マッスルエナジーテクニック治療 筋緊張・筋力低下・関節可動性・等尺性収縮後弛緩・相反抑制・最終域感・PIRとRI
マッスルエナジーテクニックとは?
- マッスルエナジーテクニックは、正確に制御された位置から、特定の方向に、遠位に加えられた圧力に対して、患者の筋が必要に応じて積極的に使用される、オステオパシーの診断および治療の一形態である
- マッスルエナジーテクニックは患者が最初に労力を提供し、施術者はプロセスを促進するだけであり、その適用方法は独特である
- 主要な力は患者の筋の収縮を用いて、そのときにある筋骨格機能異常を矯正するために利用される
- マッスルエナジーテクニックにおける筋収縮は制御された位置で行われ、施術者によって遠位に加えられた患者の筋収縮に対する反力である
- そのため、この治療法は一般的に間接法でなく直接法テクニックとして分類される
マッスルエナジーテクニックの利点
- マッスルエナジーテクニックの利点のひとつは可動域を正常化することである
- 患者が頚椎を右に回旋できず、左に回旋できる限り、患者は頚椎の右回旋制限を有しているということである
- 頚椎の正常な回旋可動域は80°だが、患者は70°しか右回旋できないとする
- ここがマッスルエナジーテクニックを用いる部位である
- 硬くて制限のある筋にマッスルエナジーテクニックを使用した後、80°まで回旋できるようになるだろう
- 使用されるマッスルエナジーテクニックのタイプおよび状況に応じて、この治療の目的は以下を含むことができる
- 過緊張な筋における正常な筋緊張への回復
- 弱い筋の強化
- その後のストレッチのための筋の準備
- 関節可動性の改善
過緊張な筋における正常な筋緊張への回復
- マッスルエナジーテクニックの簡単なプロセスを通して、過緊張で短縮した筋を弛緩させようと試みる
- もし関節可動域が制限されていると考えると、過緊張な組織の最初の評価を通じて、組織を正常化させるためにテクニックを使用できる
- 特定のタイプのマッサージ療法はこのリラクゼーション効果を達成するのにも役立ち、また一般的にマッスルエナジーテクニックはマッサージ療法と併用できる
筋力低下がある筋の強化
- 患者は筋の伸張家庭の前に収縮するよう指示されることがあり、マッスルエナジーテクニックは弱い筋または弛緩した筋の強化に使用することができる
- 筋力低下している筋を収縮するよう患者に指示することで、マッスルエナジーテクニックを調整する
- マッスルエナジーテクニックでは、治療家によって加えられた抵抗に対して、筋を収縮させるタイミングは変えることができる
- 例えば、最大能力の約20~30%を5~15秒発揮する抵抗運動するよう患者に指示する
- その後、反復の間に10~15秒休息しその過程を5~8回繰り返すように指示する
- この過程により、患者のパフォーマンスは時間とともに顕著に改善される
その後のストレッチのための筋の準備
- 患者の柔軟性を正常よりも改善させたい場合は、より積極的なマッスルエナジーテクニックアプローチが必要となる
- 実際には、患者の筋の能力の標準的な10~20%よりも少し強く収縮するよう指示する形で達成される
- 例えば、私たちは40~70%の筋力を発揮して収縮するよう患者に指示する
- この強い収縮は、ゴルジ腱器官への刺激を増加させ、より多くの運動単位を発火させる
- これは筋をよりリラックスさせる効果を持ちさらに伸張させることを可能にする
関節可動性の改善
- マッスルエナジーテクニックを正しく用いた時、最初は筋をリラックスさせることが、関節の可動性を改善するための最良の手段の一つとなる
- マッスルエナジーテクニックの重要なポイントは患者に筋を収縮させることである
- その後、弛緩期間が生じ、特定の関節内でより大きな関節可動域を達成することが可能になる
マッスルエナジーテクニックの生理作用
- マッスルエナジーテクニックには2つの主な効果があり、これらを2つの異なる生理学的プロセスに基づいて説明する
等尺性収縮後弛緩 (PIR:Post Isometric Relaxation)
