筋力トレーニングの基礎知識④ 筋線維の解剖学的な要因 平行筋と羽状筋・力学的特徴・筋線維長と筋線維数・生理学的断面積と解剖学的断面積
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『筋トレをしているんだけど、なかなか筋力がついてこない…』
『ある程度の筋肉はついてきたんだけど、そこから先が筋力が強くならない…』
ってことありませんか?
そこで、今回は筋力をつけるためのヒントを紹介していきます!
筋力を決定する要素
筋力を決定する要素には以下の6つがあります。
- 筋断面積
- 神経系の要因
- 筋繊維の組成
- 筋繊維の解剖学的な要因
- 関節の角度
- 心理的な要因
今回は、『4.筋繊維の解剖学的な要因』について解説していきます。
筋力と筋繊維の解剖学的な要因の関係
結論から言うと…
羽状筋は筋力が強く、平行筋は筋力が弱い、ということです。
平行筋と羽状筋
まずは筋繊維の解剖学的な特徴を説明していきます。
筋構築についてです。
筋構築とは、『力の作用軸に対する筋繊維の配列』として定義されています。
その配列より、2つに分類されます。
①平行筋
- 力の作用軸と筋繊維の走行が平行
- 屈筋に多い
②羽状筋
- 力の作用軸と筋繊維の走行が異なる
- 伸筋に多い
引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4
力学的特徴
次に力学的な特徴についてみていきます。
平行筋は、力の作用軸と筋繊維走行が一緒のため、筋力が全て腱に伝わります。
羽状筋は、筋力が全て腱に伝わるわけでなく、その一部のみが伝わります。
引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4
力の作用軸と筋繊維の走行のなす角度(羽状角)が30°だったとします。
その場合、cos30°≒0.86 のため、筋力の86%が腱に伝わります。
残りの14%はエネルギーロスしていることになりますね…。
では、ロスしているにも関わらず、羽状筋の方が筋力が強いのはなぜでしょう?
筋線維長と筋線維数
体積と長さの同じ筋肉を比較した場合、
平行筋では、筋繊維長が長く、筋繊維数が少なくなります。
羽状筋では、筋繊維長が短く、筋繊維数が多くなります。
引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4
筋繊維の中にある筋節に注目していきます。
1個の筋節がエンジンだと思ってください。
引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=4
平行筋の場合、エンジンが直列に連結されているため、結果的に1個のエンジンの力と変わりません。
羽状筋の場合、エンジンが並列に連結されているため、個々のエンジンの力が加算され、1個のエンジンの力よりも大きくなります。
引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=4
そのため、羽状筋の方が筋力が強くなります。
次に、筋肉が収縮する速度で考えてみます。
平行筋では筋節が全て直列に配列しているため、全体の短縮量が加算され、速い速度で筋肉を縮めることに優れています。
生理学的断面積と解剖学的断面積
羽状筋は平行筋と比べ、生理学的断面積が大きくなるため、筋力も強くなります。
生理学的断面積(Physiologic Cross Sectional Area 以下、PCSA)とは、
『1つの筋肉に存在する全ても筋繊維の断面積の総和』のことをいいます。
PCSAは機能的な断面積であり、筋出力と比例するといわれています。
また、解剖学的断面積(Anatomical Cross Sectional Area 以下、ACSA)とは、
『力の作用軸に対して垂直な断面積』のことをいいます。
引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=3
平行筋では、PCSA = ACSA となりますが、
羽状筋では、PCSA > ACSA となります。
以下の図は、下肢筋のPCSAと筋繊維を表しています。
引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=5
大腿四頭筋は、PCSAが大きく、筋力に優れた筋肉ですね。
逆に、縫工筋や薄筋は収縮速度に優れた筋肉ですね。
ということは、トレーニングでは、
平行筋は、低重量・高回数で、
羽状筋は、高重量・低回数で行うことが、
筋肉の特徴を最大限に生かすことができます。
まとめ
・平行筋は収縮速度に優れた筋肉である
・羽状筋は筋力に優れた筋肉である
・トレーニングでは、平行筋は低重量・高回数で、羽状筋は高重量・低回数で行うと
効率が良い
参考文献
筋力トレーニングの基礎知識-筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-
(京都大学医療技術短期大学紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)
筋力トレーニングについて
(運動生理 1994 9:131‐138 幸田利敬)
骨格筋の構造
(理学療法科学 18(1):49‐53,2003 斎藤明彦)