筋力トレーニングの基礎知識 筋繊維の組成

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『筋トレをしているんだけど、なかなか筋力がついてこない…』

『ある程度の筋肉はついてきたんだけど、そこから先が筋力が強くならない…』

ってことありませんか?

そこで、今回は筋力をつけるためのヒントを紹介していきます!

筋力を決定する要素

筋力を決定する要素には以下の6つがあります。

  1. 筋断面積
  2. 神経系の要因
  3. 筋繊維の組成
  4. 筋繊維の解剖学的な要因
  5. 関節の角度
  6. 心理的な要因

今回は、『3.筋繊維の組成』について解説していきます。

 

筋力と筋繊維の組成の関係

速筋繊維は、強い筋力速い収縮速度を兼ね備えています。遅筋繊維は、ある一定の筋力長時間持続して発揮することができます。まずは、筋繊維の組成の特徴から種類分けをしていきましょう。筋肉は筋繊維の単収縮の性質と、代謝の相違によって大まかに3つに分類することができます。 

①Type Ⅰ

 遅筋繊維(Slow twitch oxidative fiber、以下S型) 

②Type Ⅱa

 速筋繊維(Fast twitch Oxidative Glycolytic fiber、以下FOG型)

③Type Ⅱb

 速筋繊維(Fast twitch Glycolytic fiber、以下FG型)

 

筋繊維の分類と特徴

それぞれの特徴を以下にまとめます。

筋繊維の分類と特徴
 
Type Ⅰ(S型)
Type Ⅱa(FOG型)
Type Ⅱb(FG型)
収縮速度
疲労 中間
筋張力 小さい 中間 大きい
筋繊維径 小さい 中間 大きい
色調
ミトコンドリア
ミオグロビン量
グリコーゲン含有量 中間
解糖系酵素活性 中間
毛細管
ATP供給 酸化的リン酸化 酸化的リン酸化 解糖
ミオシンATPase活性
活動参加順序

速筋繊維の中でもType Ⅱbは、グリコーゲン含有量が多く解糖系酵素活性が高いため、瞬発的に大きな筋力を出すことに長けています。遅筋繊維は、ミトコンドリア量が多く酸化的リン酸化によりATPを供給するため、中等度の負荷で持久的な運動に長けています。では、それらの代謝の違いは、どのように筋力に影響するのでしょうか?

 

筋力を動かすエネルギー

筋肉を動かすためにはエネルギーが必要です。そのエネルギーの元となるものは、ATP(アデノシン三リン酸)です。ATPを分解する過程でできるエネルギーを利用します。 

    ATP + H₂O + = ADP + H₃PO₄ + エネルギー

ADP(アデノシン二リン酸)を更に分解することで、再びエネルギーを得ることができます。

    ADP + H₂O + = AMP + H₃PO₄ + エネルギー

 では、エネルギーの元となるものは体内にどのくらい蓄えられているのでしょうか?

エネルギーを熱量として換算すると、体内には、約180,000kcalのエネルギーが蓄えられています。蓄えられているエネルギーを栄養素で分類すると、脂質77%蛋白質22%糖質1%、になります。

 

運動強度と栄養素

運動強度により、使われる栄養素が変化していきます。弱い運動強度では、多くは脂質を利用します。中等度からやや強い運動強度では、主に糖質を利用します。強い運動強度では、ほぼ糖質だけになります。糖質はすぐに分解されるため、エネルギーになる効率が速いです。一方で、蛋白質は体を作ることが主な役割のため、エネルギーになる効率が遅いです。脂質は糖質ほどエネルギーになる効率が速いわけではありません。よって、すぐさま多くのエネルギーを必要とする強い運動強度では、糖質が利用されますよね。弱い運動強度では、脂質を利用するのが向いているということですね。この特徴より、グリコーゲン(糖質が体内で合成されたもの)含有量が多い速筋繊維は、強度の強い運動に向いているということですね。次に、運動強度によってエネルギー回路がどのように変わるのかを解説していきます。

 

運動強度とエネルギー回路

運動強度によって、適切なエネルギー回路が使われる仕組みになっています。嫌気的条件下では、解糖系が使われ、好気的条件下では、クエン酸回路電子伝達系が使われます。ちなみに、嫌気的条件下は、酸素がない状態のことで、運動強度の強い無酸素運動のことをいいます。好気的条件下とは、酸素がある状態のことで、運動強度の緩やかな有酸素運動のことをいいます。

 解糖系の特徴

  1.  原料は糖質
  2. 代謝開始が速い
  3. 副産物は乳酸
  4. 代謝の場所は細胞質基質 

クエン酸回路・電子伝達系の特徴

  1. 原料は脂質・ピルビン酸(糖代謝物)
  2. 代謝開始が遅い
  3. 副産物は水素
  4. 代謝の場所はミトコンドリア

 

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 引用:https://sgs.liranet.jp/download/pdf/sample/text_kisoeiyougaku.pdf#page=1

 以上より、解糖系酵素活性が高い速筋は、強い筋力を出すことができます。 また、ミトコンドリア量が多く酸化的リン酸(水素イオンの濃度勾配を利用し、ADPをリン酸に結合させATPを生成すること)によりATP供給を行う遅筋は、中等度の負荷で持久的な運動に向いているということになります。

 

まとめ

速筋は、力強い筋力と速い収縮速度を兼ね備えている

遅筋は、一定の筋力を長時間持続して発揮することができる

速筋は、グリコーゲン含有量が多く、解糖系酵素活性が強い

遅筋は、ミトコンドリア量が多く、酸化的リン酸化によりATPを供給する

弱い運動強度では脂質を、強い運動強度では糖質を利用する

弱い運動強度ではクエン酸回路・電子伝達系が使われ、強い運動強度では解糖系が使われる

 

参考文献

筋力トレーニングの基礎知識 -筋力に影響する要因と筋力増強のメカニズム- (京都大学医療技術短期大学部紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)

筋力トレーニングについて (運動生理 1994 9:131‐138 幸田利敬)

基礎運動学 (医歯薬出版株式会社 2003 200‐201項 中村隆一)