相反抑制 (RI:Reciprocal Inhabition)
- PIRおよびRIの主要な過程について議論する前に、ストレッチ反射に関与する2種類の受容体について検討する必要がある
筋線維の長さにおける、変化および変化の速度に敏感である筋紡錘
長時間の張力の変化を検出するゴルジ腱器官
- 筋をストレッチすることは、筋紡錘から脊髄後角細胞に伝達されるインパルスの増加を引き起こす
- 次に、前角細胞は筋線維への運動インパルスの増加を伝達し、伸張に抵抗するための保護的な緊張を生成する
- しかし、数秒後に増加した伸張はゴルジ腱器官内で感知され、後角細胞にインパルスを伝える
- これらのインパルスは、前角細胞における運動刺激の増改に対する抑制効果を有する
- この抑制効果は、運動インパルスの減少および結果としてリラクゼーションを引き起こす
- これは、ゴルジ腱器官の保護的な弛緩が筋紡錘による保護的な収縮を無効にするため、筋の長時間の伸張が伸張能力を増加させることを意味する
- しかし、筋紡錘の速い伸張は筋の収縮を即自的に引き起こし、持続しないため、抑制作用はない
- これは基本的な反射弓として知られている
伸張反射弓:筋紡錘を活性化するため素早い手による伸張
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ
- PIRは、等尺性収縮が持続されたとき、脊髄を介して筋自体への神経学的フィードバックから生じ、そして収縮した筋の緊張低下を引き起こす
- この緊張の減少はおよそ20~25秒続き、この弛緩期間の間に組織を新しい安静時長までより容易に動かすことができるため、関節可動域を改善させる完璧な機会を得ることができる
- RIを使用するとき、緊張の減少は筋の収縮に対する拮抗筋の生理学的抑制効果に依存する
- 主動作筋を収縮させる運動ニューロンが求心性経路から興奮性インパルスを受ける時、反対の拮抗筋の運動ニューロンは同時に抑制インパルスを受け、拮抗筋の収縮を妨げる
- つまり、主動作筋の収縮または伸張は、拮抗筋を弛緩または抑制を誘発しなければならないことになる
- しかしながら、主動作筋の素早い伸張は同じ主動作筋の収縮を促進する
等尺性収縮後弛緩
画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ
- マッスルエナジーテクニックのほとんどの応用において、最終域感を感じる位置、または、その位置のわずか手前はマッスルエナジーテクニックを実行するのに望ましいポジションである
- 明らかに、マッスルエナジーテクニック他のテクニックと比較して非常に軽いストレッチなので、その使用はリハビリてーよんにおいてより適切である
- また、筋の短縮を伴うほとんどの問題は姿勢筋におこることに留意すべきである
- これらの筋は主に遅筋線維で構成されているので、より軽いストレッチの形態が適切である
マッスルエナジーテクニック治療
- 患者の手足の抵抗が感じられる点、すなわち最終域感を感じる位置まで動かす
- それは、治療しようとしている患部における最終域感を感じるわずか手前の位置まで柔らかくする場合、特にこれらの組織が慢性期にある場合、患者にとってより快適な状態にすることができる
- 施術者によって加えられる抵抗に対しておよそ10~20%の筋力を発揮して、治療すべき筋または拮抗筋を等尺性収縮するよう指示する
- アプローチの方法が等尺性収縮後弛緩(PIR)である場合、患者は主動作筋を使用する
- そして、硬くて短縮した組織を直接リリースする
マッスルエナジーテクニックの相反抑制(RI)を用いる場合、患者には拮抗筋を等尺性収縮するよう指示する
- これは硬くて短縮した組織として分類された拮抗筋とは反対の筋群(主動作筋)において市観光課を発揮する
- 等尺性収縮をゆっくり行い、10~12秒間持続させ、治療されている部位の疼痛が生じないように指示する
- この収縮は、筋紡錘から錘内線維に影響を与え、ゴルジ腱器官に負荷を与えるために必要な時間である
- これは、筋紡錘からの影響を無効にする効果があり、筋緊張を抑制する
