バッティング 腕の動き

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引き腕と押し腕の役割

両腕と体幹でできる三角形を保つ

  • 足で地面を押した力の反作用(地面反力)を受けて腰や肩を回転させた勢いは、腕を介してバットに伝えられる

 

  • ボールを打つ能力と引き腕を持ち上げる肩の力(屈曲力)との相関が高いことや、引き腕の上腕三頭筋を強化すればバットに大きな力を加えられる、という報告からすると、バットを振るために引き腕の果たす役割は大きい

 

  • 「両腕と体幹でできる三角形を保て」と指導されて、保てない打者はゴムチューブなどを利用して保たせるドリルが行われる

 

  • 三角形を保つ意味は何なのだろうか?

 

  • 好打者と未熟な打者を上方から見た時の模式図を描いたところ、確かに未熟な打者は三角形がつぶれているように見えた

 

  • 画像では腰の中点を1点に集めて、腰と引き腕の上腕をつないで、さらに前腕、バットとつないでいる

 

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打者を上方から見た時の模式図

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

 

  • 未熟な打者のように三角形がつぶれてしまうと引き腕の力が使えずに腰が開いてしまい、腰の回転がバットの回転に伝わっていないようにみえる

 

  • さらに、これでは内角球もうまく打てそうにない

 

引き腕を伸ばせば三角形はつぶれやすい

  • メジャーリーグの打者の打撃動作を分析した報告によると、共通した5つの力学的な特性があるという

 

  1. スイング中に身体の重心は水平に移動する
  2. ボールをよく、長くみられるように投球ごとに頭の位置を調整する
  3. 引き腕はバットスピードを大きくするために伸ばす
  4. ステップの長さは投球によらず一定
  5. インパクト後、上半身は投球方向に向けて、体重を前足に乗せる

 

  • このようにバットのヘッドスピードを大きくするためには引き腕を伸ばすこととあった

 

  • 引き腕の肩あるいは体幹からバットのヘッドまでの距離、回転半径を長くしてヘッドスピードを速くしようという力学的な考え方である

 

  • しかし、引き腕を伸ばせば三角形はつぶれて引き腕の力を使い難くなる

 

  • また、バットがそのまま遠回りすればドアスイングになって内角球も打てなくなる

 

  • メジャーリーグ打者のように腕力が強ければ再び三角形を作れるのだろうか?

 

  • さらに、日本のプロ野球一流打者でもスイング開始前に引き腕の肘は真っ直ぐ伸ばされている

 

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プロ野球一流打者に観察されるテイクバック時の引き腕の肘伸展動作

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

 

  • このように肘を伸ばしてスイングすると体幹を回転させ難くなるので地面反力を大きくできる効果が期待できて、結果として身体の回転の勢いに貢献する

 

  • 引き腕の力を使わないのであれば良いかもしれないが、引き腕の果たす役割は大きいはずである

 

引き腕の力を使えるようにする

  • 自分の背中にあるものを自分の前に腕で引っ張ってくる牽引力を測ると、肩の近くを通すように引っ張ったほうが大きな力が出る

 

  • 肩から遠く離れれば、腕の力は使い難い

 

  • バッティングで引き腕の肘を伸ばしてしまうと同じように腕の力は使い難くなると考えられる

 

  • ティーバッティングにおける腕の動きを詳細に分析した報告によると、それほど大きな動きはないが、引き腕の肩では一度三角形がつぶれて(水平屈曲して)から再び三角形がつくられて(水平伸展して)いるという

 

  • 引き腕の力が使われているということである

 

  • そして、バットのヘッドスピードが速い打者は引き腕の肩の内転と水平伸展が大きかった

 

  • すなわち「脇をしめる」ようにしていたという

 

  • この動きは両腕による三角形をつくることに貢献するだろう

 

  • 引き腕の肩や肘の角度を調整あるいは維持することによって、身体の近くにバットを留めて操作しやすくする、いう言い方もされている

 

インパクト近くで押し腕を急激に伸ばす

  •  一方の押し腕の動きは、引き腕の動きよりも大きい

 

  • フォワードスイングに入ると肘を伸ばしながら前腕を回外して(掌を上に向けて)、手首は小指側に曲げる(尺屈する)、という

 

  • 柱に刺した水平な釘を金槌で打つ動きである

 

  • 指導現場では「パワーの源は引き腕」といわれることがあるが、フォワードスイングの開始ではそうであったとしても、釘打ちの動きからしてインパクト近くになったら押し腕のパワーは重要となるはずである

 

  • 押し腕の肘を伸ばしながらと書いたが、角度でみると45~90°からインパクトに向けて急激に伸びる

 

  • それに対して、引き腕では90~135°という鈍角から緩やかに伸びていく

 

  • この肘の伸ばし方、押し腕では急激に、引き腕では緩やかにというのが重要なポイントである

 

  • このスピード差があるからバットを回転させる力(トルク)を生む出せるのである

 

  • バットを引き抜いてくるというイメージが強いので引き腕を働かせてバットを引っ張ってきたくなるが、それではヘッドは走らない

 

  • 極端に言うと、押し腕では投手側へ押し、引き腕では捕手側へ引くのでバットは回転してヘッドが走る

 

  • ただし、タイミングが早ければ押すことになるが、普通は両腕とも肘じゃ完全に伸びきっていないところでインパクトを迎える

 

 

参考文献

科学する野球 バッティング&ベースランニング (ベースボールマガジン 2016年12月25日 平野裕一)