『筋トレをしているんだけど、なかなか筋力がついてこない…』
『ある程度の筋肉はついてきたけど、そこから先がなかなか筋力がついてこない…』
ってことありませんか?
そこで、今回は筋力をつけるためのヒントを紹介していきます!
筋力を決定する要素
筋力を決定する要素には以下の6つがあります。
- 筋断面積
- 神経系の要因
- 筋繊維の組成
- 筋繊維の解剖学的な要因
- 関節の角度
- 心理的な要因
今回は、『6.心理的な要因』について解説していきます。
筋力と心理的要因の関係
筋力は心理的な影響により最大随意収縮より20~30%強くなることがわかっています。
具体的には、筋力の向上、筋パワーの向上、反応時間の短縮、運動パフォーマンスの向上などに変化が表れます。
では、なぜ心理的な要因が筋力に影響を与えるのか考えていきましょう。
生理的限界と心理的限界
筋力には、生理的限界と心理的限界があります。
生理的限界とは、『解剖学的構造とこれに由来する生理的条件に規定される能力』のことをいいます。
わかりやすくいうと、肉体の限界能力を表しています。
心理的限界とは、『大脳皮質や中枢神経系の興奮水準の程度による心理適条件に規定される能力』のことをいいます。
最大努力で筋力を発揮したつもりでも、常に予備力を残している状態です。
常に肉体の限界能力で筋力を発揮していると、ケガのリスクが非常に高まります。
そういう理由もあり、普段では筋力にリミッターがかかった状態になっています。
しかし、時には普段以上の力が出てほしい場面があります。
スポーツで例えると、ここ一番での勝負所や、窮地に追い込まれた時などです。
ここぞという場面で筋力を最大限に発揮するためには、どうしたらいいのでしょうか?
自発的なかけ声
答えは、『かけ声』です。
スポーツ選手のかけ声で印象的なのは、陸上の室伏広治選手や、テニスのマリア・シャラポア選手ですね。
室伏選手は、ハンマーを投げ終わった後に叫ぶ姿が印象的です。
【陸上】スポーツマンなら知らなきゃ損なシャウト効果【空耳】投擲種目の叫び声集
シャラポア選手は、ストロークするごとに声を出すプレーが印象的です。
ただ、叫び声が大き過ぎて、対戦相手からクレームを出されたこともありますが…(笑)
【速報】全豪オープン セリーナ・ウィリアムズ vsシャラポワに勝利 2016
かけ声により筋力が強くなる理由
かけ声によって筋力が強くなるメカニズムは、大脳内に生じた旧皮質の賦活作用が、間接的に大脳皮質の興奮性を高め、大脳に生じた内制止を制止すること、つまり脱制止することで心理的限界から一時的に生理的限界へ高められるとしています。
自発的なかけ声を伴う筋力発揮は、中枢神経系を興奮させ、主動作筋および共同筋の運動ニューロンの動員数が増加し、最大随意筋力を増大させます。
具体的にどれぐらい能力が変化するのか、例をあげていきます。
瞬発力を必要とするパワー系のスポーツにおいて、無発声に対しシャウトでは…
筋パワー 14.6%アップ
最大筋収縮速度 9%アップ
さらには、通常時よりも、疲労している時の方が、シャウトの効果が優位に大きくなることがわかっています。
約2秒に1回の割合で50回全力でシャウトなしの握力を、51回目にシャウトありの握力を測定しました。その結果…
シャウトにより、51回目の握力は優位に向上しました。
引用:http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hue/file/12429/20190819101435/kenkyu2019420103.pdf
疲労には、中枢神経系の要因が関与し、筋力発揮の継続によって生じうる障害などを防ぐために、筋力発揮にかかわる中枢からの運動指令の出力が非随意的に抑制されている可能性があると考えられています。
このように、疲労に伴う筋の発揮力の低下は、末梢性疲労のみならず、中枢性疲労が関与していると考えられ、通常時と同じメカニズムでシャウトにより筋力は増加すると考えられます。
まとめ
・筋力は、心理的な影響により、最大随意収縮より20~30%強くなる
・筋力には、生理的限界と心理的限界がある
・自発的なかけ声を伴う筋力発揮は、中枢神経系を興奮させ、主動作筋および共同筋の
運動ニューロンの動員数が増加し、最大随意筋力を増大させる
・疲労している時の方が、シャウトの効果が優位に大きくなる
参考文献
筋力トレーニングの基礎知識 -筋力に影響する要因と筋力増強のメカニズム-
(京都大学医療技術短期大学紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)
筋力トレーニングについて
(運動生理 1994 9:131-138 幸田利敬)
シャウトによる筋力増強効果 -疲労時の有無に着目して-
(広島経済大学研究論集 第42巻第1号 柳川和優・磨井祥夫)