- これにより施術者は最小限の労力で患部を新しい位置へ持っていけるようになる
- 収縮により不快感や緊張を引き起こさないようにすべきである
- 深呼吸して完全にリラックスするように指示し、施術者は過緊張の筋を伸張する特定の関節を新しい位置に他動的に動かし、関節可動域を正常化する
- 等尺性収縮後弛緩を誘発する等尺性収縮後、15~30秒の弛緩期間がある
- この期間は組織を新しい安静時長に伸張するのに最適な期間になる
- それ以上進行しなくなるまでこの過程を繰り返し(通常3~4回)、最後の静止位置にておよそ25~30秒保持する
- 25~30秒の期間は神経系がこの新しい静止位置にロックするのに十分な時間であると考えらえる
- このタイプのテクニックは、硬く短縮した軟部組織において緊張を緩和し、弛緩させるのに優れている
- 相反抑制により、約20秒の不応期(安静時上体の回復に必要な短い期間)が生じる
- しかしながら、相反抑制は等尺性収縮後弛緩よりも万能でも強力ではないと考えられている
- 主動作筋の使用は痛みまたは損傷のために、時には不適切となるため、施術者は両方のアプローチを使い分ける必要がある
- マッスルエナジーテクニックで使用される力は最小限なので、障害または組織損傷の危険性が軽減される
マッスルエナジーテクニック治療の方法
最終域感を感じる位置(制限バリア)
- 最終域感のポイントまたは制限バリアは、施術者の触診する手や手指によって抵抗が最初に感じられたときに生じる
- 繰り返し練習して経験を積むことにより、施術者は患部が緩やかに最終域感を感じる位置まで、軟部組織の抵抗を触知することができる
- この最終域感を感じる位置は伸張の位置ではなく、伸張の直前の位置である
- 施術者はストレッチが生じたと感じる時に、その違いを感じるべきで、患者からの反応を待つべきである
急性期および慢性期
- マッスルエナジーテクニックで治療される軟部組織の状態は、一般的に急性期または慢性期のいずれかに分類され、何らかの形の緊張または外傷を有する組織に関連する傾向がある
- マッスルエナジーテクニックは急性期および慢性期の両方において使用することができる
- 急性期とは、痛みやスパズムあるいは3~4週間以内に生じた深刻な症状を含む
- マッスルエナジーテクニックのどの方法が適しているかは、病期で判断する
- 発症から時間が経過し、明らかに急性期でないものを慢性期とみなす
- 提示された状態が比較的急性期であると感じるならば、等尺性収縮は最終域感を感じる位置で行う
- 患者に筋を10秒間等尺性収縮させた後、施術者は新しく最終域感を感じる位置を常に意識して患部を進めていく
- 慢性期の状態では、等尺性収縮は最終域感を感じる位置の直前の位置から始める
- 患者に筋を10秒間等尺性収縮させた後、施術者は最終域感を感じる位置を通り、特定の部位を新しい位置まで進めることを奨励される
PIRとRIの比較
- 患者にどのくらいの痛みがあるのかによって、一般的にどの方法を最初に適用するかを決定する
- 等尺性収縮後弛緩法は通常、短縮し硬いと分類される筋のために選択されるテクニックである
- これらの筋は、リリースと弛緩の過程で最初に収縮するからだ
- しかしながら、しばしば患者は主動作筋すなわち短縮した組織が収縮した時に不快感を覚えることがある
- この場合、反対の拮抗筋を収縮させるほうがより適切であるように考えられる
- それは、患者の痛みの近くを低下させ、痛みを伴う組織を弛緩させるからである
- したがって、通常は痛みがない拮抗筋を使用した相反抑制の使用は、主に短縮した組織に痛みが増強される場合に第一選択となる
- 患者の初期の痛みが適切な治療によって軽減したとき、等尺性収縮後弛緩法を組み込むことができる
- 等尺性収縮後弛緩法は相反抑制と対照的に、硬く短縮した組織の等尺性収縮を用いる
- 最良のアプローチを決定する主な要因は、敏感である組織が急性期か慢性期どうかによる
参考文献
骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)