋腱複合体は牽引され手安静時張力は高まるが、筋節が添加されることで適応する
  • このような原因で成長期には筋の柔軟性が低下し、動きが固くなりやすい
  • 県は筋収縮に伴い受動的に伸張され弾性エネルギーを蓄え、これを放出することでダイナミックな動作が可能になる
  • 腱の伸張性は年少な小児のほうが大きく、年長な小児や成人では伸びにくくなる
  • 腱が伸びにくくなることは、より強い張力による弾性エネルギーを蓄えられることにより、強い瞬発動作や反発動作が効率的に行えるようになる

 

成長期スポーツ外傷・障害の特徴

  • 成長期の身体を特徴つける骨端軟骨の存在は力学的負荷に対して弱点となる
  • 強大な牽引力が作用すると骨端軟骨層で裂け目が生じ、骨端核がはがれてしまう剥離骨折が発生する
  • 上前腸骨棘、下前腸骨棘、上腕骨内側上顆などに多くみられる
  • 一方、剥離骨折を起さない程度の力であっても繰り返し作用することで、骨端軟骨層は裂け、骨端核が膨隆する
  • このような慢性障害を骨端症とよんでおり、膝のオスグット病がその典型である
  • 骨端軟骨が存在する間は骨幹部から軟骨層を通過する血流がないため、骨端核への血流が乏しい状態である
  • そのため、骨端核に衝突、圧迫、ねじれなどの負荷が加わることで発生する微細損傷の修復が進まず、骨壊死も生じやすいと考えられ、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎のような病変が形成される
  • 成長期に骨密度が十分に高くなっていないことは、中学生期に骨折が多いことや高校1年生に疲労骨折が最も多いことの原因と考えられる
  • 同じ高校1年生でも発育が遅い選手では骨密度が低いため、疲労骨折のリスクが高くなる
  • 骨量獲得が旺盛な時期やそれ以前から持久性のトレーニングを本格化させると、骨量獲得が抑制される危険性がある
  • 筋腱複合体の張力が高くなっていることで、その付着部に骨端症が生じるほか、外脛骨、分裂膝蓋骨でも接合部や分裂部に牽引力が加わり疼痛が発生しやすい
  • 骨端軟骨が癒合した後では筋腱複合体の張力の負荷はその時点で最も力学的に弱い骨腱接合部に損傷を生じさせる

 

成長期スポーツ外傷・障害の予防

  • 成長による運動器の変化は成人の身体が形成される途上の変化として避けられないものである
  • 骨端軟骨の存在、低い骨密度、張力が高まった筋腱複合体という成長期の運動器の特性を理解して、安全なスポーツのトレーニングを心がけることが望ましい
  • 改善させることが可能なのは筋腱複合体の張力のみである
  • ウォーミングアップ、ストレッチングを行うことで筋腱複合体の粘弾性を変化させ、筋の伸張性が高まることで骨端軟骨への負荷を軽減できると考えられる
  • 骨端軟骨の存在する年齢は部位により異なるが、そもそも個人ごとに成長の進行度に差がある
  • 成長のスパート期のスポーツ指導では最も成長の遅い子供に配慮が必要である
  • 骨端軟骨存在下で強大な負荷がかかったり、反動的な筋力トレーニングを行ったりすると、骨端軟骨損傷を生じる危険がある
  • 骨密度が低い段階では持久性競技のトレーニングの量や強度を制限しておくことが望ましいと考えられ、骨量獲得の進行に合わせてトレーニングを強めていくことが安全である

 

参考文献

成長期スポーツ外傷・障害の特徴 (関節外科 Vol.32 No.3 2013 鳥居俊)