筋力トレーニングの基礎知識④ 筋線維の解剖学的な要因 平行筋と羽状筋・力学的特徴・筋線維長と筋線維数・生理学的断面積と解剖学的断面積

4 f:id:sakuraiku:20220324083230p:plain

 

 

 

 

『筋トレをしているんだけど、なかなか筋力がついてこない…』

 

『ある程度の筋肉はついてきたんだけど、そこから先が筋力が強くならない…』

 

ってことありませんか?

 

そこで、今回は筋力をつけるためのヒントを紹介していきます!

 

 

 

 

 

 

 

 筋力を決定する要素

 

筋力を決定する要素には以下の6つがあります。

 

 

  1. 筋断面積
  2. 神経系の要因
  3. 筋繊維の組成
  4. 筋繊維の解剖学的な要因
  5. 関節の角度
  6. 心理的な要因

 

今回は、『4.筋繊維の解剖学的な要因』について解説していきます。

 

 

 

 筋力と筋繊維の解剖学的な要因の関係

 

結論から言うと…

 

羽状筋は筋力が強く平行筋は筋力が弱い、ということです。

 

 

 

 平行筋と羽状筋

 

まずは筋繊維の解剖学的な特徴を説明していきます。

筋構築についてです。

 

筋構築とは、力の作用軸に対する筋繊維の配列として定義されています。

 

その配列より、2つに分類されます。 

 

 

平行筋

  • 力の作用軸と筋繊維の走行が平行
  • 屈筋に多い 

 

 

羽状筋

  • 力の作用軸と筋繊維の走行が異なる
  • 伸筋に多い

 

 

        f:id:sakuraiku:20200709114457p:plain

引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4

 

 

 

 力学的特徴

 

次に力学的な特徴についてみていきます。

 

平行筋は、力の作用軸と筋繊維走行が一緒のため、筋力が全て腱に伝わります。

 

羽状筋は、筋力が全て腱に伝わるわけでなく、その一部のみが伝わります。

 

 

 

      f:id:sakuraiku:20200709115053p:plain

引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4

 

 

 

力の作用軸と筋繊維の走行のなす角度(羽状角)が30°だったとします。

 

その場合、cos30°≒0.86 のため、筋力の86%が腱に伝わります。

 

残りの14%はエネルギーロスしていることになりますね…。

 

では、ロスしているにも関わらず、羽状筋の方が筋力が強いのはなぜでしょう?

 

 

 

筋線維長と筋線維数

 

体積と長さの同じ筋肉を比較した場合、

 

平行筋では、筋繊維長が長く、筋繊維数が少なくなります。

 

羽状筋では、筋繊維長が、筋繊維数が多くなります。

 

 

 

          f:id:sakuraiku:20200709115750p:plain

引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/1/18_1_49/_pdf/-char/en#page=4

 

 

 

 

筋繊維の中にある筋節に注目していきます。

 

1個の筋節がエンジンだと思ってください。 

 

 

       f:id:sakuraiku:20200709120022p:plain

引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=4

 

 

 

平行筋の場合、エンジンが直列に連結されているため、結果的に1個のエンジンの力と変わりません

 

羽状筋の場合、エンジンが並列に連結されているため、個々のエンジンの力が加算され、1個のエンジンの力よりも大きくなります。 

 

 

 

      f:id:sakuraiku:20200709120055p:plain

引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=4

 

 

 

そのため、羽状筋の方が筋力が強くなります。

 

次に、筋肉が収縮する速度で考えてみます。

 

平行筋では筋節が全て直列に配列しているため、全体の短縮量が加算され、速い速度で筋肉を縮めることに優れています

 

 

 

生理学的断面積と解剖学的断面積

 

羽状筋は平行筋と比べ、生理学的断面積が大きくなるため、筋力も強くなります。

 

生理学的断面積(Physiologic Cross Sectional Area 以下、PCSA)とは、

1つの筋肉に存在する全ても筋繊維の断面積の総和のことをいいます。

 

PCSAは機能的な断面積であり、筋出力と比例するといわれています。

 

また、解剖学的断面積(Anatomical Cross Sectional Area 以下、ACSA)とは、

力の作用軸に対して垂直な断面積のことをいいます。

 

 

 

         f:id:sakuraiku:20200709120108p:plain

引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=3

 

 

 

平行筋では、PCSA = ACSA となりますが、

 

羽状筋では、PCSA > ACSA となります。

 

以下の図は、下肢筋のPCSAと筋繊維を表しています。

 

 

 

      f:id:sakuraiku:20200709120128p:plain

引用:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49548/1/9_33.pdf#page=5

 

 

 

大腿四頭筋は、PCSAが大きく、筋力に優れた筋肉ですね。

 

逆に、縫工筋や薄筋は収縮速度に優れた筋肉ですね。

 

ということは、トレーニングでは、

 

平行筋は、低重量・高回数で、

 

羽状筋は、高重量・低回数で行うことが、

 

筋肉の特徴を最大限に生かすことができます。

 

 

 

まとめ

 

平行筋は収縮速度に優れた筋肉である

 

羽状筋は筋力に優れた筋肉である

 

トレーニングでは、平行筋は低重量・高回数で、羽状筋は高重量・低回数で行うと

 効率が良い

 

 

 

参考文献

筋力トレーニングの基礎知識-筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-

(京都大学医療技術短期大学紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)

 

筋力トレーニングについて

(運動生理 1994 9:131‐138 幸田利敬)

 

骨格筋の構造

(理学療法科学 18(1):49‐53,2003 斎藤明彦)